大和証券投資戦略部兼金融市場調査部 副部長シニアストラテジストの山田雪乃氏(写真)は、2016年の中国市場について「中国経済が産業構造の転換を図る中で、新たな成長産業が生まれやすい環境にある」と、市場全体よりも個別セクターや企業を見る戦略で臨みたいと語っている。

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 大和証券投資戦略部兼金融市場調査部 副部長シニアストラテジストの山田雪乃氏(写真)は、2016年の中国市場について「中国経済が産業構造の転換を図る中で、新たな成長産業が生まれやすい環境にある。個々の企業を吟味すると魅力的な銘柄が数多く存在することがわかるだろう」と、市場全体よりも個別セクターや企業を見る戦略で臨みたいと語っている。

――2016年の中国経済の見通しは?

 中国は過剰投資による過剰設備・在庫を圧縮することが必要になっており、経済成長率の伸び率は大きく期待できないと考えています。中国政府は6.8%程度の成長をめざす方針でしょうが、当社の香港在籍エコノミストの見方では6.5%成長にとどまるだろうと、厳しくみています。

 中国では「ニューノーマル(新常態)」が打ち出され、製造業中心の経済からサービス業優位の経済への構造変化が続いています。2020年に2010年比で1人あたり所得を倍増する目標の実現に向け、イノベーション(技術革新)を起こすことに注力し、社会のサービス化は加速する方向です。以前のように製造業や資源関連などに国が大型投資をし、株価指数が大幅高する環境ではありませんが、新たな成長産業が生まれ、個別に活躍することを後押しする政策がとられています。「森」より「木」を見る戦略で臨む局面です。

 2016年のテーマは、中国の流行りの言葉でいうと「サプライサイド改革」と「国有企業改革」です。実際に、国有企業改革など膨らんだ供給サイドの過剰設備、不動産の不良在庫などの解消をめざした動きが続き、これらは簡単には解消できないため、成長率や株価の上値は抑えられたものになるでしょう。ただ、成長産業を選別投資していくという目で見ていけば、中国市場は引き続き魅力的な市場であるといえます。

――中国の株価の見通しは?

 上海総合指数は3600ポイント台で越年しそうですが、2016年の下値のメドは3200ポイントから3300ポイント。2015年のように3000ポイントを割り込むようなことはないと思います。上値は4300ポイント程度を予測します。

 中国本土では、金融緩和が続き、株式市場への資金流入が見込まれる一方、IPO登録制の2年以内の実現に向けたロードマップが発表されており、割高な中小型株からの資金流出圧力が強まることで、株価の上値は抑えられそうです。

 一方、香港は足元の業績見通しが厳しく、年初は米利上げの影響や中国不安などから強気になりづらいところです。MSCI採用銘柄の業績見通しは、2014年度の8.3%増益に対し、2015年度は、年初の3.8%増益見通しから、徐々に下方修正され、9.6%減益程度で着地しそうな見通しです。2016年度は現在のところ9%増益の見通しです。 また、香港は、米国の利上げを受けて利上げを実施していきます。このため、不動産販売が鈍化する傾向を強めることになります。

 しかし、高値はハンセン株価指数で2万6000ポイント程度とみています。2016年には香港と深セン市場の交流開始が予定されています。香港と上海がつながった時に中国本土から香港への資金流入があったように、深センとのコネクトによって本土からの資金流入の期待が持てます。さらに、人民元安が傾向的に続くと、中国本土から外貨獲得へのニーズも高まるでしょうから、それも本土から香港への資金流入を推し進める要因に働きます。

 香港市場には年初は厳しい局面を予想しますが、深センコネクトの実施などをきっかけに、徐々に持ち直すような動きに転じるでしょう。

――注目する投資テーマやセクターは?