「中学受験」で頼りにならない父親、頼りになる父親の違いとは?(写真:photoman/PIXTA)

中学受験を合格するには親のサポートが欠かせません。そのため、子どもと一緒にいる時間がなかなか取ることができない「共働き家庭」は中学受験に不向きという考えもあります。
 
「たしかに中学受験は、親の負担がとても大きいです。ですが、戦い方を間違えなければ、共働き家庭でも十分、合格を手にすることができます。大切なのは、お父さんとお母さんできちんと役割分担をして子どもに接することです」と語るのは、カリスマ家庭教師の西村則康さん。
『共働きだからできる 中学受験必勝法!』著者でもある西村さんが、共働き家庭のお父さんが「中学受験において子どもにしてあげるべきこと」「絶対にしてはいけないこと」について解説します。

希望する中学校に確実に合格するコツは、戦い方を知っているか否かです。共働きで中学受験に挑む場合、合格するために親がしてあげられることは、子どもに適した環境を整えることです。

その中でもっとも大切なのが、お父さんお母さんが意見を一致させたうえでお互いの役割分担を理解し、果たすことです。お父さんお母さんが役割分担を明確にして接することで、子どもも「お父さんとお母さん、どっちの言うことを聞けばいいのだろう」などと迷わずにすみ、受験勉強に集中できます。子どもが中学受験の際、お父さんがすべきことは、大きく次の4つです。それぞれご紹介しましょう。

普段は「お母さんのサポート役」に徹する

お父さんの役割1 普段は子どもにかかわらず、お母さんをねぎらうことに徹する

直接子どもとやりとりするのは原則、お母さんにしてください。一緒にいる時間が短いとしても子どもに寄り添いやすいのはお母さんだからです。

お父さんは、直接かかわることはせず、お母さんのねぎらい役に徹しましょう。「毎日大変だね。感謝しているよ」という具合に、日々ねぎらいの言葉をかけ、お母さんが万全な状態でお子さんと向き合えるように支えてあげてください。

お父さんの役割2 子どもを論理的に簡潔にしっかり叱る

子どもに何か問題が起きたときはしっかり対応してください。たとえば、子どもがスランプになって、点数をごまかしたり、カンニングをしたりといった許されないことをやってしまった、「うるせ〜、クソババア!」などのようなひどい言葉をお母さんに投げつけたなどのような非常時は、お父さんの出番です。

お母さんが叱るのと、お父さんが叱るのとでは、子どもに与える影響は大きく違います。普段接している分、お母さんが叱っても、さほど響きませんが、お父さんが叱る場合は違います。普段あまり接していないからこそ、言葉の重みが違うのです。子どもを叱る場合は、短くはっきり、論理的に簡潔にしましょう。

ただし、叱るだけでは、子どもは成長しません。自制心をもって「叱ってもいいが、怒っちゃダメ!」と自分に言い聞かせながら言葉をかけましょう。

また、どんなに厳しく叱っても、1日の終わりが子どもにとって「叱られモード」にならないようにしてあげてください。イライラや悲しい気持ちを持ったまま勉強しても、学習効率は高くありません。

その日の終わりにはお互いが笑顔で、「明日は楽しい1日になりそうだ」「明日はちゃんと勉強できそうだ」など、明日が来るのを楽しみにできるような会話をしましょう。

「いざというとき」がお父さんの腕の見せ所

お父さんの役割3 休日に豊かな生活体験を演出する

休みの日はお父さんの出番がいっぱいあります。直接勉強にかかわるというよりは、子どもとのコミュニケーションを深め、体験をさせながら、さまざまな感覚を育てていきましょう。

お父さんの趣味に子どもを巻き込むのが、ストレスが少なく、子どもにとっても面白い体験になります。日曜大工が趣味なら父子で一緒に棚を作ってみると、「こことここを垂直にしよう」「ここに棒を渡すには、どのぐらいの長さになるかな?」など、一つひとつの動作や会話に、中学受験の図形問題や文章題の線分図の解き方のヒントが盛り込まれています。

写真が好きなら、子どもと一緒にカメラを持って写真を撮りに行く、畑仕事が好きだったら一緒に作業をさせる、休日も忙しければ、夜、一緒に星を眺めたり、早朝に散歩したりするだけでもかまいません。そういった時間が子どもの内面を豊かにし、父子の繋がりも強くします。

お父さんの役割4 塾の先生や家庭教師との交渉

塾の先生や家庭教師にお願いしたいことがあるとき、込み入った話をするときもお父さんの出番です。

たとえば「子どもがいっぱいいっぱいなので宿題の量を少し減らしてもらえないか」「塾でうまくやれていないように思う。転校したほうがよいのではないか」などといった相談や交渉は、お母さんが相談しても、日常の心配と思われてしまいなかなか首を縦に振ってもらえないのですが、お父さんが論理的に相談をすると冷静な話し合いになり、先生の対応が変わり、OKが出たりします。

いざというときに、お父さんが動くことは効果大なのです。

絶対にやってはいけない「成功体験の押しつけ」

「俺は塾に行かずに分厚い問題集を2回やっただけで難関中学に合格した」「俺はもっとできた」などと、自分の受験に成功した経験を子どもにアドバイスするお父さんがよくいるのですが、これは絶対にしてはいけません。


なぜなら、お父さんが受験した当時と現在とでは入試問題のレベル、求められるものがまったく違うからです。

以前、中学受験をするという娘さんにお父さんが実践していた勉強法をさせたところ、中学受験を辞めてしまったという例もあります。

今の受験事情と親の受験事情は違うことを理解して、ここはぐっと我慢してください。逆に失敗話はおおいにしてあげてください。親の失敗談は、子どもにとって励みになるからです。いちばん近くにいる人生の先輩が、自分と同じように失敗したりしながら成長してきたんだと知ることで心強く感じ、頑張り続ける勇気になるわけです。