「HUNTER×HUNTER」27巻。蟻の王の政策とデスティニープランと新世界を比較してみた
冨樫義博の『HUNTER×HUNTER』が休載されてから26週目。今回は単行本27巻を振り返りながら、蟻の王の政策について考えていく。
ゴンVSネフェルピトーは変わらずに停戦状態(冷戦に等しい)。シャウアプフVSモラウは、プフがモラウの武器を奪って逃走。ユピーはナックル、キルア、モラウと対戦相手が増えたり逃げたり。ネテロは蟻の王と戦おうとするのだが、王は交戦の意志ゼロ。これからのことについて話し合おうと持ち掛けてくる。
余が壊してやる そして与えよう 平等とはいえぬまでも 理不尽な差のない世界を!!
余は何のために“力”を使うかを学習した 弱く…しかし生かすべき者を守るためだ
当初は人間を虫けら同然、せいぜい食糧程度としか考えていなかった王。コムギとの軍儀を重ねるにつれて、武力がなくとも、周囲を感嘆させる素晴らしい才能を持った人間がいることを知り、その価値を学びとる。
これからは人間の居住区を設け、理不尽な差のない世界を作っていくとネテロに語っていた。
HUNTER×HUNTERの世界以外にも、全人類の上に立って、人類をよりよい方向に導こうとするキャラは結構出てくる。世界征服という言葉はイメージが悪いが、近年のアニメ・漫画ではマニフェストの提唱者は自分なりの正義を持っている。その一例を2つ紹介したい。
コーディネイター(遺伝子調整を受けた、普通の人よりもすごい人たち)であるギルバート・デュランダルが提唱した計画。遺伝子解析により、人それぞれが持つ先天的な適性と能力を調査し、その結果をもとに最適な職業や役割に就かせて、より効率的な社会運営を目指すという計画。その結果として個人間の諍い、しいては国家間の争い事が無くなるという狙いもある。
もしも、現実化した場合、ニートやフリーターが減り、みんなが仕事を楽しくできる世の中になるかもしれない。しかし、先天的適性や能力を「どうしても働きたくない」という後天的な気持ちが上回った場合、どうなるのか。前作主人公・キラ側の見解によると、言うことを聞かない連中は淘汰したり、洗脳されたりといった未来が待っているんじゃないかと推測されている。となるとデスティニープランが採択されたからといって、明るい将来が保証されているわけでもない。
結局、前作・主人公一味が
名前を書くだけで人を殺すことができるデスノートをたまたま学校の校庭で拾った夜神月。
犯罪者をノートで裁くことによって、善人だけが生きることを許された世の中を作り、新世界の神になろうと考え始める。
マニフェストだけを見るなら、崇高な正義のように思えるのだが、FBI捜査官のレイ・ペンバーや、大学の同級生・高田清美、死神のレムまで殺したりと、自らに仇なすものは問答無用に消去している。
最後はLの後継者・ニアに完全な証拠を突きつけられて開き直るも、
「いえ、あなたはただの人殺しです。」
「神になろうなどと勘違いしているクレイジーな大量殺人犯。ただそれだけの何者でもありません」
と一蹴されて死亡。
彼の死後、世の中は再び、犯罪の多い日常に戻っていった。
デスティニープランや新世界と比べてみると、蟻の王が考えた政策は、死人が多くなる。
蟻の王は生かすべきものを守るとは言っているものの、「生かすべきもの」のラインがどこまでなのかは微妙なところ。この時点で、王が惚れこんでいるのはコムギの才能とネテロの鍛錬のみ。才能が見つからずに、普通に暮らしている学生やサラリーマンも淘汰の対象となるかもしれない。そうなると人口は激減し、築き上げてきた文明が後退してしまう!
デュランダルや夜神月と違ってここまで過激な政策がとれるのは、人間の積み上げてきた歴史を知らなさ過ぎたからなんじゃないか。
昔は、“科学”も“自由”も“人権”も“平等”もみーんな“世の中の平和をみだす悪”じゃったんじゃよ。パワプロクンポケット7の黒野博士がこんなことを言っていた。
人間の悪意、科学。積み上げられてきた文明の恐ろしさを、蟻の王はこのあと身をもって知ることになる。
(山川悠)
参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる
27巻はこんな内容の話
ゴンVSネフェルピトーは変わらずに停戦状態(冷戦に等しい)。シャウアプフVSモラウは、プフがモラウの武器を奪って逃走。ユピーはナックル、キルア、モラウと対戦相手が増えたり逃げたり。ネテロは蟻の王と戦おうとするのだが、王は交戦の意志ゼロ。これからのことについて話し合おうと持ち掛けてくる。
人間を認め、これから管理していくと宣言する蟻の王
余が壊してやる そして与えよう 平等とはいえぬまでも 理不尽な差のない世界を!!
