ローリングストーン誌が選ぶ「2017年ベスト・ソング」50曲

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2017年の名曲を一挙総括!世界的メガヒット「デスパシート」「シェイプ・オブ・ユー」、U2やベックらロック勢、ミーゴスやカーディ・Bなど、ヒップホップ/トラップまで揃ったベスト・ソング50選を紹介する。

50位 21サヴェージ「Bank Account」
49位 ハイム「ウォント・ユー・バック」
48位 YFNルッチ feat. PnBロック「Everyday We Lit」
47位 ウィリー・ネルソン「削除そして早送り」
46位 ローラ・マーリング「Wild Fire」
45位 マイリー・サイラス「マリブ」
44位 カーリー・レイ・ジェプセン「カット・トゥ・ザ・フィーリング」
43位 ビッグ・シーフ「Shark Smile」
42位 コダック・ブラック「Tunnel Vision」
41位 カマシ・ワシントン「Truth」
40位 ファーギー feat. ニッキー・ミナージュ「ユー・オールレディ・ノウ」
39位 ダン・オーバック「ウェイティング・オン・ア・ソング」
38位 ゴリラズ feat. ポップカーン「サターンズ・バーズ」
37位 リンジー・バッキンガム/クリスティン・マクヴィー「イン・マイ・ワールド」
36位 Dvsn「Mood」
35位 ダーティー・プロジェクターズ「Up In Hudson」
34位 デュア・リパ feat. ミゲル「ロスト・イン・ユア・ライト」
33位 リル・ヨッティ feat. ディプロ「Forever Young」
32位 マーゴ・プライス「Pay Gap」
31位 クレイグ・フィン「God In Chicago」
30位 ジャイデンナ「Bambi」
29位 Jバルヴィン&ウィリー・ウィリアムス「Mi Gente」
28位 チャーリー・ブリス「Glitter」
27位 カルヴィン・ハリスfeat. フランク・オーシャン&ミーゴス「スライド」
26位 ティー・グリズリー「First Day Out」
25位 スーパーオーガニズム「Something For Your M.I.N.D.」
24位 DJキャレド feat. リアーナ&ブライソン・ティラー 「ワイルド・ソーツ」
23位 チャーリーXCX 「Boys」
22位 スプーン「Hot Thoughts」
21位 アーケイド・ファイア「エヴリシング・ナウ」

20位 テイラー・スウィフト「コール・イット・ホワット・ユー・ウォント」

遊び心満載の「ゴージャス」から不機嫌な「ルック・ホワット・ユー・メイド・ミー・ドゥ〜私にこんなマネ、させるなんて」まで、アルバム『レピュテーション』からの先行シングルは至るところで聞かれたが、アルバムの鮮やかなスピリットを見事に捉えているのが、この荒涼としたシンセポップのラブソングだ。テイラーは「二人のつながりというソーシャルメディア(訳註:”社会の人々をつなぐ媒介”という文字通りの意味で)だけあればいい」と歌い上げている。

19位 ダイエット・シグ「Sixteen」
Swear I’m Good At This by Diet Cig
ニューヨークを拠点とするデュオが、思春期の悩みという永遠の物語にテーマをシフトした。「16歳のとき、本名で男の子とデートした/変な感じだった」とアレックス・ルシアーノが歌った途端に元気いっぱいなパンクが爆発する。いい加減子供じゃないのに感情の起伏が激しいティーンエージャー気質そのままの展開だ。アレックスが道具のように聞こえる他の曲に比べたら、彼女が歌うべき至極まともな曲といえる。

18位 ベック「ディア・ライフ」

歌詞は「ルーザー」時代からベックのお気に入りのテーマ‟惰性と倦怠”だ。しかし、曲調は多幸感がほとばしり、螺旋階段を上がるように夢見心地の幻想曲へと昇華して行き、そこにブライアン・ウィルソンやビートルス的な色合いが混じり合う。10〜20年前のベックなら、薄ら笑いを浮かべて肩をすくめながらこの曲をプレイしただろう。しかし今の彼は、ポップスの美しさを臆面もなく強調しながら平常心でプレイできる自信に満ちあふれている。

17位 リル・ウージー・ヴァート「XO Tour Llif3」

鬱陶しい2017年について語っているこの曲を上手く特徴づけているのは、「俺を限界まで追い込む/仲間はみんな死んじまった」という歌詞をど真ん中に据えて展開される、ドラッグに溺れて無感覚なエモラップでのサルカソン(訳註:不機嫌な状態を維持すること)だ。そして、リル・ウージーが無頓着に投げつけるこの曲を聴いていると、次のコーラス部分に辿り着く頃には一緒に歌っている自分に気付くはずだ。「それが人生だ!」と、かつてシナトラが言ったように。

