駅のホームに青い光が入るよう屋根に工夫が施された

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2011年7月以降、人身事故が頻繁に起きているJR新小岩駅で、他の駅では見かけない「改良」が加えられている。

ホームに差し込む青い光、駅構内に設置された大型液晶画面など、インターネット上にも目撃談が寄せられている。

青色灯の設置後に鉄道自殺者数が平均84%下落との研究成果

新小岩駅のホームに立つと、上から「青い光」が降り注ぐ。総武線各駅停車と総武線快速電車の2つのホームいずれも、同じ措置が施されていた。記者が訪れた2015年5月21日午後、好天だったこともあり、ホームのコンクリートは青々と照らされていた。

沿線の他の駅では、屋根の一部を半透明状にして採光しているが、新小岩駅ではこの部分を青くして、日中に青い光が集まる工夫をしている。実は青色は人間の精神を穏やかにする効果があるとされる。2012年10月9日、東京大学大学院経済学研究科の澤田康幸教授らは、「首都圏のある鉄道会社のデータを用いた統計分析により、駅ホームにおける青色灯の設置後に鉄道自殺者数が平均して約84パーセント下落することが分かった」とする研究成果を発表している。

ホームではこんな対策もみられた。「いのちの電話」の電話番号や、悩みを打ち明けるよう促すメッセージが、ホームで電車を待っている際に目に入る場所に書かれていたのだ。さらに駅構内に2か所、ホームから階段を下りて改札に向かう場所に大型の液晶画面が3つ並んで置かれていた。滝や森などの美しい風景や、犬や猫といったかわいい動物の映像が絶え間なく映し出される。

こうした措置は、新小岩駅独自のようだ。快速電車の隣駅、錦糸町駅ではホーム上に青い光が入るようにはなっておらず、駅構内に液晶画面が設置されている様子もなかった。このためか、ツイッターには新小岩駅の「違い」に関する投稿が相次いだ。青々としたホームに違和感を抱く人、またこれらの施策に「嫌でも連想してしまう」と、かえって事故の多さを想起させるとの指摘もあった。なかには、ホームにある列車の非常停止ボタンの模擬装置が構内にあったと写真を投稿し、「何でこんなものが」といぶかっていた。

ホームドア設置は葛飾区と協議中

新小岩駅での自殺とみられる人身事故は、直近の4、5月だけでも確認できるだけで3件起きている。いずれも駅を通過する成田エクスプレスにはねられたものだ。駅利用者を巻き込む痛ましいケースもあり、列車に飛び込んだ人がはね飛ばされてホームにいた人に接触、負傷につながった事故も過去に起きている。

JR東日本千葉支社の広報に電話取材すると、青い光の工夫をはじめ一連の措置は、「お客様に心の癒しや安心を与えるのが目的」と回答した。また非常停止ボタンの模擬装置は、今年3〜4月にかけて実施された「JR東日本・生きる支援の強化月間」の最中に、利用者に触れてもらおうと一時的に新小岩駅に置いたのだという。ただし装置は強化月間中に他の駅も巡回しており、新小岩駅だけに設置されたわけではないと説明した。記者が同駅を訪れた5月21日午後、模擬装置は構内には見当たらなかった。

首都圏の鉄道各線では、ホームから線路への転落を防止するホームドアの整備が進んでいる。2015年3月24日、JR東日本は新小岩駅で大規模な改修工事が行われるため、それに合わせて快速線側にホームドア導入の「設置検討を進めています」と発表した。

現状をJR東日本千葉支社に確認すると、改修工事の完了までにホームドア設置を考えてはいるが、具体的には駅の所在地である東京・葛飾区と協議中で完成は未定だとの回答だった。