大人向け選書100冊、ガチすぎて大反響 米子市立図書館の碩学司書「もっと攻めたかった」
ヘーゲル、ニーチェ、フーコー......鳥取県の米子市立図書館による推薦図書リスト「大人のための100選」には、こんな哲学者の名前が冒頭からズラリと並ぶ。
このリストがツイッター上で紹介されると、「面白そう!」「攻めてるなぁ」と本好きの間で反響を呼んでいる。
紹介したツイートに、1万3000件以上も「いいね」
僕の叔父さんは米子市立図書館で働いているのですが、この度図書館のホームページに「おとなのための100選」という本の紹介ページを作ったそうです。その内容がとてもハードコアで面白いので、もしよかったら是非見てみてください。ぼくは一冊しか読んだことありませんでした。https://t.co/SoVEBj3Rj4
— oono yuuki (@oonoyuuki) 2017年12月1日
ツイートしたのは、ロックバンドの音楽活動をしている「oono yuuki」さんだ。「oono」さんは2017年12月2日、米子市立図書館で働いている叔父が本の紹介ページを作ったとして、100冊のリストが掲げられたページをリンクした。
それを見ると、ドイツの哲学者ヘーゲルの古典的名著「精神現象学」から始まり、哲学、批評、民俗学、文化人類学、現代思想、内外の小説、音楽、漫画批評など様々なジャンルの大人向け図書が並んでいる。
有名なところを挙げれば、ガルシア・マルケス「百年の孤独」、中上健次「枯木灘」、ナボコフ「ロリータ」、ル・グウィン「闇の左手」、ハンナ・アーレント「人間の条件」など。米子市出身者として、宇沢弘文「社会的共通資本」などもリストに入っている。各図書には、それぞれ簡潔な書評も付けられている
。「大人のための100選」は、11月1日から1階カウンター近くに特設コーナーが設けられ、18年1月末まで図書が展示されている。
「大人のための100選」特設コーナー(写真は、米子市立図書館提供)
「oono」さんのツイートには、12月5日夕現在で1万3000件以上も「いいね」が付いており、100冊の選書内容に絶賛の声が続々寄せられている。
米子市図書館、攻めてるなぁ。
— Drossel (@drosselgasse) 2017年12月2日
読み手を選ぶチョイス。これ読破してるなんてすごい(遠い目)。 https://t.co/9aZCQ55oVq
良い読書案内、ありがとうございます!全部は無理でもこのうち20冊くらいは読めたらいいな
— よもぎ (@yomoginohara) 2017年12月3日
(ちなみに私は読んだことあるのは一冊だけだった...) https://t.co/Ll1gxwMtev
私も中で9冊しか読んだことないけど面白そう!
— 和井八凪 (@kazuigatari) 2017年12月3日
体力いる本ばかりだけど(笑) https://t.co/S9szkAWc9X
「読まれないと思っていたので、とても驚いている」
もっとも、哲学はもっと優しい新書などにしてほしい、SFで有名な作家を入れて、理系の本が少なすぎる、といった意見もあった。
「oono」さんの叔父であり、100冊のリストを作った司書で米子市立図書館主査の大野秀(しゅう)さん(60)は12月5日、「読まれないと思っていましたので、とても驚いています」とJタウンネットの取材に話した。
特設コーナーを作ってから、常時25〜30冊もが貸し出されている状態だといい、ツイートの影響で、5日昼過ぎは32冊にまで貸し出しが増えた。中でも、圧倒的に人気があるのがハヤカワ文庫のSF「闇の左手」で、返却されるとすぐに次の人に貸し出されるほどだそうだ。
図書にはナンバーが振ってあるが、あくまでランダムに並べたという。ただ、上野千鶴子さんのジェンダー本の次に、フェミニズムを意識したという「闇の左手」を挙げるなど、独自のしりとりゲームを採り入れたとしている。
リストの100冊はすべて読破しており、高校時代に20回以上も読んだ愛読書もその中にある。当初は、120〜30冊のリストを作ったが、すでに絶版となっていてやむなくあきらめたものも多いという。「『攻めてる』という言葉もいただきましたが、かなり譲歩しました。本当は、もっと攻めたかったですね」と大野さんは残念がる。
1980年代初めに一世を風靡したニューアカデミズムの影響があるのではと指摘されたことについては、「やはり臭いで分かるんですかね。確かに、ぴたりだと思います」と話している。