日本よりキツい状況に。アルゼンチン、オランダがW杯予選で大ピンチ
W杯アジア最終予選B組、日本対オーストラリアの一戦が行なわれる8月31日は、国際Aマッチデー。W杯予選が世界の津々浦々で一斉に行なわれる。
8月31日、フランスに敗れるとあとがなくなるオランダ代表
日本にとって気になるのが、アジアA組の戦いだ。オーストラリア、そして9月5日に対戦するサウジアラビアに先着を許し、日本がB組で3位に沈めば、このA組の3位チームとプレーオフを争う。
アジアA組、B組の3位チームによるプレーオフは、第1戦が10月5日で、第2戦が10月10日だ。日本が当事者になった場合、ホーム戦は第2戦になる。そこで勝利したチームは、11月6日〜14日に行なわれる大陸間プレーオフに進出。今度は北中米カリブ海の4位チームと対戦する。
その北中米カリブ海予選の現在の順位は以下の通り。
1位メキシコ(勝ち点14)、2位コスタリカ(11)、3位アメリカ(8)、4位パナマ(7)、5位ホンジュラス(5)、6位トリニダード・トバゴ(3)。
残りは4試合。まだ流動的とはいえ、プレーオフに出てくるのは、アメリカかパナマだろう。国際的な実績で日本を上回るアメリカは、ご承知のようにオーストラリアをパワーアップさせたような手堅いチーム。対するパナマは育成年代を強化し、近年急速に力をつけた新興国だ。アジアの敵国よりレベルは若干高い。
プレーオフは、死の恐怖をともなう、いばらの道となる。
とはいえ例外もある。南米5位とオセアニア1位とで争われるプレーオフだ。この戦いで番狂わせが起きる可能性は低い。現在、南米5位のアルゼンチンが、ニュージーランド(オセアニア1位)に敗れる可能性だ。むしろ起こり得るのは、アルゼンチンが南米予選で現在6位のエクアドルに抜かれることだろう。残り4試合。エクアドルとアルゼンチンとの勝ち点差は2。エクアドルホームの試合も最終戦に控えている。
南米予選の順位は1位ブラジル(33=本大会出場決定済み)、2位コロンビア(24)、3位ウルグアイ(23)、4位チリ(23)、5位アルゼンチン(22)、6位エクアドル(20)、7位ペルー(18)、8位パラグアイ(18)、9位ボリビア(10)、10位ベネズエラ(6)。
アルゼンチンはこの苦境から抜け出そうと5月、エドガルド・バウサ監督を解任。後任に2016〜17シーズンのセビージャ監督であり、2012年〜16年にチリ代表監督を務めたホルヘ・サンパオリを招聘した。6月にメルボルンで行なわれたブラジル戦に勝利し幸先のよいスタートを飾ったが、これはあくまでも親善試合。大一番と言うべき本番は、8月31日に行なわれる対ウルグアイ(アウェー)戦だ。
アルゼンチンは、前回2014年ブラジルW杯決勝でドイツに延長の末に惜敗し、優勝を逃したが、準優勝は開催国ブラジル(ドイツ、オランダに大敗し4位)を嘲笑うかのような好結果と言えた。
一方で、チームの平均年齢は出場32か国中、最高齢の28.5歳(23人の登録メンバー)。4年後に不安を残したことも事実だった。
代表チームにはよい循環が不可欠であることを、いまのアルゼンチンは物語っている。どこか勢いに欠けるチームを、名将サンパオリがどう立て直すのか。現在、予選4位でアルゼンチンのひとつ上を行くチリは、サンパオリが手塩にかけて育て上げたといっても過言ではない好チームだ。今度はそのチリを蹴落として這い上がることを義務づけられたサンパオリ。この2カ国のつば競り合いは興味深い。
アルゼンチン苦戦の原因は、南米勢のレベルが上昇していることとも関係する。つい10年ほど前まで、ブラジル、アルゼンチン以外の南米勢は、W杯本大会で重要な立場にはなかった。ウルグアイ、コロンビア、チリにベスト8以上を期待することはできなかった。欧州の舞台、とりわけチャンピオンズリーグ(CL)を賑わすような選手も少なかった。
