東証が長期保有の株主に株主優待を優遇する施策を持ち出したことで、この流れが今後、活発化する可能性も。

優待の変更続出、東証も長期優遇。優待を廃止して増配の企業も

長期投資家に朗報。長く持つほど、株主優待を優遇

株主優待制度を新設・変更する企業が続出している。東証を運営する日本取引所グループが短期保有株主の優待減額と長期株主への増額を決めたことで、長期優遇策を導入する企業が一段と増えそうだ。

一方、少数だが優待制度を廃止して配当を充実させる企業もある。今後は優待内容の強化か増配重視かの二極化が予想される。

創業１２４年のツムラは、今年９月末の株主を対象に、初めて株主優待を実施する。対象は３年以上保有の株主だけで、自社製入浴剤を贈呈する。事業開始が17世紀にさかのぼる養命酒製造も株主優待を導入し、３年以上保有で贈呈品の額を２倍に設定した。

上場企業の間で話題になったのが、東証を傘下に持つ日本取引所グループ（ＪＰＸ）の優待制度の改定。３月下旬の権利確定日に買って翌朝に売る�牋賁覲�主〞と、長期間保有して企業を応援してくれる株主に明確な差をつけた。

ＪＰＸはこれまで、保有年数によらず一律３０００円分のクオカードを贈ってきたが、今年実施の優待からは１年未満で１０００円、１〜２年未満で２０００円と減額。２〜３年未満は３０００円と据え置き、３年以上では４０００円に増額した。優待費用の増大を防ぎながら、長期投資家を優遇する方針を示す手法として、増減を抱き合わせるＪＰＸ方式が広まりそうだ。

長期保有の節目は３年が多数派だが、ナガワは優待制度導入から４年目の今年５月、優待の拡充を発表し、特に２年以上保有の株主に手厚い優待を実施するよう制度を変更した。贈呈品は定番のクオカード。１００株保有で１年未満なら２０００円分だったのを１・５倍の３０００円分に増やす。２年以上保有なら４０００円分が８０００円分に倍増する。これによって優待利回りが一気に上昇することとなり、新制度が適用される来年３月末株主の権利確定日にかけて売りが減り、株価は上昇しやすくなりそうだ。

株主優待を廃止し、配当での還元を目指すメガバンク最大手

一方、優待を廃止する企業もある。市場に衝撃を与えたのは三菱ＵＦＪフィナンシャル・グループ。昨年９月末の株主向けを最後に優待の廃止を発表したが、一方で「利益成長を通じた１株当たり配当金の安定的、持続的な増加を目指す」という上場企業としての基本方針を再確認した。

優待制度は個人投資家へのサービスで、機関投資家や海外ファンドは対象外。このため、株主平等の観点から批判的な意見も根強く、企業側の優待のコストも決して軽くはない。メガバンク最大手が株価上昇と増配で株主に報いる正攻法を選択したことで、ほかの企業による優待廃止も予想される。

今年の成長戦略の隠れた目玉は健康予防関連

ビッグデータを活用した医療関連銘柄を逆張りで狙う

政府が今年の成長戦略「日本再興戦略」の概要を発表した。ＡＩ（人工知能）やビッグデータを活用して、よりよい社会を構築する「ソサエティー５・０」を目指すとしている。

ソサエティー５・０とは、ドイツが国を挙げて進める政策「インダストリー４・０」や、米国の「先進製造パートナーシップ」のように、日本政府が作った造語だ。ＩｏＴ（モノのインターネット）をはじめとしたビッグデータを使い、革新的な新しいサービスやモノを生み出し、超スマートな社会を実現するという。

フィスコの田代昌之さんがそんな中で注目するのは、ビッグデータを活用した健康予防の分野だ。「働き方改革やＡＩ（人工知能）などはすでに関連銘柄として買われているものが多く、その点、健康予防を目的とした成長戦略はまだ目新しく、これから関連銘柄が買われていくでしょう」

成長戦略が発表されるのは今回で５度目となる。最初の２０１３年や２０１４年のときは大いに注目され、関連銘柄が物色の対象となった。しかし、ここ数年は大きな成長の原動力となる政策に乏しく、期待外れに終わることが多かった。

「成長戦略自体の注目度が落ちてきていることは確かなので、今年はそろそろ逆張りで狙ってもいいかもしれません」と田代氏。下記が注目の銘柄群だが、一番期待したいのはメディカル・データ・ビジョンだという。

「医療機関や製薬会社向けにビッグデータを活用したネットワークサービスを提供している会社です。年に１回のペースで株式分割をしており、今後も買い資金は集まりそうです。昨年にはクオカードがもらえる株主優待も開始しました」