全国には「なぜこの名前に」と思ってしまうような、変わった名前のバス停も。もちろん、それぞれに由来がありますが、思わず二度見してしまう「珍名バス停」、どのようなものがあるのでしょうか。

由来が気になる、変わった名前のバス停たち

 日本全国にあるバス停の総数は、正確には定かではありませんが、国土交通省が提供する国土数値情報にはじつに25万以上のバス停が登録されています。そのなかには、一風変わった名前のバス停も。

 伊那バスと中央アルプス観光が運行する駒ケ岳ロープウェイ線の「女体入口(にょたいいりぐち)」などは、少しドキッとしてしまうかもしれません。長野県駒ケ根市にあるこのバス停名の由来は諸説あり、かつて近隣にあった「女体」という集落の入り口にあたる場所だから、あるいは中央アルプスの山脈が女性の横たわる姿に似ており、中央アルプスの入り口になぞらえて、などと言われています。

 女性つながりでいくと、西鉄バスには「姉(あね)」というバス停があります。佐賀県神埼市の「千代田町姉」という地名から取られたバス停名です。さらに、福井県おおい町には福井鉄道の「父子(ちちし)」、兵庫県三田市には神姫バスの「母子(もうし)」も。家族が全員揃いそうな勢いです。


「姉」バス停には西鉄バスの45系統が停車する(沖浜貴彦撮影)。

「伯母様(おばさま)」というバス停もあります。神奈川県伊勢原市にある神奈川中央交通のバス停で、「伯母様」は地名でもあるのですが、一説には室町時代に神奈川県一帯を治めていた北条氏康の家臣、布施弾正左衛門康則の「おば」である梅林理香大姉のことだそう。彼女がこの地を所領していたことから、文字通り本物の伯母をルーツとする地名が生まれ、バス停の近くには伯母様橋という橋もあります。

 このような歴史に基づく由来があるものもあれば、だいぶ単純なネーミングのバス停も。東京都豊島区にある国際興業の「水道タンク裏」などはその例かもしれません。由来は読んで字のごとし……と思いきや、このバス停の周りに水道タンクなどは皆無。じつはタンクはすでに取り壊されており、バス停だけにその痕跡が残っているのです。

 ちなみに、「水道タンク前」というバス停も板橋区と中野区にそれぞれ存在します。

北海道名物!? 個人名がバス停に

 北海道で特に多いのが、個人の名前がそのままバス停に使われるパターンです。網走市にある網走観光交通の「柏崎さん宅前」「荒木さん宅前」、同じく網走市にある網走バスの「北村宅前」や斜里町の「寺口宅」、西興部村にある名士バスの「叶宅前」など、その人の家の近くだから、という理由で付けられたバス停名が多く見られます。

 これは、北海道の地方部ではひとつの地名がかなり広範囲を示すうえに、住宅以外の目印がどうしても少ないためです。上に挙げたうちの一部では、すでにその人が住んでいないところもあるとのこと。


北海道斜里町にある網走バスの「中村宅前」バス停(中島洋平撮影)。

 一方、都市部に多いのが、「住宅前」という大ざっぱな名前のバス停です。東京都内では練馬区と国分寺市(西武バス)、世田谷区(東急バス)にあるほか、神奈川県横浜市にはなんと6カ所の「住宅前」バス停があります。

 ここで紹介したのは、全国にある珍しい名前のバス停のあくまで一部ですが、ふだんから意識してみると、意外と身近なところに「おもしろバス停」があるかもしれません。ちなみに、千葉県大多喜町には小湊鉄道の「面白」バス停もありますよ。

記事制作協力:風来堂

【写真】あるところの入口に立つ「女体入口」バス停


「女体入口」バス停は中央道の駒ヶ根IC付近にある(風来堂撮影)。