香川真司がドルトムント復帰3戦目にして、初めてのフル出場を果たした。だが、ホームでシュツットガルト相手に勝ちきれず(結果は2−2)、浮かない表情を見せた。この試合、シュツットガルトの酒井高徳もフル出場している。

「勝ちきれる試合だった」

 試合後の香川と酒井は期せずして同じコメントを口にした。だが、そのニュアンスは少々異なる。香川は「追いつけて良かったけど、勝ちきれる試合だった。こういう展開になって残念」と悔やみ、酒井は「(先に2点をリードして)勝ちきれる試合だったけど、うちにとっては上々の結果」と受け入れた。

 ドルトムントはこの日、布陣を変更し、4−3−3に近い布陣でスタート。香川はオーバメヤンとともに、1トップのインモービレのトップ下のような形でプレイした。クロップ監督からは「トップ下のイメージで」と言われたそうだが、「高い位置からプレスに行き過ぎた」と振り返る。プレスのリズムを乱した感覚があるようだった。

 それでも、香川はチーム最多の7本のシュートを放ち攻撃を牽引した。前半33分には浮き球のパスに反応し、GKのタイミングを見計らってボレーシュートを放つがクロスバーに嫌われた。この日は珍しくヘディングシュートも見せ、後半29分、後半44分と惜しいシュートを放った。チームは2点を先制され、どうしても追いつかなくてはならない後半は特に積極的に攻めたが、ゴールは遠かった。香川自身にもまだまだ本来のトラップやターン、ドリブルでの繊細なプレイは見られない。強めのパスが入ればトラップはずれるし、ターンに時間がかかってピンチにつながることもあった。

「この間の相手(マインツ)もそうですけど、相手はみんなで守ってくるので、やはり引いた相手や厳しいプレッシャーの中でどうやって崩すかというのが課題じゃないかと思います。自分は今日は、前半から(ボールが)うまく足につかなかったりしていたので課題が残るし、もっとフィットネス、コンディションを上げて、90分戦える体作り、試合勘を増していけるようにしたいと思います」

 と、香川は語る。チームはオーバメヤンのゴールで1点差にすると、試合終盤にフンメルスを投入するなどして、終了間際にインモービレのゴールでなんとか同点に追いついた。

 一方、シュツットガルトもこれまでとは違う4−3−3に近い布陣できた。「うちには攻撃のタレントがいると言うけれど、こういうほうがうちらしい戦い方ができる。うちらしい、というのはカウンターサッカーのこと」と酒井高徳は語る。

 攻撃陣に技巧派が揃っていると認識しているフュー監督は、主導権を握るサッカーを展開したいようだが、在籍3年目となる酒井してみれば、このチームの強みはカウンターにこそある。守って、機を見て前線の攻撃性を利用する。この日の2得点がそうだったように、攻め込まれても耐えてワンチャンスを狙うということだ。この日はそれができたという意味で、「勝てなくて残念ではあるが」という条件付きで、納得の表情だった。

 シュツットガルトはこの日、ボビッチGMの解任を発表している。フェー監督は「彼をいい結果で送り出そう」と、試合前に話したという。「それで士気が上がったかも......」と言う酒井自身、ボビッチの目に止まり入団に至った経緯があり、その解任を惜しんでいた。

 ドルトムントもシュツットガルトも中2日で次戦が行なわれる。これから冬にかけて厳しい日程が続くだけに、気持ちをどれだけ切り替えられるかが、連戦を乗り切る鍵になるだろう。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko