神奈川を代表する好投手!藤平、北村、高田の春の投球を振り返る
神奈川県の高校球界は、例年、プロ注目投手が出てくる。2013年は松井 裕樹(桐光学園<インタビュー>)、2014年はプロ入りしなかったが佐藤 雄偉知(東海大相模)、2015年は小笠原 慎之介(関連記事)、吉田 凌(ともに東海大相模)、望月 惇志(横浜創学館)がプロ入りしたが、今年もドラフト候補として取り上げられる投手が多い。そんな好投手たちの春を振り返りたい。
成長した姿を見せた藤平 尚真、北村 朋也左から藤平 尚真(横浜)、北村 朋也(東海大相模)まず最も注目を浴びていたのが藤平 尚真(横浜インタビュー【前編】 【後編】)だった。最速152キロと高校生右腕トップレベルのスピードを誇る藤平は、その能力を今大会でも遺憾なく発揮。まず初戦の霧が丘戦で、直球のみで三者連続三振。さらに3回戦の相洋線では全く相手を寄せ付けず、5回1安打投球。さらに4回戦の弥栄戦ではリリーフとして1回無失点と、計7回無失点に抑えていた。そして迎えた準々決勝・東海大相模戦。
藤平は常時140キロ台の速球を披露したが、この試合、それ以上に光ったのはスライダーだった。打者の手元で鋭く曲がるスライダーを武器に東海大相模打線から三振を量産。7回3分の1を投げて9奪三振、そのうち8奪三振はスライダーだった。
昨秋、藤平はスライダーを磨いていると語っていたが、その取り組みが奏功した形となった。しかし8回、同点2ランを浴びて4失点で降板。昨年の関東大会もそうだったが、何かと課題を残す選手でもある。だがこの4失点も今後への糧となるだろう。決勝の日大高戦では140キロ前半のストレートに、さらにフォークを織り交ぜ新たな一面を見せたが、終盤に制球を乱れるのが課題になった。力が拮抗した同士の戦いでも、終盤までペースが乱れない投球ができるかが重要となりそうだ。1つずつ課題を潰し、夏では攻略困難な剛腕へ成長を遂げることを期待したい。
そして藤平とともに注目されたのは北村 朋也。昨秋から常時140キロ中盤をたたき出すポテンシャルの高さが光っていたが、頼りになるボールはストレートしかなかった。それが狙われて秋は横浜にコールド負けを喫した。だがこの屈辱的な経験が北村を変えた。スライダーの精度が格段に増して、さらにカーブの精度も高まり、ピッチングの幅が広がった。この春の準々決勝・横浜戦では6回表の途中からリリーフで登板した北村は、5.1回を投げて被安打8、奪三振7、失点3と昨秋よりも間違いなく改善された内容だった。
最後はエース藤平に決勝打を打たれ、涙を流した北村。この悔しさが北村を大きくさせてくれるに違いない。夏までぜひ追いかけていきたい投手だ。
[page_break:最後の夏まで追いかけていきたいと思わせた高田 孝一の気迫溢れるピッチング]最後の夏まで追いかけていきたいと思わせた高田 孝一の気迫溢れるピッチング高田 孝一(平塚学園)最後に紹介するのは高田 孝一(平塚学園)。1年夏から公式戦登板している選手だ。球速表示以上を感じさせる140キロ前半のストレート、キレのある変化球、高い制球力、打者の弱点を突いた投球術。マックスのスピードは藤平、北村に劣るとはいえ、投手としての能力は負けていない。何より気迫がこもった投球は、ナインだけではなく、見ているものの気持ちも乗せてしまうような投手だ。不調だと聞いていたが、桐蔭学園戦(試合レポート)のピッチングはまるで素晴らしいものだった。
9回裏から登場した高田はほぼストレートで圧倒。球速は140キロを連発し、この春140キロを出した高校生の中でも最も迫力があった。背負い投げのようなオーバーハンドで投げ込んでくるため非常に角度があって、桐蔭学園の各打者は打ち返すことができず、サヨナラ打を浴びるまでは無失点の投球を披露した。
割合は少なかったが、スライダー、カーブもストレートと同じ腕の振りで投げ込んでくるため、見分けがつきづらい。またこの試合では投げていなかったが、高田は落差抜群のフォークもある。
桐蔭学園戦の高田は自分の思い通りのピッチングができていて、かなり気分良く投げることができていたと感じた。最後はタイブレークの末、サヨナラ打を浴びて負けてしまったが、長いトンネルから脱出できたような印象を受けた。高田の総合力、気持ちの強さなどは、近年、神奈川県から指名された右投手と比べても劣っていないと思う。周囲に高卒プロでも行けると思わせるには夏で成長した姿を見せることではないだろうか。
敗れた桐蔭学園戦では復調の兆しを見せただけでも、追いかけて見てみたい投手の1人となった。3人とも神奈川の高校野球ファンの心を動かす投球を見せてくれた。ぜひ夏では高いステージにつながるピッチングを披露してほしい。
(文=河嶋 宗一)
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