時代は変わった。W杯ベスト8はもちろん、ベスト16を巡る争いもいっそう激化。アジアのチームは、そこに食い込む姿を想像することが難しくなっている。
一方、欧州予選は13枠を巡る争いだ。A組からI組まで全9組の1位チームがまず通過。9ある2位チームのうち成績上位の8チームでプレーオフを行い、その勝者4チームにも出場権が与えられる。
欧州の場合、W杯とW杯の中間年にユーロがあるので、物差しは4年単位と2年単位のものになる。4年単位、つまり2014年W杯と比較したとき、目にとまるのが、現在A組3位のオランダだ。前回W杯は3位。グループリーグでスペイン、3位決定戦でブラジルにそれぞれ大勝。強国らしさを見せつけたが、アリエン・ロッベン、ロビン・ファンペルシー、ディルク・カイト、ウェズレイ・スナイデルなど、攻撃的なポジションはベテラン選手で占められていた。
そのメンバーは準優勝に輝いた前々回2010年南アフリカW杯も同様だった。同じような顔ぶれの攻撃陣で2大会続けて戦ってしまったツケがオランダには、いま現れている。
オランダは悲哀をユーロ2016予選ですでに味わっていた。グループ4位。惜しかったわけではない。まさに屈辱的な敗退だった。
現在の状況は、その時に比べればマシだ。逆転の可能性はまだ残されている。
欧州予選A組の順位は、1位スウェーデン(13)、2位フランス(13)、3位オランダ(10)、4位ブルガリア(9)、5位ベラルーシ(5)、6位ルクセンブルク(1)。
次戦はフランスとのアウェー戦(8月31日)。ここで敗れると、オランダ出場の目は激減する。ユーロとW杯と立て続けに本大会出場を逃すことになれば、オランダサッカーの看板は大きく色褪せる。
もちろん、ユーロ2016準優勝国のフランスにとっても一流国の威厳を保つ上で、これは負けられない試合になる。同日、欧州で行なわれる数ある試合の中でも、このフランス対オランダは一番の注目カードになる。
ベスト4に輝いたユーロ2016から経つことわずか1年強。ウェールズには暗雲が立ちこめている。現在の成績はD組3位。初戦のモルドバ戦に4-0で勝利したものの、その後は5試合連続引き分け。セルビア(12)、アイルランド(12)に、勝ち点4差をつけられ、現在3位に甘んじている。1958年以来となるW杯本大会行きは難しくなりつつある。
それらの国と比べて、まずまずの戦いを見せているのが、ドイツ、スペイン、ポルトガル、ポーランド、イングランド、ベルギーなどだ。
ポーランド、ベルギーには、上位国の仲間入りを果たしたような風格がある。ドイツにも例によって安定感を感じる。ポルトガルもユーロ2016優勝の流れが途絶えていない。しかし、それ以上に目を引くのがスペインだ。
2014年W杯(グループリーグ敗退)に続くユーロ2016の不成績(ベスト16)で、その時代は終わりを告げたと見る向きもあるが、見限るのは早い気がする。これはフランスにも言えることだが、若手選手に好素材がひしめいていて、それが代表チームのレベルを下支えしているのだ。昨季のCL決勝ユベントス戦で、レアル・マドリードの4点目のゴールを決めたマルコ・アセンシオは、今シーズン一番の注目株と見る。
最後に、アフリカ最終予選についても触れておきたい。全20か国を4チームずつ5組に分け、その最上位国に本大会出場権が与えられるという最もシンプルな予選だ。全6試合中、現在2試合を消化した段階にある。注目はナイジェリアとカメルーンが同じ組で戦うB組。ナイジェリアが2戦2勝(勝ち点6)なのに対し、カメルーンは2戦2分け(勝ち点2)と大きく出遅れた。両者は9月1日、ナイジェリアホームで直接対決する。カメルーンには勝つしか道が残されていない。
今回の国際Aマッチデー。注目は日本戦だけではない。他に語ることは山のようにある。「世界」は大きく動きそうである。
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