少子化に逆行。大炎上した「妊娠加算」は、結局誰が得するのか
ネットで拡散され話題となった「妊娠加算」。賛否両論あるなか、厚生労働大臣が今月、いったん凍結すると発表しました。そもそも、なぜ妊婦が医療機関を受診すると医療費が加算されることになったのでしょうか。今回の無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』で詳しく紹介されています。
妊娠加算
今春から妊娠している人が医療機関を受診すると、妊婦加算が上乗せされるようになりました。この妊婦加算、ネット上でもさまざまな意見が飛び交う議論になっていて、厚生労働省も加算の趣旨を説明するリーフレットを作って理解を求めています。
妊婦加算は診療報酬の改定で今年4月から始まり、すべての診療科で初診なら750円、再診なら380円を上乗せします。自己負担が3割の場合、初診で225円、再診では114円が加算となります。
新米 「妊娠加算のことが、ニュースで頻繁に取り上げられてますね〜」
大塚T 「そうね。妊娠加算の存在は、私もニュースで知ったわ」
E子 「加算を知った妊婦中の女性が『皮膚科に行ったら妊婦加算がついた、なんで余分にとられるの?』とツイートしたのがきっかけで、リツイートが相次いでネット上で話題になったそうね」
大塚T 「コンタクトレンズの処方箋にも妊婦加算があった人があるんでしょ?」
新米 「そうみたいですね。ちょっと行き過ぎのような…」
E子 「『事実上の妊婦税では』といった厳しい意見もあるわ。ひどいケースでは、『ここでは無理だから【産婦人科で相談して】と言われたにもかかわらず、診察料と妊婦加算までとられた』なんていう経験をあげたツイートもあったとか…」
大塚T 「あちゃー、それはキツイですね。文句言いたくなっちゃう!」
E子 「その一方では、『妊娠中は出せない薬や気をつけることがある。その管理料と思えば損はしていない』といった意見もあるわ」
新米 「もともとそういう趣旨でできた加算なんでしょうから、それも当然の意見ではありますね。ところで、妊婦加算っていつから議論になったんですか?」
大塚T 「妊婦加算は去年10月、診療報酬を決める協議会で厚生労働省が提案し、導入が議論されたそうよ」
E子 「協議会では『妊婦へのきめ細かいケアへの評価を充実させる必要がある』という前向きな意見のほか、『妊婦へのどういう配慮を評価するのか、明確するべきだ』といった慎重な運用を求める意見も出ていて、最終的には『妊娠している人が安心して受診できる環境づくりのため』として導入が決まったのよね」
大塚T 「妊婦の診察には胎児への影響や流産などの危険を考えて、検査や薬の処方を、より慎重に判断する必要があり、厚生労働省は『丁寧な診察を高く評価するもの』としているわ」
E子 「平成17年からは、国立成育医療研究センターに『妊娠と薬情報センター』をおいて、医薬品が胎児へ与える影響など最新のエビデンスを収集・評価するとともに、その情報に基づいて、妊婦あるいは妊娠を希望している女性の相談に応じることは始めていたそうよ」
大塚T「ふーん、そういう実験的なことも先に始めてはいたんですね」
新米 「ところで、妊娠加算って妊娠していたら、なんでもかんでも加算されちゃんですか?」
E子 「うーーん、加算は妊婦が外来を診察する場合、初診、再診を問わずすべての診療科で発生し、どういう配慮をしたら加算できるといった細かい決まりはないそうなのよね」
新米 「なんだかな〜。かなり曖昧なんですね」
大塚T 「そうそう、妊娠していることが診察後にわかった場合は加算できないっていうのはあるでしょ」
新米 「え?ちょっと待って、そしたらおかしいですよ!」
大塚T 「何がおかしいのん?」
新米 「だって、この議論のきっかけになったツイートって、『この前皮膚科に行ったら、お会計に呼ばれて【あれ、妊娠中ですか?ならお会計変わります】と言われて、会計高くなった』ってツイートでしたよね」
大塚T 「あっそうやね、ホントだわ。診察後にわかったのに加算されるのは、おかしいってことよね」
E子 「おっ、新米くん、そこに気づいたのは、えらいやん!」
新米 「へっへぇ〜(思わずにやにや笑いをした俺(^_-)-☆)このツイートをしたのは24歳の妊婦の方で、これに対して1週間で、3万5,000以上のリツイートがあったそうですよ」
大塚T 「わぁ、そんなにたくさん!だから、これだけ話題になったのよね」
E子 「自民党の小泉進次郎厚生労働部会長も吠えたわねぇ。不適切なケースが見つかっている問題に関し、厚労省に対応を求めたことも大きな話題になっているわね」
新米 「だから、また議論が始まったんですよね」
E子 「そう。11月の段階で小泉進次郎さんは、部会後の記者ブリーフィングでも『コンタクトレンズと妊婦さんと関係があるのか』、『妊婦加算については、さまざまな国民の声もある。このまま放置するわけにいかない』と妊婦加算について、見直しを要請してたわね」
大塚T 「小泉進次郎さんの発言のように『社会全体で子ども・子育てを支えていかなければいけないという、大きな政治のメッセージと、妊婦加算、妊婦さんが自己負担しなければいけないというところが逆行している』という点は同感だわ」
E子 「ネットでも『少子化に逆行する』とか『妊婦税だ』などと疑問の声が溢れかえってるでしょ。ワークライフバランスを進める!という一方で私も、矛盾は感じるわ」
大塚T 「厚生労働省のホームページでもこのことは取り上げられていますね。
12月14日の記者会見で、厚生労働大臣は、「妊婦加算については、いったん凍結することとし、妊婦の方に対する診療の在り方について、有識者も含めてご議論いただいた上で、改めて中央社会保険医療協議会で議論してもらうこととしたいと考えている。
っていうメッセージを発表しています」
E子 「妊婦加算は薬の処方など特別な対応が必要な妊婦を診察する医師に配慮した面もあるわけだから、代替策も検討するって言われているわね」
大塚T 「加算を納得できるものにするためには『産科だけでなくすべての科の医師が、知識を身につけて妊婦の診察に向き合い、元気な赤ちゃんを産む体制をつくっていくべきだ』と医師の側の姿勢が問われているという指摘もありますね」
新米 「今回のことがきっかけになって、最近は妊婦の診察に関わる勉強会に、内科など産科以外の医師の参加が増えるようになってきていて、医師の側の意識も少しずつ変わってきているそうですね」
E子 「産婦人科以外の医師も妊婦についての勉強を始めたっていうのは良いわね。今は、『妊娠加算されたが、妊婦だから何か変わったとは感じられなかったし、どこまで妊婦のことをわかっているのか不安なところがある。医師の方たちがちゃんと勉強してくれていればいいが』という妊婦さんの意見もあがっているくらいだもの」
大塚T 「医薬品の中には胎児の発育に悪い影響を与える物質を含んだものもあり、妊婦の診療には特別な注意が必要で、妊婦は尿路感染症を合併する頻度も高く、虫垂炎などの診断が困難な場合もあるそうですよ」
新米 「やっぱり妊婦さんを守るには、産婦人科以外の先生方にもお勉強してもらいたいですね〜」
E子 「それはそうと、妊婦以外にも、乳幼児加算(6歳未満)っていう加算もあるそうよ」
新米 「はー、勉強は限りなく続く…ですね」
妊娠加算は、妊娠している人が安心して受診ができる環境づくりが加算の目的のようです。良い方向に向けば良いんですが…。
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