昨年12月の長距離弾道ミサイル発射からわずか2ヵ月後の2月12日、日中米韓の制止を振り切って3回目の核実験を強行した北朝鮮。すでに「アメリカを狙い、高い水準の核実験を実施する」と1月24日に宣言していたが、さらに実験から4時間後にはこんな声明を発表した。

「われわれの国防科学部門は第3次地下核実験に成功した。……核の小型・軽量化に成功し、さらに爆発力も向上した。……今回の核実験は、米国の暴悪非道な敵対行為に対処し、国の安全と自主権を守護するための実質的対応措置の一環として行なわれた」

あらためてアメリカを名指しで非難しながら自らを正当化した北朝鮮。金正恩体制に移行して約1年が経過し、これまでの“ならず者国家”から、“対話できる国家”へと変化することに淡い期待を抱いていた日米韓、3国の政府関係者は深く失望したはずだ。

「しかし、アメリカには失望している暇はないでしょう。すでに“新たな脅威”について、本格的な検討が始まっているとみていい」

軍事評論家の世良光弘氏はこのように分析する。アメリカにとっての“新たな脅威”とは何か?

「アメリカのシンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)は、北朝鮮が主張したとおり、今回の核実験で核爆弾の小型化に成功しているとみています。ただし、それは日本の全域を射程に収める中距離弾道ミサイル『ノドン』に搭載可能な1tクラスの核爆弾で、大陸間弾道ミサイル『テポドン2号』に搭載可能なレベルまで到達していない、との見方です」(前出・世良氏)

つまり、北朝鮮が得意とするハッタリの可能性もあるということだ。だが、世良氏は続ける。

「しかし、この見解については懐疑的にならざるを得ない。なぜならアメリカ政府が重大な戦略を決定する前に、ISISが国家の脅威に直結する情報を流すわけにはいかないからです。私は、すでに4年前の核実験で北朝鮮は1tクラスの小型核爆弾の開発に成功しているとみている。そして今回、テポドン2号に搭載可能な500kg以下の小型化に成功したのではないか。そうでなければ、ハッキリと『アメリカを標的にする』という声明は発表しないはず」(世良氏)

もしも世良氏の推測どおり、テポドン2号に搭載可能なら、北朝鮮の核ミサイルはアメリカ西海岸まで到達することになる。

だが、「小型の核爆弾をテポドン2号に搭載できるかどうかが問題ではない」と『コリア・レポート』編集長の辺真一(ピョン・ジンイル)氏は語る。

「北朝鮮の、『アメリカを標的にする』という声明そのものが、アメリカに対する“宣戦布告”と解釈することができる。これまでアメリカは北朝鮮に対して自重してきましたが、安全保障の観点から断じて黙認するわけにはいかない。“自衛権の行使”の名の下に、イスラエルがシリアの核施設を先制攻撃で潰したように、アメリカも北朝鮮のミサイル基地を先制攻撃できる」(辺氏)

事実、北朝鮮が核実験を強行した2月12日、オバマ大統領は「北朝鮮の核兵器と弾道ミサイル計画は、アメリカの安全保障上の脅威だ」と激しく非難し、パネッタ国防長官にいたっては「北朝鮮の脅威に対処する準備をしなければならない」と一歩踏み込んだ発言をしている。これは、米国防総省が「アメリカによる先制攻撃」を検討に入れたことを意味する可能性が高い。

(取材/鈴木英介)

■週刊プレイボーイ9号「将軍様の亡霊が北朝鮮を破滅させる!」より