高知vs川之江
3戦連続の先発となった高知・谷脇 瑞基(3年)
センバツ出場4校のうち、土佐(高知)・大会準優勝の高松商(香川)は代表決定戦で敗退。残る小豆島(香川)は初戦、明徳義塾(高知)も決勝戦には残れず。また、低気圧襲来による強風の影響もあり、本塁打数は3年ぶりの「0」。大会の「華」という部分では盛り上がりを欠いた今回の春季四国大会。ただし、決勝進出の高知(高知)・川之江(愛媛)にとっては、間違いなく夏への推進力を得た「よき大会」だったと言える。両校の収穫を分析していきたい。
敗れた川之江最大の収穫は「外野手の守備範囲には課題があるが、投手中心に守りの野球ができた」(友近 拓也監督)守備面。県大会優勝の立役者・エースの糸川 亮太(3年・投手・右投右打・170センチ72キロ・川之江ボーイズ出身)を「右ひじに違和感が出て5・6月に投げ込みができるように大事を取った」中にあっても3試合ノーエラーで乗り切った。
この日、指揮官は糸川に加え1回戦・準決勝と連投した左腕・橋本 光太(2年・投手・左投左打・172センチ61キロ・川之江ボーイズ出身)にも休養を指令。前日、7回にリリーフも1死も取れずマウンドを降りた松本 健太郎(2年・右投右打・172センチ66キロ・四国中央市立川之江北中出身)に先発マウンドを託した。松本健は7回137球6失点。10安打こそ浴びたものの、2回裏に一死一・二塁から「ストレートに張っていた」2番・大西 康太(3年・二塁手・右投左打・166センチ57キロ・三田リトルシニア<兵庫>出身)に狙い打たれた右翼線2点適時打含む5安打を浴び5点を失った2回裏を除けば、最速136キロのストレートとスライダーを丁寧にコーナー低めへ投げ分け、夏への希望が見える投球を見せた。
打線も初回に「二遊間がすぐベースから離れたのを見て、2球目で行けると思ってスタートした」2番・山尾 拓摩(2年・中堅手・168センチ58キロ・右投左打・南都ボーイズ<奈良>出身)の三盗を契機に4番・日野 智也(3年主将・右翼手・右投左打・172センチ70キロ・新居浜ボーイズ出身)、5番・曽我 飛夢(3年・左翼手・右投右打・175センチ70キロ・東加古川レッドアローズ<ヤングリーグ・兵庫>)が連続適時打。土壇場の9回表にも二死満塁から途中出場の8番・直野 和弘(3年・捕手・174センチ67キロ・右投右打・新居浜ボーイズ出身)が、三塁線を鋭く破る2点二塁打。「逆転された後にエンジンがかかるのが遅い」と友近監督はそれでもダメ出しの姿勢を崩さなかったが、今大会貫かれた粘り強さは決勝戦でも随所に見えた。
川之江先発・松本 健太郎(2年)
これに対し6年ぶり10回目の優勝。明徳義塾と並んでいた優勝回数を再び単独トップとした高知。ここも投手陣の奮闘が光った。
島田 達二監督が「谷脇は球威で押し込めるし、吉村はコーナーとスライダー・チェンジアップを投げ分けられるので公式戦で試したいと思っていた」谷脇 瑞基(3年・投手・右投右打・186センチ78キロ・土佐清水市立清水中出身)から吉村 大輝(3年・投手・右投右打・172センチ72キロ・高知中出身)につなぐリレーは最高の結果で成就した。特に谷脇はこの川之江戦で最も遅いもので84キロのスローカーブを披露。最速142キロのストレートとの球速差は実に「58キロ」。これも夏には大きな武器となりそうだ。
さらに「次」への一手も怠りない。打っては大会10打数5安打3得点1打点2盗塁と躍動するも、川之江戦最終回の先頭打者、記録こそ遊撃内野安打となったが、軽率なグラブさばきで2点を失う要因を招いた1番・十河 友暢(3年・遊撃手・右投右打・168センチ75キロ・高知中出身)に対しては眉をひそめたうえで、「6月12日(日)に智辯和歌山(和歌山)と対戦する高知県高野連特別招待野球では、新たなポジションを考えている」と島田監督は話す。もし、この策が成功すれば高知はさらなる力を蓄えることになろう。
今大会の準優勝により夏の愛媛大会第1シードが決定(以下、シード校は済美・新田・今治西の順)。ベスト4・高知国体優勝につないだ2002年以来14年ぶりの甲子園の最短距離に立った川之江。第3シード以上獲得が確定。残る県高校体育大会において1ポイント差で3位につける土佐を抑えつつ、明徳義塾を破って優勝すれば獲得できる第1シードの先、7年ぶりの夏甲子園をつかみにいく高知。混戦模様が色濃い夏の四国4県地方大会においても、春の四国大会で推進力を得た両校は愛媛・高知両県をけん引する存在となりつつ、それぞれの目標に向かって邁進していく。
(文=寺下 友徳)
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