スイスと日本の学者らが教育と社会の持続性をテーマに21世紀の展望を探る「東京コロキアム2005」(スイス連邦工科大学チューリッヒ校、法政大学、東京大学など主催)が9日、東京都文京区の東京大学本郷キャンパスで始まった。2001年にノーベル化学賞を受賞した理化学研究所の野依良治理事長が基調講演し、「文化を尊ぶ文明を創って行かなければならない」と地域、家庭教育の重要性を訴えた。

 同コロキアムは、愛・地球博(愛知万博)へのスイス出展の一環として開く学術イベント。11日まで3日間あり、10日は法政大学市ヶ谷キャンパス、11日は国際連合大学で開催する。

 野依理事長は、まず「21世紀は『知識基盤社会』。科学知識がなければ持続社会はあり得ない」と強調し、「経済効果はなくとも基礎科学は大事」と述べた。

 また、「現代はアインシュタインらのような『天才』が育たない」と述べ、仮想世界での学習が多い現代の社会環境が阻んでいると分析。「習俗、信仰などの文化を尊ぶ文明を創らなければならない」と、地域、家庭による教育の役割の大きさを説いた。

 環境の持続性について、現代社会が大量の廃棄物を排出している現状を踏まえ、「廃棄物を最小限に抑えるグリーン・ケミストリーが化学産業のカギを握っている」と指摘。そして、安ければいい、という風潮にクギを差し、「環境保護の対価は消費者も払うべきだ」と述べた。

 この日はほかに、1991年にノーベル化学賞を受賞したスイス連邦工科大学のリヒャルト・エルンスト氏も講演を行った。【了】