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夫の浮気への腹いせで、私も不倫してしまった。お互いに不倫をした夫婦の場合、慰謝料はどうなる? そんな質問が、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられた。

相談を寄せた女性は「夫に異性とのチャットを2度としないという約束事を破られ、仕返しに不倫しました」と言う。夫の不倫については、肉体関係を示す明確な証拠はないものの、朝帰りや周囲の証言から不倫の事実を確信しているそうだ。妻の不倫について、夫は「キスをしたプリクラ」という証拠をつかんでいる。

現在、夫と離婚についての話し合い中だ。夫婦それぞれが不倫をしていた場合、慰謝料はどのように決まるのだろうか。河内良弁護士に話を聞いた。

●慰謝料の相殺はできない

「今回のケースでは、慰謝料ゼロとなる可能性があります」

河内弁護士はこのように指摘する。お互いの慰謝料を相殺するからか。

「そうではありません。『慰謝料』とは、法的には『不法行為に基づく精神的損害に対する賠償』のことです。不倫の慰謝料は、配偶者の不法行為(不貞行為)によって精神的に傷ついたことに対して賠償を求めることです。

仮にお互いの不倫(不貞行為)を共に立証できたとしても、お互いの慰謝料を相殺することはできません(民法509条)。お互いに支払い合うことになります」

●最大の問題は「決定的な証拠がない」という点

では、今回のケースで、「慰謝料がゼロ」になるのはなぜだろうか。

「今回のケースで最大の問題は、お互いに不貞行為の決定的な証拠がない点です。

不貞行為とは、配偶者以外の異性との、肉体関係を伴う交際を指します。今回のケースでは、伝聞の証拠や『キスをしたプリクラ』があるとのことです。しかし、性行為を示す決定的な証拠(ラブホテルに出入りする際の写真など)は双方ありません。

不貞行為の立証はできておらず、今回のケースでは、不貞行為を理由とした慰謝料請求はもちろんのこと、離婚そのものも認められない可能性も大いにあります。結果として、離婚時の金銭的なやりとりとして、慰謝料はゼロ、財産分与のみとなりそうです」

●不貞行為の前に夫婦関係が破綻していれば、慰謝料がないことも

今回のケースに限らず、不貞行為があっても慰謝料が発生しないケースはあるのだろうか。

「不貞行為があっても慰謝料を払わなくて良い場合はあります。不貞行為の前に夫婦関係が破綻していたケースでは、不貞行為があっても精神的損害とは言えず、慰謝料を支払う必要がないこともあります。

しかし今回のケースでは、夫婦関係をもう一度見直す過程での不貞です。破綻した後だという主張は通用しないと思われます」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
河内 良(かわち・りょう)弁護士
大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。
事務所名:河内良法律事務所
事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp/