テレビでも多数CMが放送されるなど著名なフリマアプリ「メルカリ」。これを運営する株式会社メルカリが明治安田生命J1リーグに所属する鹿島アントラーズのクラブオフィシャルスポンサーとなってからおよそ5か月が経過した。
そして9月9日、冠試合となる「mercari day」をカシマスタジアムでのホームゲーム、大宮アルディージャ戦にて実施したのをご存知だろうか。

このほどカシマスタジアムには高密度Wi-Fiが導入されたが、これに絡むのがこの施策。そして、mercariと鹿島が提案するのは“インターネットとスポーツ観戦の新しい楽しみ方”である。

4月8日に行われたセレッソ大阪との一戦でも両者は様々なイベントを用意し、多くのサポーターに「メルカリ」を知ってもらうだけでなく、そのアクティビティに興味を持ってもらうことに成功した。

 

※参考記事:鹿島アントラーズ×メルカリが生む、スポーツ界のデジタルイノベーションとは?

 

しかし、冠試合は今回が初めて。そこに向けてメルカリがどのような準備をしてきたのだろうか。

 

リアルとネットの境は無くなってくる

「4月7日にクラブオフィシャルスポンサー契約を締結して、私たちメルカリがスポーツに協賛することに意外性があったのか、かなり反響は大きかったです。メルカリはIT企業なのですが、当日の施策は実際に印刷した写真がプレゼントされるPICSPOTなど“リアル”を意識している点が良い意味で響いたみたいです。

今後、リアルとネットの境目はどんどんなくなると思っていますし、融合してそれぞれの良さがあるとも思っています。私たちもIT企業だからといってオンラインが全て、という訳ではありません。リアルでの魅力を使えるところはどんどん活用していきたいです」こう語るのはメルカリで広報を務める片山悠氏だ。

4月8日のイベントではメルカリのサングラスやTシャツなどのノベルティグッズやPICSPOTでの写真プレゼントなどを行い、“形”としてサポーターの手に残るものが多かった。そして、鹿島のグッズや選手が着用したユニフォームなどが出品される“リアルタイム出品”も好評だ。

 

VRを通じて、選手の目線を…

 

「今回は“初”冠試合ということで何かコンテンツを考えようということになりましたが、僕らは物を売っているわけではないので、例えばビールを安く提供したりはできません。

しかし、カシマスタジアムが高密度Wi-Fiを整備したこともあり、テクノロジーカンパニーとしてITとサッカーの融合で何か面白い見せ方ができればと考えました。そして、VRというアイディアにたどり着きました。試合前の選手の目線を見せることができれば、見る側も試合に向けてテンションが上がるかな、と。試合前の臨場感をより味わえる、スポーツが好きな人がもっと好きになるようなものを作っていきたいなと思ったんです。そういうものを魅せることで、より盛り上がりが生まれるんじゃないかな、と」
メルカリの小泉文明社長はこう話した。

今回、360°VR動画というアイディアを実行するにあたって、クラブオフィシャルスポンサー契約の際にも関係していた株式会社SkyBallが関わっている。創業当時から中村俊輔のFK動画などでVR×スポーツの可能性を探っていた同社のサポートは、施策の実施にあたって大きな力になったようだ。

 

参考記事:中村俊輔360°FK動画の仕掛け人。iemoから独立した熊谷祐二が語るスポーツ×VRの新たな時代

 

【▷次ページ】ファンが知りたい世界を見せる施策

 

メルカリ×鹿島アントラーズ、オリジナルVRキット

この日、大宮戦に訪れたサポーター20,000名に入場ゲートにてメルカリ×鹿島アントラーズのオリジナルVRキットがプレゼントされた。

VRキットを使うことで360°VR動画を見ることができたのだが、これはスタジアムWi-Fiである「ANTLERS Wi-Fi PORTAL」内で配信された。ここでは選手バスの中、ロッカールームの中、ウォーミングアップ中の映像が流され、普段は見ることができないレアな画がサポーターに届けられた。

「ファンは何が知りたいかというと、選手のこと。当然、試合前にどういうロッカールームに入っていて、どういうバスの中で…というのはわからない。それがVRを通して疑似体験ができることにとても価値があるのではないかと考えました。」(小泉社長)

試合中、ピッチ上での活躍がサポーターが認知することのできる選手の姿である。それ以外の行動や見る景色などはなかなか知ることが出来ない。ただ、このVR動画によって試合前の選手達が見ている景色を体感したことで、より彼らを近くに感じることができたのではないだろうか。

 

このオリジナルVRキットは組み立て式であり、同封されている説明書を読みながら作ることができた。
加えて、鹿島のオフィシャルサイト内において鈴木優磨選手、小田逸稀選手、久保田和音選手がVRキットについて動画で紹介をしており、久保田選手からはスタジアムの座席でも簡単に作れることが伝えられている。

また、VRキットの組み立てガイドを動画で紹介し、当日はコンコースに「VR動画視聴サポートブース&VRキット組み立てサポートブース」を設置。スマートフォンを持っていない人やVRキットの組み立て方がわからない人向けのサポート体制も整っていた。

 

鹿島のホームゲーム及びクラブ関連イベント開催時には「メルカリロード」と名付けられることになったJR鹿島サッカースタジアム駅からカシマスタジアムまでの道。ここの太陽光発電パネル下では2,000名にオリジナル缶バッチがプレゼントされた。缶バッチは白・黒・赤の3色だ。

 

小さい子供が喜ぶものも…

スタジアム内コンコースではポップコーンが中に入ったオリジナルボックスが1,000個用意され、小学生以下の子ども達にプレゼントされた。

「オリジナルボックスはメルカリのマークの箱を意識したものです。あの箱で何かできないかと考えたときに、子供たちにも喜んでもらえるポップコーンというアイディアがでました」(片山氏)

 


ブースではポップコーンを手にした子どもたちの笑顔が見られた。

 

mercari プレゼンツ Antlers Photo Project!

そして、4月の施策において好評だったPICSPOTと同じ仕様のフォトブースも設置された。特別デザインフレームを選んで写真撮影ができるここの名は“Antlers Photo Projectブース”。ここで撮影した写真を自身のTwitterやInstagramにハッシュタグをつけて投稿することで、投稿写真を無料でプリントアウトしてもらえるというものだ。プリントアウトした写真はmercari day限定のフォトフォルダにはさんでプレゼントされる。

 

 

また、プリントアウトされた写真において当たり画像が出た場合はメルカリロードで配布されていた特製缶バッチの全種類セットもしくはフォトフォルダ入り選手オフショットがプレゼントされる抽選企画もあった。

 

 

スタジアムのWi-Fi環境を利用した新たな取組みからリアルのプレゼント企画まで、スタジアムにおける“サッカーの試合観戦”以外の娯楽をメルカリは提供している。その中でスマホユーザーはもちろん、小学生以下の子ども向けの施策も印象的だ。

IT企業の認知度というのは特定の層に寄りがちである。ただ、幅広い世代においてその存在を知ってもらい、イメージを向上させた上で自社が開発しているプロダクトを使用してもらう導線を作るという意味でも、ポピュラーなスポーツという市場に投資をする意味はある。それをメルカリは提示していると言えるだろう。