By Luisa Contreras

1970年代から1000人以上を対象にした大規模な認識能力の調査研究がメイン大学の心理学教授によって行われています。当初研究にはチョコレートなどの食物に関する要素は含まれていなかったのですが、研究途中から食べ物が認識能力に影響を与えるという仮説が立てられ、研究開始から40年が経過した2016年に、チョコレートの摂取が脳の認知機能などに良い影響を与えていることが判明しました。

The magical thing eating chocolate does to your brain - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2016/03/04/the-magical-thing-eating-chocolate-does-to-your-brain/

心理学者メリル・イライアス氏は人間の血圧と脳のパフォーマンスを観察する研究を行なっていました。その研究は数十年にわたって続けられ、最終的に糖尿病・肥満・喫煙などの心血管系危険因子を調査するメイン大学・シラキュース大学合同縦断研究(MSLS)という大規模な長期的研究に発展しています。

当初の研究には主なテーマに「チョコレート」という要素は含まれてなかったものの、研究の後期になるとイライアス氏は「参加者に食べたものを尋ねるのはどうか」と考え始めました。その後、食物が心血管系危険因子に影響することが示唆され、被験者に対して食習慣の情報をたずねる質問表が調査に組み込まれることになり、1000人以上から長期的なデータを収集することが可能になりました。

以前からチョコレートと脳機能に関連があると考えていたジョージナ・クライトン氏は、イライアス氏の1000人のサンプルによる食習慣データに注目し、イライアス氏と共同で「週に一度以上」または「週に一度未満」の頻度でチョコレートを食べる人を抽出し、それぞれの認識力テストの中間値を比較しました。その結果、認識能力のパフォーマンスとチョコレートの摂取が「著しく明白な関連」を持つことが判明。チョコレートを摂取することで視覚的な空間能力や脳のメモリなどに影響を及ぼすことがわかっていましたが、クライトン氏によると、チョコレートの摂取が「電話番号を覚える」「2つのタスクを一度に進行する」といった毎日のタスクを実行する能力を上げていることが調査結果からわかったそうです。



By Bertalan Szürös

次にクライトン氏の研究チームは脳の認識機能に優れた人がチョコレートを好む傾向にあるのではないかと考え、MSLSの参加者から300人を選んでアンケートをとりました。すると「認識能力が高いほどにチョコレートの消費量が上がる」という傾向は確認されなかったため、チョコレートを摂取すると認識能力に良い影響が現れるものの、その反対は証明されませんでした。

チョコレートを食べることで認識能力が向上するのは、ココアやチョコレートに含まれるフラバノールが影響していると考えられていて、2014年にはココアのフラバノールが記憶力低下を劇的に改善させていたことを示す研究が発表されたこともあります。

ただしイライアス氏は「やみくもにチョコレートを食べればいいわけではありません。今言えるのは、食事の代用品にするほどの大量のチョコレートではなく、少量のチョコレートであれば脳に良い影響をもたらすということです」と話しており、研究はまだ終わっていないとのこと。今後はカカオの分量が多いダークチョコレートや少ないチョコレートなど、チョコレートの種類別に脳への影響を調査する予定で、さらに「大量のチョコレートを食べると何が起こるのか」ということを調査したいとのことです。



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