金正恩(キム・ジョンウン)氏

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米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、北朝鮮が昨年スイスから輸入した時計の金額が、経済制裁の影響で前年の約半分にとどまったという。ということは、ぜいたく品に囲まれた金正恩党委員長のライフスタイルにも影響が出ているかもしれない。

昨年4月27日に板門店(パンムンジョム)で開かれた南北首脳会談と、同年6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談の際、金正恩氏は「ベンツS600プルマンガードリムジン」に乗っていた。

金正恩氏のクルマに対するこだわりは相当強いらしく、自分でベンツを運転していることを、デイリーNKジャパンは独自情報で確認している。さらに現地指導の移動の際に乗るベンツには、金正恩氏のトイレ事情に関わる特殊装備が積まれているとされている。

ぜいたく品が好きな北朝鮮高官は金正恩氏だけではない。彼の側近のひとりである崔龍海(チェ・リョンヘ)朝鮮労働党副委員長は、北朝鮮一のブランド好きで、派手な生活を好むことで知られている。それが行き過ぎて女性問題、それもほとんど性犯罪とも言えるほどの変態性欲スキャンダルを起こした過去すら持つ。

北朝鮮は金正恩氏を頂点とする権力層のために、主にヨーロッパからベンツや高級時計、その他の様々なぜいたく品を輸入してきた。また金正恩氏が「喜び組」のために、多額の金を費やして「セクシーアンダーウェア」を輸入していると報じられたこともあった。

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北朝鮮の指導層は苦しい人民生活を顧みず贅沢な生活を送り、挙げ句の果てには核ミサイル開発に資金を注ぎ込んできたわけだ。これを受けて欧州連合(EU)は一昨年11月までに、キャビア、ワイン、ビール、コニャックなどのアルコール類、ハンドバッグをはじめとする皮革製品、コートを含む衣類、アクセサリー、靴など22種類以上の物品を北朝鮮への輸出禁止品目に指定している。また、EUは昨年11月にも北朝鮮船舶48隻に対して資産凍結や入港禁止の対象とし、海上で積み荷を移し替える「瀬取り」に関与したとして12隻を制裁リストに含めるなど制裁を継続している。

スイス時計協会(FH)の財政担当者はRFAに対して、「(対北朝鮮)制裁担当者が北朝鮮への輸出を統制しているため、安価な時計のみを輸出している」と説明した。

金正恩氏は昨年6月、米国のトランプ大統領と首脳会談を行うなど、米国との関係改善のきっかけを作った。一方、米財務省は昨年12月に、北朝鮮における深刻な人権侵害や言論統制に関与したとして、先述の崔龍海氏を含む朝鮮労働党の幹部3人を制裁対象に指定するなど、制裁を緩める姿勢を見せていない。

金正恩氏は最高指導者として、それにふさわしい優雅なライフスタイルをおくりたいのかもしれないが、北朝鮮が置かれている現状を踏まえて、身の丈にあった生活を送るべきだ。そうすれば北朝鮮国内からも国際社会からも、「分別のある指導者」として一定の評価を得られるかもしれない。