国内家電販売最大手の「ヤマダ電機」が、こちらも家電販売大手の「ケーズデンキ」を展開するケーズホールディングスを相手取って5500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたことが2012年11月21日、分かった。

訴えの内容は、ヤマダ側にとって不名誉な雑誌記事のコピーをケーズ側が配布し、営業を妨害されたというもの。メンツをかけた売上高1位と4位(いずれも12年3月期現在)の法廷闘争に競合他社も注目している。

因縁の「アフターサービス」特集

ケーズ側がコピーして配布した記事は、日経ビジネスが2010年7月に掲載した「アフターサービス」に関する毎年恒例の特集記事。アフターサービスの満足度をアンケート調査して順位付けし、家電量販店部門でケーズデンキは1位、対するヤマダ電機は最下位の14位だったのだ。

ヤマダ側の訴状によると、ケーズ側はこの記事のコピーを雑誌発売後の10年8月から1年間にわたり来店客に配布したとしている。代理人の弁護士は「この行為はヤマダ電機のアフターサービスが著しく劣っていると来店客らに知らせることを目的としており、名誉棄損と不正競争防止法違反に当たる」と主張する。

一方、提訴されたケーズホールディングスによると、問題の日経ビジネスの記事コピーはA4版(カラー)で4ページ。全国約350店舗(当時)の店頭に置いたり、レジの際に買い物客に手渡したりしていた。「コピーする際には著作権などの問題について日経ビジネス側の了解を得ていたし、記事には全く手を加えずに複写している」(社長室)と語る。

業界最大手と4位の諍いのタネともいえる「アフターサービス」特集をめぐっては、実は掲載誌の日経ビジネスとヤマダ電機との間でも過去に因縁がある。

ヤマダ電機は08年7月の日経ビジネスで、アフターサービスの満足度調査で16社中最下位にランキング付けされ、名誉を傷つけられたとして5500万円の損害賠償請求訴訟を提起。だが、10年12月の一審判決では「ランキングの根拠となるアンケート調査に恣意性が介入する事情はなく、合理的な調査結果となるよう配慮されていた」として訴えを退けられ、2審、上告審も敗訴していたのだ。

報道とチラシの違いはあるのか

「アフターサービス」特集を掲載した年は08年と10年で異なるものの、司法の場で「合理的な調査結果」との判断が確定した記事のコピーを配布することが、名誉棄損などに該当するのだろうか。

これに対し、ヤマダ電機の代理人の弁護士は「日経ビジネスとの訴訟で判決が確定したのは報道記事として名誉棄損にあたらないということ。他社にとって不名誉な記事を商業広告チラシとして使用することとは問題が違います」と強調する。

訴えられた側のケーズホールディングス社長室は「記事のコピーは法的な問題をクリアした上でコピーし配布しています。裁判については法律にきちんと則って対応していきたいと考えています」としている。

ちなみに、日経ビジネスは12年7月にも恒例の「アフターサービス」特集を企画し、ケーズデンキは3年連続で1位。ヤマダ電機も定位置だった。