享栄vs中京大中京

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享栄が何とか逃げ切って10年ぶりの春季東海大会進出

好投を見せる二宮(享栄)選手

 強い風が吹いている岡崎市民球場での試合となった。先発はともに背番号10で、享栄の二宮君はやや身体が立った感じだが、低めに球を集めると角度があって打ちにくそう。ベテランの柴垣旭延監督は、「春日丘との試合でも好投したし、この前の試合に大府に勝てたら、準決勝は二宮でいこうと決めていた」という期待の投手だ。

また、中京大中京はこのところ成長が著しいので、試合を任せてみたいと高橋源一郎監督が評価していた初祖(ういそ)君。ゆったりとしたフォームからコーナーを突いていくのが持ち味だが初回、ちょっと狙い過ぎて先頭に四球を与え、この走者が失策で帰り、享栄が先制する。

 その後やや膠着状態が続いたが5回、享栄は先頭の7番飯田君が右中間二塁打で出ると、前田君のバントは、一塁へ大悪送球となり、飯田君は一気にホームインし、前田君自身も三塁へ進んだ。二宮君は死球で一、三塁となり、一死後早川君の遊撃内野安打でさらに1点が入った。 3点を追う形になった中京大中京の反撃は7回からだった。

 7回は先頭の7番諸橋君が失策で出ると、暴投で進み、代打鳥居君の内野安打で一三塁。ここで、1番伊藤康祐君が右犠飛を放って1点を返す。7回に打順が回ってきて代打の関係で、享栄は8回から、右サイド気味のエースナンバーをつけた成田君を送り出したが、いきなり内藤君に死球を与えてしまう。さらに失策も絡んで一死満塁となったところで、諸橋君が逆風の中、大きな左犠飛を放って、これで1点差。「相手は中京の強打線ですから、正直、逆転されるかなとも思っていました」という柴垣監督だったが、そのあとは何とか成田君が締めた。9回も、二死から2番杉井君が風で押し戻される、左前二塁打を放ったが、成田君が踏ん張って、享栄は10年ぶりの春季東海大会出場となった。

杉井(中京大中京)選手

 柴垣監督は、「今のウチは、どういう大会でも勝って行かないといかん。選手たちも、上の大会でやれることは勉強になりますし、今日の勝ちは大きいですよ」と、喜んでいた。そして、7回まで1失点でこらえた二宮君に関しても、「よく投げてくれました。これで、夏へ向けては、少しは投手も回していけるかなという感じになりました。あの子には、入ってきた時から、3年の夏までには試合で投げられるようになっていきなさいと期待していたんですが、ようやくここまで来ました」と、二宮君の成長を評価していた。東海大会という上の部隊で戦うことで、チームとしても、また新たに成長していく期待もあるだろう。

 中京大中京としては、チャンスを作りながらも、あと一本が出ず、いくらかもどかしいというか、じれったい展開となってしまった。高橋監督は、「この大会は夏を見据えてということで言えば、収穫と課題と両方がありました。収穫としては、起用した選手がそれなりに結果を出してくれたことですが、課題としては今日のように振り回しに行って角度のある投手を打ちきれなかったことと、こうしてミスが出て負けてしまうということですね。野手と投手のリズムが悪くて、ミスが出てしまっています。これも課題でした。ここで一区切りつけて、これからは1年生もメンバーに入ってくるかもしれませんけれども、それぞれがもう一度競争していってくれればと思います」。中京大中京は、これから6月にかけては全体に負荷をかけていきながら、ハードな練習を重ねていく強化月間となる。そして、6月の3週目には東海大相模や日大三などと試合を重ねる、関東遠征を控えている。

 試合としては、随所に好プレーもあったが、ことごとく失策が得点に絡むという試合で、お互いに反省材料の多い試合だったとも言えよう。

 (文=手束 仁)

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