広告代理店大手オプトホールディングは4月1日、AI開発コンペティションサイトを運営する新会社SIGNATE(シグネイト)を設立した。AI・ビッグデータの活用、データサイエンティストやAIエンジニアの採用・育成を支援する同社の夏井丈俊副社長に、ビジネスモデルや今後の事業展開などについて聞いた。

1987年ディスコ入社、98年ディスコInternationa(lUS)CEO、2000年ディスコInternational(UK)CEO、06年常務取締役を経て、10年代表取締役社長(16年退任)。17年5月オプトワークス(現SIGNATE)代表取締役社長。18年4月から現職。 データサイエンスラボは、ネット広告代理店大手のオプトが2013年12月に設立したAIの研究開発組織です。

 海外では世界中のデータサイエンティストの能力を活用してAI開発を行うコンペティションが定着しつつあり、米国のKaggle社やインドのHackerEarth社といった企業がAI開発コンペティションのプラットフォームを運営しています。この日本版をつくったら面白いのではないかということで、データサイエンスラボが、Deep-Analytics(現SIGNATE)を開発しました。

 Deep-Analyticsは、登録会員のデータサイエンティストに対して、AI開発ニーズを持つ企業や官公庁などがコンペティションを開催し、参加者からアルゴリズムを募る場となっています。応募されたアルゴリズムは、その精度がランキングされ、応募期間中に参加者は何度でもチャレンジすることができるため、自ずと精度が高まっていきます。

 募集側は最上位のアルゴリズム開発者に賞金を与えて、その所有権を譲渡してもらうことで、効率的に精度の高いアルゴリズムを獲得することができるのです。 AI活用が世界中で急速に広まる一方、そのメインプレイヤーであるデータサイエンティストは圧倒的に不足しています。そこで、Deep-Analyticsを活用した人材ビジネスを展開していこうと、2017年5月に設立したのがオプトワークスです。 オプトワークスがスタートしてからデータサイエンスラボと緊密に連携しながらビジネスを推進していく中で、事業展開のスピードアップの必要性を感じ、2018年4月1日、オプトワークスとデータサイエンスラボを統合した新会社SIGNATEを設立。Deep-Analyticsの名称もSIGNATEに変更しました。

 新会社の社長にはDeep-Analyticsの開発を主導したオプトホールディングCAO(最高解析責任者)でデータサイエンスラボ所長の齊藤秀が就任し、私は副社長を務めています。 4月現在で登録しているデータサイエンティストは約8000人となっています。その約70%が社会人で、ほとんどが大企業やIT関連企業、研究機関などで活躍している人材です。残り30%は東大や東工大など上位校を中心とする学生(修士、博士課程在籍者多数)です。海外の登録者は10%弱ですが、今後もっと増やしていきたいと思っています。

 これまでにAI開発案件のコンペティションを開催しているのは、JR西日本、Sansan、ポッカサッポロなどの企業や、文部科学省や経済産業省などの官公庁です。あらゆる産業でAIを活用する流れが拡大しており、引き合いも非常に増えています。 コンペティション形式による「AI開発」やSIGNATEのトップランカーに依頼する「データ分析」サービスのほか、データサイエンティストの「採用・育成」支援を行います。

 SIGNATEでのAI開発においては、AI活用のコンセプトを整理し、開発手順やベースとなるデータを整備して登録会員に示すことが必要になります。コンペティションで確実に結果がでるような設計が欠かせませんが、これをクライアントだけで行うのは難しいため、当社のデータサイエンティストが課題設定からコンペティション設計、成果物の検証・確認までのコンサルテーションやサポートを行います。でき上がったアルゴリズムを当社が預かり、さらに精度を高めていくことも可能です。