はねくら・おはよう靴下・するびる...東北人が「えっ、これ方言なの?」と驚いた言葉
ふるさとの温もりが感じられる「お国言葉」の中で、東北の方言は早口で分かりにくいとよく指摘される。寒くて口をあまり開かないからという説があるが、東北といっても北部と南部とでは気候は異なるし、福島県太平洋沿岸の「浜通り」はほとんど雪が降らない。
宮城・山形・福島のいわゆる東北南部の話し言葉は、新潟や関西の影響が強かった山形庄内地方などを除き、「南奥羽方言」というグループに属する。
矢印の示す地域以外でも、これらの方言が使われている可能性はある。
今回の「共通語だったと思ったのに、実は方言だった言葉」は、そんな東北3県出身の読者から寄せられた情報を紹介しよう。
「バスから落ちる」って...誰か転落でもしたの!!
福島市出身のAさん(50代男性)は、仲間と徒競走をしたくて「はねくらしよう!」と声をかけたところ、無反応だった経験をもつ。調べたところ、「はねる」は走るという意味で、そこから「はねくらべ」という言葉になったようだ。
「大学の同じクラブの後輩に、やはり福島市出身者がいました。その後輩と私が、クラブのメンバーに『はねくらしよう!』と声をかけたら、誰からも反応がありませんでした。そのときは言葉が通じないとは考えず、みんな徒競走なんてやりたくないんだなと思っていたのです」
彼の体験はほかにもある。
「大学生のとき、友人のアパートに10名くらい集まってきて、ワイワイやっていました。盛り上がってきて、あまりにうるさく、近所迷惑かなと思い『せずね』と言いました。仙台出身の友人だけこれに反応しました。仙台では『しずね』と言うそうで、『静かにしましょう』→『静ね』(仙台)→『せずね』(福島)と変遷したのだと、予想した次第です」
東北の方言になじみがない人が聞いたら、「切(せつ)ねぇ」と勘違いそうだ。
彼からの投稿をもう一つ。中学時代に修学旅行で東京を巡ったが、学校の先生から次のように指導されたそうだ。
「『こわい→疲れた』と『落ちる→降りる』。この2つは、中学校の修学旅行の前に、『東京に行ったら"こわい"とか"落ちる"と言わないように』と先生から注意喚起がありました。とくに、『"バスから落ちる"と言ったら、バスガイドさんが事故でも起きたのかと驚くのでやめましょう』と言われました」
ひょっとして、学校の先生も「バスが落ちる」と言ったばかりに迷惑をかけた経験があるのでは――と勘ぐってしまう。
ちなみに「こわい」は、硬いことを意味する古語「こはし」に由来し、「こわくてもう歩けない」といった具合に用いる。厳しい自然環境に生きた東北人の姿と重なる表現だ。
ジーンズの裾が地面に擦れていたら「するびる」
いわき市のBさん(60歳手前の男性)は、東京に就職して埼玉に住んでいた20歳のとき、彼女と一緒にいて、「するびる」が標準語でないことにはじめて気づかされたそうだ。
「流行の裾の広がったジーンズに底の厚いデニム地のサンダルを履き、彼女を連れて近くのスナックへ行ったとき、サンダルを脱ぎながら『するびっちゃうなぁ』と言いました。すると彼女が『はぁ、何て言った?』と......。
『するびる』を標準語だと確信していた自分は彼女を『この子頭良くないのかな』などと勝手に思い、裾をするびかせながら、これをするびるって言ったところ、『え〜っ、それって引きずるじゃないの?』と反論されました」
仙台限定の「おはよう靴下」ってどういう意味?
次に紹介するのは、宮城県のCさん(30代女性)。ご当地では親指のところが破けた靴下を「おはよう靴下」と呼ぶ。
「バイト先で、『おはよう靴下履いてきちゃった』と言ったら、他県の後輩の子に笑われました」
南奥羽全域というより仙台限定の言い回しで、テレビ番組でも取り上げられた(参考:仙台人「おはよう靴下」 他県民「????」)。
戸外の食事を好む山形人が使う「お弁当開き」
最後に紹介するのは、山形県出身のDさん(40代女性)から寄せられた、「お弁当開き」という表現だ。公園や河原、庭などで弁当を食べるという意味で、ピクニックよりも手軽に戸外の食事を楽しみたいとき、家族や仲間を誘う場面で使われるそうだ。
「子どものころは、近所の友だちが遊びの誘いに来て、『今日はなにする?』『おべんとびらきしよっか!』『じゃあ、お母さんにおべんと作ってって頼んでくる!』なんて、可愛らしい会話をしてました」
Dさんは転勤で現在仙台在住。同僚と会話中、子どもが遊ぶのによい場所の話題となり、「あの場所はお弁当開きするのにちょうどいいよね」と言ったら、全く通じなかったという。
お国なまりというよりも、山形特有の表現といったほうが適切だろう。
そういえば2015年9月20日は「日本一の芋煮会フェスティバル」が山形市内で開催される。自然の豊かな場所で食事をすることは、山形県人にとって一種のレクリエーションであり、独自の表現が育まれていったのではないか。
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