リオ五輪で日本はメダルラッシュでした。様々な競技の日本選手たちが誇らしげにメダルを首から提げているのを見てうれしくなると同時に、身の引き締まる思いでした。

日本選手の多くは、アマチュアとしてプレーしています。カヌーのスラローム男子カナディアンシングルで、日本選手初めてのメダルを獲得した羽根田卓也選手は、日本に練習環境がないとスロバキアの大学に行き、そこで技を磨きました。

そういう厳しい環境に身を置いてトレーニングしている選手ががんばったのです。だったらサッカーの五輪チームはもっとやらなければいけなかった。今回はプロとしての逞しさを見せられませんでした。日本サッカー界は、まだまだみんなで頑張らなければいけないということが明らかになった大会だったと思います。たぶん選手たちも自分たちの力不足を感じながら帰国したことでしょう。

そして五輪チームのメンバーもそんな悔しい思いを持ちながら先週末のJリーグでプレーしたことだと思います。

ですが、人間は弱いもので、すぐに忘れてしまうのです。五輪で体感した球際の厳しさ、激しさは常にJリーグで経験できるというものではありません。また、五輪代表チームでは誰もポジションを保証されていませんでした。ところが帰ってくると、自分の居場所と定位置があるのです。

「悔しい」思いをして帰ってきたけれど、自分のチームでプレーできて気付かないうちに「ホッ」とした選手がいたのではないでしょうか。せっかくスピード、判断、プレッシャー、ペースなど異次元を経験できたのに、そんな気持ちが出てくると、感覚は元に戻ってしまいます。

僕たちも五輪でその違いを実感し、帰ってくるとみんな「海外でプレーしたい」と熱望するようになりました。ただ、当時はほとんど海外でプレーする選手がいなかったことと、Jリーグを出て行こうとすることへの批判を受けたりもしました。

今は時代が違います。海外移籍は夢ではありません。五輪代表だった選手は、これからの試合をすべて、海外のプレーヤーと戦うときはどうだったか、相手がもっと厳しく向かってきたときにどうすればいいのか、という想定の下プレーしてほしいと思います。そして海外に移籍して自分を磨くという目標を実現するための、すべての試合のパフォーマンスにしてほしい。そうでなければ、負けて経験した意味はなくなります。今が五輪選手の分かれ道です。