北島康介さんが16年前の“運命の出会い”について振り返る【写真:荒川祐史】

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16年前の横浜大会では当時8歳だった瀬戸大也との出会いも

 競泳のパンパシフィック選手権(パンパシ水泳、テレビ朝日系列で中継)は8月9日に開幕する。2年後の東京五輪も見据えた真夏の国際大会は、2002年の横浜開催以来、16年ぶりの日本開催。海外からもトップスイマーが集まる中で、大会のアスリートホストを務める北島康介さんは迎え撃つ日本人選手に注目。16年前のあの“運命の出会い”についても振り返った。

 2016年のリオ五輪では7つのメダルを獲得した日本競泳陣。20年の東京ではそれ以上が期待される。その中間年に行われるパンパシ水泳は現在の実力を測るには格好の舞台だ。男子では主将を務める萩野公介(ブリヂストン)と共に熱い視線を集めているのが、永遠のライバル瀬戸大也(ANA)。幼少時代から切磋琢磨し続けてきた同学年の2人だが、瀬戸と北島さんの初めての出会いは実に運命的なものだった。最終回では北島さんが16年前を回想した。

 2002年のパンパシ水泳横浜大会。北島さんの大ファンだった当時8歳だった少年は、現地で大会を観戦。会場の外で出待ちをして、サインをもらい、記念の2ショットも撮ってもらった。その少年ファンこそが瀬戸大也だ。「年を取ったなと思いますね」。北島さんは笑いながら、瀬戸への期待について口にした。

「あの時、横浜に来て一緒に写真を撮ったことは正直なところ全く覚えていません。でも、あの時の少年がこうやって日本の国旗を背負って、代表として戦っている姿を見ると感慨深いですね。背中を追っているというか、結局水泳は自分自身を超えていくようなスポーツだと思いますが、あの時、多分大也は『自分もこういうところでこういう大会に出たいな』と思ったんでしょうね」

 北島さんから影響を受けた少年が、その背中を追うように、日本を代表するスイマーになった。オリンピックでメダルを掴み取り、そして日本で行われる国際大会で今度は憧れられる側に回るのだから、なんとも壮大でドラマチックなストーリーだ。

「今回は東京開催です。今度は大也がジュニアの子たちに夢を与える立場になったわけですから、活躍して欲しいと思いますし、それこそ活躍することをみんなから期待されていると思います。自分は今振り返れば、パンパシはあまり調子がよくなかった年もあるけれど、彼らはそうは言っていられないと。2020年のことを考えたらどんな大会でも100%以上の力を出し切ることが大事になってくると思います」

 今大会で最も注目すべき種目は瀬戸が、萩野、世界選手権で頂点に立ったチェイス・カリシュ(米国)と激突する男子400メートル個人メドレー。事実上の世界一決定戦を、北島さんも興味深く見ている。

「大也はこの間、良い記録出して、気持ちも上がってきていると思います。夏にピークを持って来られるどうかも楽しみですし、こういう熾烈な戦いがこの東京で見られるのことが楽しみです。ただ3人以外にもトップ争いに絡んでくる外国人選手も出てくるかもしれません。パンパシはそういう大会でもあります。新しい芽が出てきて2年後何があるかわからないなという楽しみも生まれます」

女子の期待は同じ平井コーチに師事する青木玲緒樹

 北島さんは“3強”の対決を楽しみにしつつも、新たな力が台頭する可能性にも触れた。またそういう点もパンパシの醍醐味でもあるという。

 一方で女子では自身も師事した平井伯昌コーチの指導を受ける平泳ぎの青木玲緒樹(れおな・ミキハウス)に飛躍の期待をかけた。北島さんは中学2年から、青木も小さいころから平井コーチのもとで指導を受けるなど、共通する部分もある、いわば“妹弟子”のような存在だ。

「彼女はメインにならなければいけない存在。女子の平泳ぎを引っ張っていく選手として、玲緒樹はこの1、2年でだいぶ自信をつけてきたので、パンパシはさらなる飛躍のいいきっかけになるんじゃないかと思います。平井コーチも、きっとすごい手に力が入るのではないでしょうか」

 競泳日本代表のヘッドコーチを務める平井氏。特に青木への指導は熱を帯びる場面もあるというが、北島さんは「それは平井先生のメダルを取らせたいという気持ちが大きいから厳しい指導、厳しい練習を課しているんだと思う」と分析している。

 北島さんが現役時代には、平井門下生の一員として高地でのトレーニング合宿も共にするなど、一緒に汗を流した時期もあった。「そんなに覚えていないですよ」と苦笑いしつつも、当時を振り返りエールを送った。

「平井先生に怒られて、よく泣きながら練習していました。そこまで知っていると、応援にもさらに気持ちが入ります。代表になって日本一になったりするのを見ると、すごいなと思うと同時に、本当に平井先生はすごいなと改めて思います」

 北島さん自身も世界への飛躍のきっかけをつかむことができたパンパシ水泳。23歳の青木を筆頭に、この大会で自信をつかめば2年後へと繋がっていくことは間違いない。新星の出現にも、期待を寄せていた。

 選手たちの泳ぎはもちろん、競泳界を盛り上げる北島さんが「アスリートホスト」を務めるパンパシ水泳。2018年夏の見逃せないイベントになりそうだ。

(終わり)(THE ANSWER編集部)