「人材活用が進んでいて30歳給料が高い会社」ランキングTOP10

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ランキング上位には女性の働きやすい環境が整備された企業が目立つ(写真:kou/PIXTA)

学生の皆さんが就職活動を始めるにあたり、気になるのは給与水準と働きやすさではないだろうか。そこで今回は、大卒30歳平均賃金が30万円以上の会社を対象に、CSR企業ランキングで使用している人材活用得点でランキングしてみた。

人材活用得点は、東洋経済CSR調査で収集している45項目で評価し、作成している(評価項目や45の項目名は最後に記載)。働きやすい環境や好待遇だけでなく、人権問題への意識や幅広い人材の活躍なども評価の対象となっている。この得点がベースになっている格付け(AAA、AA、A、B、Cの5段階評価)で、最高のAAAランク132社を紹介したい。

働きやすさだけでなく人権問題への対応なども評価

ランキング1位はSOMPOホールディングス花王ANAホールディングスの3社が100点で並んだ。


SOMPOホールディングスは30歳平均賃金が34万1076円。女性管理職比率16.9%、女性の育児休業取得率100%といった女性活躍だけでなく、LGBT、障害者雇用も含めたダイバーシティ推進に力を入れている。ワーク・ライフ・バランス面でも、月間平均残業時間8.2時間、年間総労働時間1790時間など、高レベルな数値が多い。

花王は同31万6989円だ。フレックスタイム制度、在宅勤務制度、裁量労働制度(一部の職種が対象)など、働きやすい環境の整備を進める。社内だけでなく、サプライチェーンを含め、労働・人権問題への取り組みを積極的に推進している。

ANAホールディングスは同31万円。女性が多い職場で仕事と家庭の両立支援の取り組みは多い。運航・客室乗務員を対象に、月3日休暇取得が可能な「育児日」、配偶者の勤務地転居にあわせ東京・大阪間の異動希望が申告可能な客室乗務員「かがやきサポート制度」など、各種制度は充実。メンタルヘルス対策の強化など、健康経営にかかわる取り組みにも積極的だ。

4位は99.0点でみずほフィナンシャルグループ(30歳平均賃金38万7537円、以下同)、SCSK(36万8360円)、ワコールホールディングス(32万0513円)の3社。いずれも有給休暇取得率などが高い。

以下、97.9点で7位は、三井物産(47万3894円)、第一生命ホールディングス(46万4426円)の2社で、9位(96.9点)は大和証券グループ本社(53万3599円)、日本生命保険(41万4370円)、キユーピー(33万6654円)と続く。

30歳平均賃金が40万円を超えるのは19社。最高は53万3599円の大和証券グループ本社だった。

さて、働きやすい会社というと、自分が働く職場での有給休暇や定着率の高さなどを思い浮かべる就活生は、多いかもしれない。

ただ、本当に働きやすい環境とは、国内のオフィスだけではなく、製造業であれば海外子会社の工場での現地従業員や国内外の取引先の働き方などにも配慮する、いわゆる「三方よし」をしっかり築いている会社にこそ存在する。

どこかのドラマのように、自社の正社員だけを厚遇し、取引先などを軽く見る会社は、結果的に業績が落ちていき、最終的に働きにくくなるケースが多い。

会社には規模や業種にかかわらず、社会的責任が存在する。一般的に「CSR(企業の社会的責任)」と呼ばれるが、そこには最低限行うべき課題が多くある。

たとえば、二酸化炭素排出や大気汚染などの環境問題、海外の取引先や工場での児童労働や差別的待遇といった人権問題などへの取り組みが、その一例だ。グローバル化が進むなか、日本国内の従業員だけでなく、幅広い関係者(ステークホルダー)から信頼されることが、「よい会社」になるためには欠かせなくなっている。

人材力を経営に生かせるかが重要

近年はこれらの最低レベルは満たしたうえで、さらに次の段階に進んでいくことも求められている。それが、SDGs(持続可能な開発目標)、CSV(共通価値の創造)などだ。

バラバラに語られることもあるが、基本はCSRの最低ライン(守りのCSR)をしっかり行い、そこからさらにさまざまな社会の課題を本業やそれ以外の活動を組み合わせて解決していくこと(攻めのCSR)で、会社はより成長できるという考え方だ。

CSRを社会貢献だけと捉えている人は誤解しているが、以前からSDGsやCSVで言われていることは、CSR活動の一部として認識されていた。

今回、紹介した「人材活用評価」は、信頼される会社になるための基盤である人材力の強さを見るために作っている評価で、毎年発表しているCSR企業ランキングの重要指標となっている。ただ、この力をうまく生かしているかどうかは、ほかの部分も見ないとわからない。

株式投資の世界では、社会から信頼され、さらに将来社会課題を解決し成長が期待できる銘柄を選ぶ、「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」が広がりつつある。

企業分析で、人材活用評価以外の環境(E)、社会性(S)、企業統治(ガバナンス、G)もあわせて見ると、より働きやすい会社を見つけることができるだろう。『CSR企業総覧』には「雇用・人材活用編」と「ESG編」があるので、両者を参考にすると各企業の現状がよくわかる。ぜひご覧いただきたい。




人材活用」評価とは
東洋経済「財務・企業評価チーム」が作成(アドバイザー:山本昌弘・明治大学教授)。対象は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2019年版掲載の1501社(上場1456社、未上場45社)。調査は2018年6〜10月に実施。評価は下記45の評価項目の得点を合計して基礎得点を算出し、続いてトップ企業が100点になるよう調整。評価項目はすべてアンケート調査結果による。評価はすべて加点方式で行い、回答内容による減点はない。各データは『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2019年版に掲載