大阪産大附の攻める守備を上回ったPL学園に息づく伝統

攻めの投球をみせた當麻渾哉(大阪産大附)

 昨秋の4強が全て同一ブロックに入った今春の大阪大会、最激戦区のDゾーンでまずは昨秋準優勝(試合レポート)のPL学園とベスト4(試合レポート)の大阪産大附がぶつかった。

 昨秋、PL学園は決勝で、大阪産大附は準優勝でどちらも大阪桐蔭に大差をつけられ敗戦。また、共に新監督を迎えこの春が初采配とチーム状況に共通点が多い。王者へのリベンジにつながる試合で先制したのは今大会2試合で23得点を挙げたPL学園だった。

 3回、PL学園は一死満塁のチャンスを作ると4番・大丸 巧貴(3年)のレフト前タイムリーで1点を先制。スイングしたバットの先に当たりボコッという鈍い音のする打球だったが、ちょうど三遊間の真ん中に飛んだ。運も味方して1点を奪うと、秋には4番を打っていた5番・グルラジャニ ネイサン(3年)がライト前に2点タイムリー。初回に3三振を奪われ、2回の攻撃を9球で片づけられていた大阪産大附の先発・當麻渾哉(3年)にこの回だけで38球を投げさせた。

 追う展開となった大阪産大附は直後の攻撃ですぐさま反撃。一死一、二塁から4番・谷村翔也(3年)のレフト前タイムリーで1点を返すと、6番・前西拓斗(3年)のきれいなピッチャー返しがセンター前タイムリーとなり2点目。

 1点差に迫ると中盤は両先発左腕の我慢比べとなった。初回から飛ばしていた大阪産大附・當麻が、4回と5回を四球1つだけに抑えると、試合中にもブルペンで投げ込みを行っていたPL学園の先発・山本 尊日出(3年)もバントヒットと死球を与えただけで二塁を踏ませない。膠着状態が続く中、6回に大阪産大附が大ピンチを迎えるが攻める守備で本塁を死守する。

 6回、PL学園の攻撃で先頭の7番・宮木樹(3年)がライト前ヒットで出塁すると8番・山本は送りバント。やや強めの打球がピッチャー前に転がると勢いよくマウンドを駆け下りた當麻は迷わず二塁へ送球。タイミング的にはアウトだったがショートが捕球できず。無死一、二塁から9番・中田一真(3年)のバントはマウンドとホームベースの中間付近への小フライ。猛然とダッシュで突っ込んできたファースト・前西がダイビングキャッチを試みるが弾いてしまいボールがファールゾーンを転がる間にオールセーフ。どちらもナイスプレーとは紙一重だったが不運なバント守備が2回続いて無死満塁となり、打順はトップに返ってPL学園のキャプテン・謝名堂 陸(3年)を打席に迎える。

決勝打を放った土橋昇真(PL学園)

 もう1点もやりたくない大阪産大附は中間守備ではなく二遊間もホームゲッツー体勢の前進守備を敷き、當麻は果敢にインコースにストレートを投げ込む。受け身の姿勢を全く見せなかった結果、謝名堂はフルカウントから空振り三振、2番・土橋昇真(3年)にはいい当たりを打たれるがセカンド真正面のゴロ。狙い通りのホームゲッツーで切り抜け無失点。3回にも結果的には3点を取られることになったが、一死二、三塁で前進守備を敷くなど試合を通して“攻める守備”の姿勢を貫いていた。

 粘って食らいついて1点差のまま終盤を迎えると8回、一死満塁から代打・松永大輔(2年)がレフトに犠牲フライを放ち試合を振り出しに戻す。

 3対3のまま延長戦に突入した試合は10回、PL学園が二死二、三塁のチャンスをつかむと、ここまでノーヒットだった土橋がやや浅めに守っていたライトの頭上を超える2点タイムリーツーベースを放ち、勝ち越しに成功。その裏、大阪産大附も二死満塁と一打同点のチャンスを作るが、あと1本が出ず試合終了。三者凡退は9回の1度だけ、何度も得点圏にランナーを置いたがもうひと押し足りなかった。

 互いにいくつか守備のミスがあった試合で、勝敗を分けたのはPL学園のそつのなさだった。先制した3回はレフト前ヒットを放った先頭の中田が、中継が乱れる間に二塁に進塁。10回に決勝のホームを踏んだ宮木も、出塁はエラーによるもの。試合を決めたのは二死二、三塁から土橋の一撃だったが、その前に一死一、二塁からの暴投が無ければ2人目の生還は当たりが良かった分難しかったかもしれない。

「ミスにつけこんでくるところは昔から変わらない」これが大阪産大附の桜井監督が舌を巻いたPLの野球。他にもランナー二塁でヒットが出た時、タイミング的には生還はまず無理な打球でもランナーは本塁に還るつもりで三塁ベースを蹴り、三塁コーチは相手がミスしないかギリギリまで見てからストップの指示を送るなど、細かい意識がチームに浸透していた。監督人事が難航し新入生の募集を停止するなど部の存続が危ぶまれているPL学園だが古豪の伝統は今もしっかり受け継がれている。

(文=小中 翔太)