16位 ジュリア・マイケルズ「Uh Huh」

マイケルズは絶対に無視できないソングライターの上位40人の一人だ。その証拠に、彼女の名前がクレジットされたセレーナ・ゴメスの楽曲(「Bad Liar」)は、このランキングの12位に入っている。急がずにいられないほどホットな恋愛を歌ったこの曲の主人公はジュリア・マイケルズで、まばゆい光を放っている。「こんなにパニックしているのがめちゃくちゃ気持ちいいなんて珍しいわ」とあえぐように歌う彼女。あなたのパニック同様、この曲もめちゃくちゃ気持ちいい。

15位 ドレイク「Passionfruit」

美味しいトロピカルフルーツとガールフレンドがそれとなくカレシを攻撃する様子を結び付けられるのは、世界で唯一人ドレイクだけだろう。でも、そんな彼だからこそ、みんなドレイクが大好きなのだ。ゆったりとした極上のR&B/ハウス・グルーヴなど、彼お得意のやり方をもってすれば、表面下で沸点へと上昇していく恨み節ですらセクシーに聞こえる。「Passionfruit」はドレイク史上最もクールで穏やかな別れの歌といえるかもしれない。

14位 LCD サウンドシステム「コール・ザ・ポリス」

バッド・ヴァイブの中でも踊らせるダンスの匠が作った、奇妙な開放感を持つ7分間のシンセ・ファンク・パラノイア。LCDのリーダー、ジェイムズ・マーフィーは去年デヴィッド・ボウイの『★』に参加しており、そこで得た影響がはっきりと現れている。彼はまるで、2017年のブルースを聞いてぐっすりと寝込んでしまった、シン・ホワイト・デュークの厚かましいアメリカ人のいとこにでもなったかのようだ。

13位エド・シーラン「シェイプ・オブ・ユー」

この曲を自分で歌うと決める前にリアーナに提供しようと考えていた話は有名だ。うん、利口な男だ! マリンバの魅力的なビート。相手に惹かれていくリアルな様子(クラブでヴァン・モリソンをかけるために並ぶポップスターなんて他にいるのか?)。「シェイプ・オブ・ユー」が記録破りのスマッシュヒットとなったのも納得だ。

12位 セレーナ・ゴメス「バッド・ライアー」

確かに、映画『ストップ・メイキング・センス』みたいだ。アメリカの国民的スウィートハートは、トーキング・ヘッズのニューウェイヴなベースラインを一口噛んで、悪魔のような中毒性を持つ見事な物語へと変貌させている。優しく囁いても、甘い声で語りかけても、大きな声で歌っても、「バッド・ライアー」を歌うセレーナの感情は熱く燃えさかり、一瞬たりとも熱が下がらないと示している。

11位トーヴ・スティルケ「Say My Name」

瞬間的に恋に落ちる様子を歌った恐ろしいほどキャッチーなこの曲は、かつてのスウェーデン人アイドルが北欧的なワイルドさで歌っている。「僕の名前を呼んで/お気に入りのセーターみたいにボロボロになるまで着ておくれ」と、スティルケがからかい半分に歌ったあとに、おちゃめなデジタル・ギターのリフが入ってくる。ウィーザーの「アンダン〜ザ・スウェター・ソング」以来となる、冬服の着心地の良さを表現した最高にポップなフックといえるだろう。

10位 フューチャー「Mask Off」

フューチャーは大胆にも「パーコセット/モリー、パーコセット」という呪文で、リック・ジェイムズとの繋がりとも、薄気味悪いジャズ・フルートのループを多用するクセからも手を切った。ケンドリック・ラマーの加わった「Mask Off」のリミックスでは、彼がプリンスの生まれ変わりを宣言して「立ち上がってインスパイアされるんだ!」と叫ぶ部分で、次のレベルへ到達している。

9位 ラナ・デル・レイfeat. ザ・ウィークエンド「ラスト・フォー・ライフ」

悲しげな瞳を持つ麗しのウィークエンドとデュエットしているダークさが一際輝くこの曲で、ラナ・デル・レイのカリフォルニア・ゴス帝国はハリウッドサインを越え、魂の砂漠へと足を踏み入れた。ガールグループ的な華やかさがゆっくりと溶解し、闇へと引き込む一瞬一瞬を味わいながら「とっても楽しすぎるの」とラナが歌う。

8位 ポルトガル・ザ・マン「Feel It Still」

長らく活動してきたポートランド出身のロック集団が、今年一番滑らかに輝く上品なモータウン風の曲で、突然ポップの金脈を掘り当ててしまった。「Feel It Still」はヴィンテージなデトロイト・ソウルが担っていた音楽の最前線まで遡り、そこに思いがけないフック(「ウー、快楽を得るために反抗しているのさ/1966年からずっとそう感じているよ」)を突っ込んでいる。

7位 ルイス・フォンシ&ダディ・ヤンキーfeat. ジャスティン・ビーバー「デスパシート」

2017年最大のヒット曲は、2017年最高の曲のひとつでもある。聴く者を誘惑するレゲトンのグルーヴは、プエリトリコのサンファンから中米のビートまで組み合わせたもの。「デスパシート」はチャートの1位に輝くと、夏の間ずっとそこに居座り続け、郊外に住むおばあちゃんが好んで聞く「ラ・バンバ」以来のスペイン語の曲となった。

6位 ミーゴズ feat. リル・ウージー・ヴァート「Bad And Boujee」

アトランタのミーゴズがブルジョア層(bourgeois)にリーチし、大通り(boulevard)を揺らそうと目論んだこの曲は、国内の至るところで今年最も聞かれた1曲となった。オフセットとクエヴォ、ゲストのリル・ウージー・ヴァートの3人は、フローを洋服のように着替えて、ブルーチーズ・チキンをオーダーしながら、メトロ・ブーミンのベースが生み出した新しいマネーに祝杯を上げている。

5位 U2「ライツ・オブ・ホーム」

U2ほど過去の財産を回収するのが上手いバンドはいない。ジ・エッジが弾くストーンズ風のイカしたリフの上で、「俺はここにいちゃいけない、だって俺は死んでいるはずだから」とボノが唸る。曲の幕開けにしてはものすごい歌詞だ。これに続くのが「俺の最盛期はこれからくると確信している」という大胆な宣言だ。闘志から空を衝くコーラスまで、U2というバンドを最高のバンドたらしめているお馴染みの要素がすべてここにある。

4位 カーディ・B「ボダック・イエロー」

カーディ・Bが登場する前、私たちはどうやって困難に打ち勝ってきたのだろう? ”ストリップ・クラブのマライア・キャリー”を名乗る彼女は、「バッグをもらって歯を直した/こういうのは安くないってあんたら売春婦が知っているといいけど」というブロンクス・フローで参上の狼煙を上げた「ボダック・イエロー」で、世界を大混乱に陥れた。現在のカーディは踊らない。彼女が動かすのはマネーで、血塗られた靴で踏み潰すのは自分のアンチたちだ。彼女の「リアルじゃなきゃ付き合えない」という言葉通りに。

3位 ケンドリック・ラマー「ハンブル」

現役最高峰のラッパーが、これまで一度も興味を示さなかった”ヒットするホップス”へと舵を切って、難なく結果を出したようだ。愉快なほど開き直ったリアルな歌詞と、プロデューサーのマイク・ウィル・メイド・イットが提供したトラックで、彼は自身初のナンバーワン・ヒットを手に入れた。ポップな意匠を駆使した「ハンブル」は、肉割れしているケツみたいなリアルさを持ち合わせている。

2位 ロード「ホームメイド・ダイナマイト」

マジですごいよね? ロードは『メロドラマ』で度肝を抜くような躍進を果たしたが、「ホームメイド・ダイナマイト」は傷心がピークに達した彼女が、パーティーで気の合う人と出会った様子を描いた、神経質でセクシーなシンセポップ・スリラーだ。靴を脱いで一緒に踊り、これまでで一番の嘘を語り合う二人。そんな二人に寄り添うように鳴り響く、割れたガラスみたいなスウェディッシュ・エレクトロ・ビート。この曲には、カリード、SZA、ポスト・マローンをフィーチャーした極上のリミックスも用意されているが、この曲をまとめ上げているのは、「パッ!」という声とともに彼女の心のダイナマイトが弾ける瞬間まで続く、ロードのエキセントリックな囁き声だ。ダンスフロアで目が合うスリルを味わいながら、ロードはその瞬間を祝っている。

1位 ハリー・スタイルズ「サイン・オブ・ザ・タイムズ」

ワン・ダイレクション出身のスターなのだから、ソロに転向しても安全第一で行くと思っていた人もいるかもしれない。しかし、ハリー・スタイルズは初のソロ・シングルでそんな疑念を一蹴した。ボウイやクイーン級の高貴なグラムを狙った6分近いエキセントリックなピアノ・バラッドの「サイン・オブ・ザ・タイム」は、死と再生を行き来しながら思い悩むスタイルズの天国のような高音ボイスに彩られ、あっという間に大評判となった。「サイン・オブ・ザ・タイム」は一年を通じて、時間と共鳴しながら拡大していったのである。この曲の無謀な野心はそのまま長所となっており、彼の声から聞こえる自信と豊かな感情は、寄せては返す波のように音楽とともに積み重なっていく。あれだけ巨大なサウンドと愛情を持った曲を奏でられるロックスターは、ここ何年間でスタイルズしかいなかった。確かにリスクの高い転身だが、「サイン・オブ・ザ・タイム」を思い付き、それを見事に成功させられるのは、この男しかいない。