「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今日の漢字は「復活」「復帰」の「復」。今年は3月27日にイエス・キリストのよみがえりを祝う復活祭が行われました。日本でも、春の訪れを祝うイベントとして定着しつつあるようです。今回は「復」に込められた物語を紹介します。



「復」という漢字の左側に書かれた「ぎょうにんべん」は、道や道路に関する漢字に使われる部首。

象形文字では十字路の左側半分を示し、道を「行く」ことを意味します。

向かって右側の文字(复)は「フク」と呼ばれ、物の容量、嵩をはかる器具を逆さまにした形を描いています。

そこへぎょうにんべんを添えた「復」という字は、さかさまの道をふたたび行って、「もとへかえる」という意味を表すようになりました。

さらに「仕返しをする・繰り返す」といった意味ももつようになったのです。

人々を救う道を説いたイエス=キリストは、ローマ政府により十字架にかけられて亡くなります。

しかしキリストはその三日後に、弟子たちの前に姿を現すのです。

「復活祭」は、彼が再びかえってきた日を祝うもので、「春分のあとの最初の満月の次の日曜日」とされています。

この時期によく目にするのが、卵の殻に色をつけて飾ったイースター・エッグ。

キリストの復活を、固い殻を破っていのちを吹き返し、羽ばたく鳥の様子になぞらえたものです。

万物が目覚める春。

それは宗教や文化にかかわらず、彩り豊かな世界に生きるよろこびを連れてきます。

ではここで、もう一度「復」という字を感じてみてください。

復活祭、「イースター」という言葉は、ヨーロッパに伝わる、光と春の女神の名前が語源とされています。

日本の春をつかさどるのは、白くやわらかな霞をまとった女神「佐保姫」。

野山や里へ降り立つ彼女の合図で、生き生きとしたいのちの営みがふたたび始まります。

花のつぼみはほころび、木の芽は起きだし、猫や蛙は恋をする。

では、私たち人間も、あきらめかけていた夢をもう一度。

季節の移り変わりをすすめてゆく、大いなる自然の力。

その力に背中を押されるようにして、のびのびとした自分らしさを取り戻す春がやってきました。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解(第二版)』(白川静/平凡社)

『読んでわかる日本の歳時記 春』(小学館)

4月2日の放送では「新」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/