大ヒット映画に共通するストーリーの流れとは?
「大ヒットする映画にはある程度決まった流れがある」ということをイギリスの科学者チームが発見したとThe Guardianが報じています。このストーリーラインは、必ずしも「最も好かれるストーリー」になるわけではないものの、話題になる傾向にあり、商業的には最大の成功を収めるとのことです。
Scientists uncover formula for box office movie success | Film | The Guardian
科学者たちは、6000以上の映画の脚本データを分析し、一連のアルゴリズムのもとそれらをフィルタリングしました。その中で彼らは、最もお金を発生させるエモーショナルアークとして、「Man in a hole」と呼ばれる流れを発見しました。
研究チームのリーダーであり、バーミンガム大学の行動経済学およびデータサイエンスの教授・Ganna Pogrebna氏は「この方式の発見は、映画を制作する側と観賞する側の双方の考え方を根本から変えうる」と述べており、この方式の発見により真に観客が求めているものに耳を傾けることが可能になると考えられます。
研究者たちは以前から、小説でしばしば見られる感情変化から映画を6つにカテゴライズしていました。その分類とは、感情の継続的な上昇を描く「rags to riches(無一文から大金もちに)」、反対に感情が下降していく「riches to rags」、下降した後に上昇する「Man in a hole」、逆に上げてから落とす「Icarus」、上げてから落としまた上げる「Cinderella」、落ちて上げて落ちる「Oedipus」の6パターンです。
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これらの分類に従って大成功を収めた映画を分析した結果、幸せな状態から悲劇に陥り、再び幸せを手に入れる軌跡を描く「Man in a hole」形式のストーリーが、映画として最も成功する形であることがわかりました。
伝記ものに限れば、無一文から大金持ちになる「rags to riches」がトップだったものの、この形はミステリーやスリラーでは他の形式に大差をつけられることに。また、どんどん落ちていく「riches to rags」はコメディで圧倒的な不振を記録するなど、ジャンルによって偏りがあったとのこと。
これについてPogrebna氏は「この研究による発見は多次元的である」と説明しています。衰退を描く「riches to rags」ストーリーは長編作品など大規模で巨額の予算を投じられていた場合には商業的に成功しうるものであったり(クリストファー・ノーランの「バットマン ビギンズ」)、一度上げてから落とす「Icarus」は低予算の中では最も成功しやすかったりと、映画のジャンルや製作状況などに左右される部分が大きいといえます。
by Benjamin Carnevale
またPogrebna氏は、「Man in a hole」のみを作るべきというわけではないとし、「私たちは映画産業を殺したいわけではない。なにが商業的に成功しうるかを見極めることができれば、学術的な調査結果は、より実験的な映画をプロデュースするための保証になってくれる」と述べており、映画会社がより創造的になる助けとなるのを望んでいるとのことです。
この研究内容は、アメリカのコーネル大学図書館により「The Data Science of Hollywood: Using Emotional Arcs of Movies to Drive Business Model Innovation in Entertainment Industries」というタイトルで出版されています。