「誤審」につながった丹羽大輝の守備は、何がマズかったのか?

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20日に行われたJリーグ、2016シーズンの開幕を告げる「FUJI XEROX SUPER CUP 2016」は、サンフレッチェ広島が3-1でガンバ大阪を下し今季最初のタイトルを獲得した。

8年連続で前年のリーグ王者が勝利した試合はしかし、思わぬところで大きな話題を呼んだ。言うまでもなく、広島の2点目となったPKの判定である。

51分に佐藤寿人のゴールで先制した広島がその5分後、左サイドからクロスを上げると、ガンバ大阪DF丹羽大輝がスライディングでブロック。これが飯田淳平主審によってハンドと判定され、丹羽はボールが顔に当たったと主張するも判定は覆らず、佐藤に代わって入ったばかりの浅野拓磨がPKで追加点を奪った。

この判定は結果的に決勝点となったこともあって波紋を呼び、Jリーグは24日、今年のヤマザキナビスコカップとチャンピオンシップで追加副審を導入することを発表(※前者は準決勝以降)。J3においても6月ごろに各節1試合の予定で試験導入されることが決まった。

日本サッカー協会(JFA)の上川徹審判委員長も、映像から判断する限り今回の判定は「誤審」であったと語っており、今週末のJリーグ開幕を前に文字通り幕が引かれた格好だ。

ただ、今回の「誤審」により生まれたPK、審判の判定のみに起因するものかといえば、決してそうではない。この点に関しては24日にJFAで行われたレフェリングに関するメディアカンファレンスでも、飯田主審のポジショニングとともに指摘されていたようだ。

そこで、「誤審」につながった丹羽大輝の守備について改めて触れてみたい。

まず、PKが生まれたシーンの映像から。

これはスタンドから撮影されたもの。主審がどういった地点から判定を下したのかも確認することができる。

カウンターで青山敏弘からのパスを受けた柴崎晃誠(30番)が持ち上がり、その外を柏好文(18番)がオーバーラップ。1対2の状況に陥った丹羽が懸命に対応し、柏のクロスに対して必死のスライディングでブロックするも、ハンドと判定されてしまった。

ガンバ大阪DF丹羽大輝の守備

今回ハンドとなった要因の一つは、やはり丹羽が両手を挙げてスライディングしたことだ。ボールが速かった上に当たって飛んだ方向も悪く、「左腕に当たったと判断した」という飯田主審の話はひとまず飲み込むことができる。

実際に当たっていなくても、そう見えてしまえば事実と異なる判定がされることもあるのがサッカーだ。

ここまではおそらく今回の一件を踏まえずとも多くの人が理解しているに違いない。「懸命の対応」だからといって良い結果を生み出すとは限らないのである。

また一方で、審判をやったことがあるなどサッカーについてそれなりに知識があれば、こういった図も知っているはずだ。

ガンバ大阪DF丹羽大輝の守備

前述の「追加副審の導入を決定」に関するJリーグのリリースに付帯されていたPDFから抜き出した画像で、審判の試合中における一般的な位置取りが示されている。

両ゴールから見てそれぞれ左側のタッチライン際に副審が立ち、ピッチの半分のエリアをカバー。主審は副審の反対サイドを中心に斜めに動くことが基本となる。11人制サッカーならアマチュアであっても当たり前のことだ。

そしてここから分かることは、ハーフウェイラインで分けられた半面のピッチにおいて、「審判の視点」という観点から同じ状況の場所はどこにも存在しないことである。

簡単にいえば、

ガンバ大阪DF丹羽大輝の守備

この4か所からゴールに向かってドリブルを仕掛けるプレーは、状況的にすべて異なる。サッカーというスポーツにはこういった“仕組み”があるのだ。

今回の場合、カウンターにおける主審と副審の視線を考えると、このようなシチュエーションになる。

ガンバ大阪DF丹羽大輝の守備

青が審判の視線、赤が丹羽。つまり、黒の点線で囲んだ辺りに死角ができやすい。

今回、完全に黒のエリアで何かが起こったとはいえないかもしれないが、状況や場所によってどういったことが起こりえるのか、選手は予め学んでおく必要がある。もし一方だけが知っているのであれば、それはアドバンテージにもなりえるだろう。

この副審と逆サイドのエリアというのは、いろいろなことが起こりやすい場所だ。

たとえば、日本がグループステージ敗退を喫した2014年ワールドカップのコロンビア戦、先制点となるPKを奪われたのもこのエリアだった。

同じカウンターの形(=審判が良いポジションから見られるとは限らない)。当時から今野泰幸のタックルについて指摘する声は多かったが、このエリアがどういった場所なのか深く理解していれば別の対応をしていたかもしれない。

思えば昨年のJリーグも開幕前後に「誤審」が非常に大きな話題となった。その一つ、開幕戦となった清水エスパルスvs鹿島アントラーズについて当時取り上げたが、あの場面も清水DFの対応が良ければ「誤審」以前に決定機まで至らなかった可能性が十分にあった。

ただ、「誤審」がスキャンダラスに注目を集める一方で、守備の拙さについては全体としてあまり具体的に触れられていない現状がある。

今回の丹羽に関しては、彼がヴァヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表の一員でもあるため少し踏み込んで取り上げた。サッカーも他の多くのスポーツと同様、守備に関してはかなりの割合で“正解”が存在する。だからこそ改善することが結果にもつながりやすい。

今回の一件がJリーグ全体としてレフェリングはもちろん、守備面のレベルアップにもつながっていくことを願ってやまない。