余は何のために“力”を使うかを学習した 弱く…しかし生かすべき者を守るためだ
当初は人間を虫けら同然、せいぜい食糧程度としか考えていなかった王。コムギとの軍儀を重ねるにつれて、武力がなくとも、周囲を感嘆させる素晴らしい才能を持った人間がいることを知り、その価値を学びとる。
これからは人間の居住区を設け、理不尽な差のない世界を作っていくとネテロに語っていた。
HUNTER×HUNTERの世界以外にも、全人類の上に立って、人類をよりよい方向に導こうとするキャラは結構出てくる。世界征服という言葉はイメージが悪いが、近年のアニメ・漫画ではマニフェストの提唱者は自分なりの正義を持っている。その一例を2つ紹介したい。
ガンダムSEEDデスティニーのデュランダルが提唱したデスティニープラン
コーディネイター(遺伝子調整を受けた、普通の人よりもすごい人たち)であるギルバート・デュランダルが提唱した計画。遺伝子解析により、人それぞれが持つ先天的な適性と能力を調査し、その結果をもとに最適な職業や役割に就かせて、より効率的な社会運営を目指すという計画。その結果として個人間の諍い、しいては国家間の争い事が無くなるという狙いもある。
もしも、現実化した場合、ニートやフリーターが減り、みんなが仕事を楽しくできる世の中になるかもしれない。しかし、先天的適性や能力を「どうしても働きたくない」という後天的な気持ちが上回った場合、どうなるのか。前作主人公・キラ側の見解によると、言うことを聞かない連中は淘汰したり、洗脳されたりといった未来が待っているんじゃないかと推測されている。となるとデスティニープランが採択されたからといって、明るい将来が保証されているわけでもない。
結局、前作・主人公一味が
「明日が欲しい!」
とか言って、反逆を繰り返したため、計画は頓挫。『ガンダム SEED DESTINY』は前主人公サイドと現主人公サイドの対立が描かれていたのだが、現主人公側が敗北する形で幕を閉じた。デスノートで新世界の神になろうとした夜神月
名前を書くだけで人を殺すことができるデスノートをたまたま学校の校庭で拾った夜神月。
犯罪者をノートで裁くことによって、善人だけが生きることを許された世の中を作り、新世界の神になろうと考え始める。
マニフェストだけを見るなら、崇高な正義のように思えるのだが、FBI捜査官のレイ・ペンバーや、大学の同級生・高田清美、死神のレムまで殺したりと、自らに仇なすものは問答無用に消去している。
最後はLの後継者・ニアに完全な証拠を突きつけられて開き直るも、
「いえ、あなたはただの人殺しです。」
「神になろうなどと勘違いしているクレイジーな大量殺人犯。ただそれだけの何者でもありません」
と一蹴されて死亡。
彼の死後、世の中は再び、犯罪の多い日常に戻っていった。
3つの政策を表にしてみる
デスティニープランや新世界と比べてみると、蟻の王が考えた政策は、死人が多くなる。
蟻の王は生かすべきものを守るとは言っているものの、「生かすべきもの」のラインがどこまでなのかは微妙なところ。この時点で、王が惚れこんでいるのはコムギの才能とネテロの鍛錬のみ。才能が見つからずに、普通に暮らしている学生やサラリーマンも淘汰の対象となるかもしれない。そうなると人口は激減し、築き上げてきた文明が後退してしまう!
デュランダルや夜神月と違ってここまで過激な政策がとれるのは、人間の積み上げてきた歴史を知らなさ過ぎたからなんじゃないか。
昔は、“科学”も“自由”も“人権”も“平等”もみーんな“世の中の平和をみだす悪”じゃったんじゃよ。パワプロクンポケット7の黒野博士がこんなことを言っていた。
人間の悪意、科学。積み上げられてきた文明の恐ろしさを、蟻の王はこのあと身をもって知ることになる。
(山川悠)
参考→『HUNTER×HUNTER』再開を待ちながら1巻から読んでみる