また、高プロ制度導入に熱心な経団連は「ごく一部の業務に限定せず、研究職、技術職、市場調査担当、さらには高度の専門知識を用いて新たな製品・部材・サービスの導入を提案したり付加価値の高いビジネスモデルを創造したりするソリューション型ビジネスの担当者などを含むことが求められる」と政府に要望している(「2015年版経営労働政策委員会報告」)。 そのほかにサイバー攻撃に対応するホワイトハッカーやデータサイエンティストも含めるように提起している。今で言えば、AI(人工知能)やIoT、フィンテックに関わる高度テクノロジー人材も入るのだろう。

 高度専門職と言えば、いかにも限定的なイメージを与えるが、その定義はあいまいだ。今後の厚労省の省令作成過程において具体的にどんな職種・業務が入るのか、注目すべきだろう。 正規と非正規の間の処遇の格差の改善を目指すのが同一労働同一賃金だ(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)。 同一労働同一賃金については、すでに16年12月に政府の「同一労働同一賃金ガイドライン案」が示されている。法制化によって正規労働者と非正規労働者で均等待遇を義務づけるとともに「待遇差の内容やその理由等」に対する説明義務を課すもので、同一労働同一賃金ガイドライン案を法的に根拠づける。 ガイドライン案では、基本給、ボーナス、各種手当などについて、正社員とパート・有期雇用労働者の間の均等・均衡待遇の実現を求めている。手当については役職手当、特殊作業手当、特殊勤務手当、時間外労働手当の割増率、通勤手当・出張旅費、単身赴任手当、地域手当など同じ仕事をしていれば同じ額を支給する。 また、仕事内容とは直接関係のない食事手当や社宅、保養施設などの福利厚生施設の利用は正社員、非正社員の区別なく同じにすることを求めているのも大きな特徴だ。 法律では待遇差について客観的かつ具体的な実態から合理的な説明義務が求められるが、このうち正社員と非正社員の間の待遇差が合理的と言えないものが見直しの対象になる。 基本給やボーナスは仕事の成果や貢献度の違いで格差を設けることについてある程度合理的な説明が可能だろう。しかし諸手当については非正社員にのみ支給しないという合理的説明は極めて難しい。 実際に正社員に支給し、非正社員に支給していない手当は多い。日経リサーチの調査(「柔軟な働き方等に係る実態調査(2668社)」17年3月)によると、正社員に支給している手当(通勤手当など)は平均6.9種類なのに対し、非正社員は3.0種類と大きな開きがある。 また、6月1日には現行の労働契約法20条を巡る裁判で初の最高裁判決が示された。定年退職後の再雇用で待遇に差が出ることは許容しつつ、いくつかの手当について支給しないことは「不合理で違法」との判断だ。 労働契約法20条は、新法のパートタイム・有期雇用労働法の8条に当たるが、現行法に比べて解釈を明確にしている部分があり、今後は新法の解釈を含めて、雇用形態間に不合理な待遇差がないかを検証し、不合理な待遇差がある場合には、人事制度の改定を含め是正することも必要になるだろう。

 少しでも労働者が疑念を持てば法廷闘争まで持ち込まれるケースが増える可能性がある。労使でより具体的な検討に着手することが重要になる。 すでに同一労働同一賃金がもたらす弊害も懸念されている。本来、非正社員の処遇を正社員に近づけようとすれば当然、人件費が増えることになる。だが企業の中には人件費増を嫌い、正社員の処遇を下げることによって対応するところも出てくるかもしれない。

 すでに労組の同一労働同一賃金の要求に対し、日本郵政グループが正社員の一部の住居手当を廃止することが報道されている。