浅村栄斗選手の成長が本当に目覚ましい。昨日の試合では2つの失策を記録するなど、守備面に関してはまだまだ成長過程にある。今季は二塁手として固定されているわけだが、昨季までは主に一塁を守ってきた。それを考えれば二塁の守備はまだまだ慣らし段階と考えればいいだろう。だが高校時代は元々二遊間を専門としていたため、体が慣れてくれば守備は自然と安定していくはずだ。しばらくは失策も増えていくかもしれないが、今はそこをあえて指摘する必要はないだろう。もちろん失策は少ないほど良いわけだが、まずは打撃面で自らの守備のミスを補って余りあると考えておきたい。

その打撃に関してだが、昨日の一発で2試合連続のホームランとなった。このオフはウェイトアップに重点を置きトレーニングに励んできた浅村選手であるわけだが、確かにパワーアップしているように見える。昨日の高く舞い上がったレフトへのホームランにしても、昨季までならもしかしたらフェンス直撃となっていたかもしれない。だがパワーアップにより打球に強いスピンがかけられたことで揚力が増し、フェンスオーバーするまで打球が落ちてくることはなかった。まだまだホームランバッター特有のホームランは少ない浅村選手ではあるが、しかしこの一発に関してはアーチストが打つホームランそのものだった。つまりボールの下半分を強く叩き、鋭いバックスピンを打球に与えて揚力を強め、高々と打球を舞い上がらせるホームランの打ち方だ。

昨日のホームランは109kmのカーブを打ったものだった。スウィング速度が速くない打者がこのボールを打つとどうしてもボールを迎えに行ってしまい、ボールの下っ面を擦ることによってポップフライになることが多い。だが浅村選手のようにスウィング速度が速い選手の場合、カーブが打ちやすい高さに落ちてくるまでスウィングを待つことができるのだ。昨日のスウィングを見ても、浅村選手の体はまったく突っ込んでいない。自分のスウィングができるポイントまであの遅いボールをしっかりと待ち、ハードヒットしている。細かい怪我が減ったことと、ボールをこうして待てるようになったことが、昨季以降の浅村選手の数字の根拠となっていると筆者は見ている。

繰り返しになるが、浅村選手はまだアーチストのホームランの打ち方はしていない。中村剛也選手のように打球にバックスピンを与える高い技術がまだないのだ。そのため40本塁打を打つことは非常に難しいだろう。だが3割30本100打点という数字であれば、今季の浅村選手のテクニックとフィジカルがあれば十分クリアすることができるだろう。この考え方を前提にできるならば、ライオンズの4番にはもう浅村選手を固定させてしまって良いのではないだろうか。中村選手がここまで怪我に弱い姿を露呈している今、やはり打線の軸となる4番打者は試合に出続けられる浅村選手の方がチームにとってはプラスであると筆者は考えている。

軸というのはやはり簡単に替えるべきではない。本来であれば確かに中村選手が4番を打つべきではあるが、しかしこれから中村選手が戻って来たとしても、例えば4番浅村選手、5番中村選手というオーダーにすべきだと思う。少なくとも浅村選手の調子が余程悪くならない限りは、試合に出続け結果をしっかり残している浅村選手の打順は変えるべきではないだろう。勝てるチームというのはエース、クローザー、4番打者、正捕手、正遊撃手がコロコロと変わることがない。黄金時代のライオンズはまさにそうだった。特に4番は清原和博選手が打ち続け、余程のことがない限り打順が変わることはなかった。チームの軸がこうしてぶれなかったからこそ、黄金時代のライオンズは強さを維持することができたのだ。

浅村選手は今季24歳とまだまだ若い。つまりこれからまだまだ成長していく打者なのだ。その浅村選手は昨日の時点で14打数4安打、本塁打2、打点3、打率.285という数字になっている。打率はまだ3割を切っているわけだが、この打率はほとんど3割と考えていいだろう。何故ならこの数字が15打数5安打になれば打率は一気に.333まで跳ね上がるからだ。現にこの記事を書き始めた今日の1打席目にはライト前ヒットを放ち、打率を.333にしている。繰り返すが浅村選手はまだまだ伸びていくだろう。何故なら浅村選手は自らの目の前で中島裕之選手栗山巧主将、そして中村剛也選手という一流選手たちを見続けてきたからだ。彼ら一流のDNAを少しずつ受け継いでいる浅村選手は恐らく近い将来、中島選手・栗山主将・中村選手を越える打者へと進化していくはずだ。