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●サイト全体の情報を整備し、高単価商品のページにテコ入れ

通販事業を10年以上続けてきた亀田製菓。しかし、ネットショップでは、商品によって掲載されている情報にバラつきがあったり、ユーザビリティが決して良くはなかったりと、問題を抱えていた。そこで、2017年3〜9月にかけて、大幅なリニューアルを行い、現在のサイトに生まれ変わった。

今回、ネットショップの刷新に携わった亀田製菓 事業開発部 ECチーム 大谷雅子氏と、サイトのコンサルティングを担当したEストアー カスタマーアカウント本部 東京第2部 リーダー 大橋寛氏にインタビュー。幅広い層に愛されるネットショップのあり方やサイト改善のポイントを詳しく伺った。

ネットショップをテコ入れしようと動き始めたきっかけは?

大谷氏(以下、大谷):発端は2016年10月、事業開発部 ECチームができ、ネットショップの運用を担うようになったことでした。それまでは、通販自体を別の事業部が行っていて、お米など、おせんべい以外の商品を売る場所という位置づけでした。ただ、全社的にECを強化する必要が出てきて、その時、ネットショップで取り扱う商品を見直したり、サイト自体を改善したりしないと、EC経由での売上げアップは見込めないなと気づきました。

具体的にどういった改善を進めてきたのでしょうか?

大谷:最初に取り掛かったのが、全商品を見直して、適切な情報が掲載された状態に整えることでした。以前は登録された商品情報にバラつきがあり、商品名に価格、賞味期限、原材料くらいは掲載していましたが、たとえば、アレルギー表示は商品によって、あったりなかったり……。登録されている商品の数自体も少なかったため、Eストアーに相談し、情報を入力するとボタンひとつでHTMLを吐き出せるモックを作っていただき、サイトに出す情報を揃えていきました。

情報に統一の後に着手したことは何ですか?

大谷:ネットショップでは、ごはんやおにぎり、パンなど、弊社のグループ会社である、尾西食品の長期保存食を取り扱っています。その長期保存食のページを改善しました。

おせんべいや柿の種と比べると、単価が倍以上の商品ですね。

大谷:おせんべいだと一袋売っても数百円。売上の積み重ねは大変です。一方で、長期保存食は単価が高く、競争力のある商品です。そのページをきれいにして、購入しやすい状態を整えた後、リスティング広告を出すなどして、お客様を呼び込む流れを作りました。

大橋氏(以下、大橋):尾西食品の長期保存食は、コンビニなどでは売られていないため、希少性があります。また、ネットショップでは“作りたて”の商品を売っているため、保存できる期間が長い点も売りでした。スーパーなどには、製造から数カ月〜1年経った保存食を売っているケースもあります。それだと購入後の保存期間が短くなりますよね。亀田製菓のネットショップでは、作りたての保存期間が長い商品を買えることをアピールし、長期保存食で売上を立てていきました。

ページを整える際、どんな情報を追加したのでしょうか?

大橋:動画や「ハラル対応しています」といった情報です。リスティング広告からショップに来てくださる、多様なお客様のニーズに応えられるような、情報が集約されたランディングページとして、商品ページを作りました。そのページをひとつの型として、他の商品にも横展開しています。

大谷:尾西食品が持つ「長期保存食の作り方(どうすれば食べられる状態になるのか)」を解説した動画は、私たちに亀田製菓にしか使えない情報です。大橋さんがそこに気づいてくださり、ページに入れてはどうかと提案してくださいました。動画を入れることで、お客様も保存食を買って、どう食べるのかをイメージしやすくなりますよね。おかげで長期保存食全体の売上は、前年と比べて倍増しました。またお客様のお声を伺ううちに、これまで長期保存食=非常食、登山のお供のイメージがありましたが、海外旅行に持っていってくださる方もいると知り、アプローチする先が広がりました。

●シニア層からも愛されるサイトに

近年、スマホ経由でECサイトを閲覧・購入する人も増えています。スマホ対応はどうしていますか?

大谷:メンテナンスが行き届いていなかったスマホサイトを、PCサイトよりも先にリニューアルしました。2017年3月にスマホサイト、同年9月にPCサイトのリニューアルを終えました。ドロワーメニューを置いて使い勝手を良くしましたね。

大橋:リニューアル前のスマホサイトは縦長すぎて、何度もスクロールしなければならない状態でした。ページを短くしてユーザビリティを上げたい、アクセサビリティを担保したいなど、リニューアルで実現したいことが具体化されていたので、我々の方でサポートさせていただきました。

スマホとPC、それぞれで購入されるお客様の比率はどれくらいですか?

大谷:通常時は1:3くらいです。

大橋:スマホとPCを合算すると、アクセスの2/3が女性です。35〜44歳くらいのお客様がボリュームゾーンで、その周辺の年代も多く、さらに60〜70代のシニア層も、他のネットショップと比べると多めです。

幅広い利用者に愛されながらも、お客様の年代に特徴がありますね。

大橋:使いやすいサイトとして、ご年配の方たちにも愛されている印象があります。「スマホにカード情報を入力するのが不安」「小さな画面に住所を入れるのが難しい」と感じているシニア層は少なくありません。実際、年齢層が上がるほど、スマホ経由よりもPC経由でお買い物される方が多いです。そのため亀田製菓さんでは、スマホでの購入比率が低いのだと考えられます。

シニア層を意識して、サイト作りで工夫されていることはありますか?

大谷:シニアフレンドリーでありたいので、文字の大きさはこだわっています。

大橋:16ポイント以上に設定しています。一般的なサイトは10〜12ポイントにしているケースが多いですが、30代後半になると、もう少し文字が大きい方が見やすいなと感じる方が増えます。フォントは游ゴシックで、基本的にはコーポレートサイトと色使いやトーンを合わせています。

そういった数々のテコ入れを行った結果、ネットショップの売上や商品の売れ行きはどう変わりましたか?

大谷:ネットショップ単体のベースの売上は前年比の2倍になりました。11月は某TV番組で取り上げられたこともあり、前年比4倍を記録しました。売れる商品は圧倒的に期間限定モノですね。ECは通常商品よりも、限定感のある商品の方が売れる傾向にあります。

通販というと送料が気になるお客様も多いと思います。送料に関して工夫していることはありますか?

大谷:場合によっては、送料の方が商品価格よりも高くなることがあります。ネットショップでは5000円以上で送料無料、としていますが、ここ1年ほどは期間限定の商品であれば、送料がかかっても気にせず買ってくださるお客様が増えていると感じています。「ここでしか買えないもの」に注目してくださっているのかなと。

最後に、今後、取り組んでいきたいことを教えてください。

大谷:次年度はターゲットを絞って、また新たなお客様も獲得していけたら、と考えています。とくに小さいお子さんにおせんべいを食べてもらえるような仕掛けをしたいですね。また、ネットショップにお客様のレビューを入れたいです。レビュー投稿時のガイドラインをきちんと整えた後に実装できたらと思っています。