社長の夢から生まれた1/4サイズのマイコン名機「PasocomMini MZ-80C」 開発秘話と今後をハル研究所三津原社長に聞いた

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「PasocomMini MZ-80C」の予約販売がBEEPのWEBサイトと店頭で開始された。
「PasocomMini MZ-80C」は、往年のマイコン名機シャープ「MZ-80C」を手の平に乗るサイズで復刻した製品だ。
価格は1万9,800円(税別)。10月中旬に発売予定。

MZ-80Cは、1979年にシャープから発売されたパソコン。
自分専用のコンピューターということから、当時はマイコンとも呼ばれていた。
シャープのMZ-80Cは、NECのPC-8001、富士通のFM-7とともにマイコンブーム時代を創った名機でもある。

「PasocomMini MZ-80C」の開発秘話を、ハル研究所三津原社長に直撃取材することができたので、製品情報と合わせて、お届けしよう。

■「MZ-80C」を忠実に再現
MZ-80Cは、未来技術遺産に登録された MZ-80K の後継機にあたる。
当時、シャープのMZシリーズが画期的だったのは、「クリーンコンピュータ」というアーキテクチャだ。

NECや富士通に代表される他社のマイコンは、電源を入れるとすぐに使えたが、OS(主にBASIC)は変更できない仕様だった。

一方、MZシリーズは、OSや言語を自由に選択することができ、RAM容量も可能な限り最大化することも可能という仕様であった。
OSの入れ替えも可能な現在のパソコンに近く、当時としは画期的なアーキテクチャだった。

「PasocomMini MZ-80C」は、そんなMZ-80Cを形状はそのままに、サイズを1/4の「手のひらサイズ」で復刻した製品である。


「PasocomMini MZ-80C」が驚くべき製品なのは、MZ-80Cの再現性だ。

MZ-80Cの形状だけでなく、本体の開閉も可能であり、カセットテープまで着脱することができる。
もちろんカセットとしては使えないが、精巧なミニチュアとしても十分に楽しめるように作られている。



使える言語は「SmileBASIC」という最新のBASIC言語だ。
BASICと聞くと、機能的な面でチープ(貧弱)に思われる方がいるかもしれないが、SmileBASICはHD表示が可能であり、フルカラー表示もサポートされており、他言語と比べても見劣りしない高度な機能を備えている。

エミュレートモードに切り替えれば、当時の機械語プログラムが動かせるようになるのも注目だ。
当時マイコン少年だった人なら、雑誌を引っ張り出してダンプリストを入力したり、BASICでプログラムを組んだりすることもできる。

なお、本製品には、当時人気だった3本のゲームソフトも同梱されており、開封後、すぐに懐かしいゲームで遊ぶことができ。
これも、当時を知る世代に嬉しく、当時を知らない世代には、新鮮な体験となるだろう。


■私個人が欲しかった - ハル研究所三津原社長
今回の「PasocomMini MZ-80C」は、どのような経緯で開発されたのだろうか。

株式会社ハル研究所 代表取締役社長 兼 COO 三津原 敏 氏に、お会いする機会を得たので、開発秘話から今後の展開までを直接うかがった。

三津原社長が初めて触ったパソコンは以外にもMZ-80Cではなく、PC-8001だったという。
当時学生だった同氏は、ハンドアセンブルなど楽しむマイコン少年だった。

今回の「PasocomMini MZ-80C」は、同社としては25周年ぶりに発売するハードウェアだ。
開発のキッカケについて、三津原社長は、
「私個人が、こういうパソコンが欲しいと思ったことが動機です。」
と、三津原社長、自らの提案だそうだ。
三津原社長の熱い想いが、古くて新しいハードウェアを作ってしまったというわけだ。

さて、開発での苦労は、どんなものがあったのだろう。
予想に反して、ハードウェアやソフトウェアを作ることはさほど難しくはなかったという。
もっとも難しかったのが、各メーカーに対するアプローチだという。

実は、当時の製品を知る人は、既にメーカーの部署に在籍しておらず、誰に聞いて良いのかさえもわからなかったからだ。さらに、当時の図面も消失して入手できない状況だったため、すべて自前で作成し直す必要があったのだ。

「PasocomMini MZ-80C」の開発は、まずレトロPC・ゲームを扱っている秋葉原のショップ「BEEP」経由で、当時の「MZ-80C」の実機を集めることから始まった。
そして集めた「MZ-80C」を、分解し、本体の計測、調査から始めたという。


株式会社ハル研究所 代表取締役社長 兼 COO 三津原 敏 氏

ここで1つ疑問が湧いた。本プロジェクトが、なぜ、MZ-80Kではなく、MZ-80Cなのかだ。

その理由を三津原社長は、
「赤が映えると思って、初代よりはCかなと思って、Cにしました。」
と、ここでも三津原社長の想い全開で決定したそうだ。

さらに、1/4サイズにした理由も、ちょうど手にのる大きさにしたかったからだという。
1/4サイズなので、搭載されているキーボードは実際には押せないが、精密に作られているおり、オリジナルを彷彿とさせる。


今後の展開については、
「PasocomMini MZ-80C」向ソフトのリリース予定は今のところないが、今回の発表を受け、いろいろな会社が動いている状況なので、何かしらの連携は取っていくとしている。

シャープのMZ-80C用の市販ゲームは、当時、カセットテープで提供されていた。
こうした昔のカセットテープが、「PasocomMini MZ-80C」でも使えるか否かは、気になるところ。

三津原社長によると、GPIOが繋がるので、頑張ったらカセットテープを使えるかもしれないとのことだが、現状では動作保証はされておらず、利用できるかは不明だ。
しかし、仮にカセットテープが使えれば、当時の市販ゲームをメモリーに読み込むことで、おそらく使えるとのこと。

ちなみに「PasocomMini MZ-80C」では、ゲームなどのプログラムはmicroSDに保存できるようになっている。


モニター部分に液晶パネルを組み込まなかったのは、「組み込んでも、小さ過ぎて見えない」というのが理由だ。
しかし、「PasocomMini MZ-80C」を欲しがる人で、電子工作にも強い人なら、自力で液晶パネルを組み込んでしまう人も出てくるだろう。

三津原社長は「(そんな自作派)ユーザーの楽しみとして残すことにしました。」と語ってくれた。

さて、「PasocomMini MZ-80C」以後の展開だが、シリーズ化も視野にあるという。
現時点では、PC-8001やFM-7以外に、X1やX68Kなど、昔人気だった機種が候補にあがっている。
「夢だけは、すごく頭の中で広がっていますが、現実的にどこまで行けるか、まだまだ未知数だと思っています。これから検討です。MZ-80Cが流れにのったら、シリーズ化していきたいです。」
と、
三津原社長の野望は、「PasocomMini MZ-80C」だけで止まる気はないようだ。



「PasocomMini MZ-80C」の売れ行き次第では、新たなマイコンが復刻され、発売される可能性もある。
「PC-8001を発売したときには、当時、ハル研究所で出していたPCGも付けます。」
と、三津原社長は、やる気満々だ。

友達の家でPC-8001をいじっていた筆者としては、是非とも出して欲しいところだ。



ITライフハック 関口哲司