昨日の記事にて筆者は、来季ライオンズの3番は栗山巧選手が打つのだろうと書いた。その理由は、今季中島裕之選手がヤンキース入りしていれば、栗山選手が3番を打つことになっていたからだ。既定路線という意味では、来季は栗山選手が3番を打っている可能性は高い。しかし筆者個人の意見としては実はそうではない。来季、3番は秋山翔吾選手に打ってもらいたいと考えているのだ。これは何も「3番センター秋山」を再現したいからだけではない。

結論から言えば、秋山選手にはファイターズの糸井選手のようなプレイヤーになってもらいたい。毎年3割を記録し、ホームランも15〜20本打てるような打者だ。打率に関しては栗山選手も2010〜2011年は2年連続で3割を記録している。今季も体に痛みがなければ3割を打っていただろう。だが相手投手からすると、栗山選手が3番に座っていても怖さがない。つまり長打を警戒しなくていいという安心感が投手を勇気づけてしまうのだ。2〜3年前だったろうか。栗山選手は20本塁打を目指したいとコメントしていたことがあった。2009年には打率こそ.267だったが、12本塁打を記録している。これを考えれば、栗山選手が本塁打を20本打つことは可能なのだ。ではなぜ2010年以降は4本、3本、今季は2本と減ってきているのか。

もちろんここ2年に関しては統一球の影響もあるだろう。だが2010年は統一球は導入されていないにも関わらず、4本で終わっている。打率は.310という非常に高い数字を残しはしたが、20本塁打を目指すというコメントを思い返すと、多少の物足りなさは残ってしまった。だが栗山選手はホームランを打てなかったのではなく、打たなかったのだ。恐らく打率とホームランを両立させることの難しさを実感したのではないだろうか。そして「ホームランは中村に任せればいい。自分は打率を残そう」という考えに至ったとも想像することができる。

栗山選手はご存じの通り、バットを非常に短く持っている。主軸を打てる力を持っている打者が、これほどバットを短く持つ例は珍しいのではないだろうか。バットをこれだけ短く持ってしまうと、木製バット特有のしなりを使えなくなってしまう。一般的には木製バットよりも金属バットの方が飛距離は出るとされているが、実はそうではないのだ。木製バットのしなりを上手く使うことができれば、金属バットよりも木製バットの方が飛距離が出るのだ。金属バットの方が飛距離が出るという考え方は、木製バットのしなりを使えないという条件でのみ成り立つ理論となる。

つまりバットを非常に短く持っている栗山選手は、それだけ打球の飛距離を殺してしまっているということになり、これでは20本塁打を目指すことも難しい。もし栗山選手がバットを長く持つようになれば飛距離が伸び、3割20本も現実味を帯びてくる。だが今の栗山選手の握りでは20本は難しい。これは3割3分、3本塁打を打つための握りだと言えるだろう。ちなみに付け加えておくと、栗山選手のバットは83cmだと思われる。これは一般的な大人用バットの長さよりも1cm短い。つまり指3本分短く持つということは、このバットの長さを踏まえると実際には指4本分短く持っている、ということになるのだ。これにより、今季の栗山選手のグリップではどれだけ長打が打ちにくいのかということをお分かり頂けると思う。

栗山選手は非常に高いコンタクト能力を持っている。なかなか空振りをしないし、ファールで粘り球数を増やすこともできる。そしてそこから四球をもぎ取る技術も持っているため、栗山選手は来季は1番に固定してはどうかと筆者は考えているのだ。そして2番には浅村栄斗選手を据えたい。投手は1人の打者に対して投げる球が多くなるほど、集中力を欠いてしまう。例えば1番の栗山選手に10球粘られたとすると、次の2番打者に対する勝負を急いでしまうのだ。すると初球に甘い球が来る確率が非常に高くなる。ファーストストライクからどんどん振っていく浅村選手にとっては、まさに好条件ということになる。

さて、ここで秋山選手に話を戻したい。秋山選手も非常に積極的に打ちに行くタイプであるため四球が非常に少なく、20打席に1つの割合でしかない。一方ファイターズの糸井選手は10打席に1つ四球を選んでいる。これはもちろん糸井選手に対する警戒心と、秋山選手に対する警戒心の違いということになるわけだが、来季秋山選手が15打席に1つ四球を選べるようになれれば、打者としてのスケールが一気に膨れ上がるのではないだろうか。

秋山選手が3番打者として成長し、相手投手が投げてくるストライクを減らしてくれば、何もファーストストライクを振っていく必要はないのだ。もちろん甘い球であれば振っていくべきだが、初球がストライクゾーンに来たからと言って、それをすべて振っていく必要はなくなる。ストライクよりもボールを投げてくる比重が大きくなるため、ボールカウントを稼ぎながら、自分が好きなコースだけを待っていればいいのだ。

秋山選手に3番を打ってもらいたいのにはもう1つ大きな理由がある。それは得点圏打率だ。今季は.303という比較的高い得点圏打率を記録した。そして得点圏で打ったホームランは全4本中2本だ。得点圏で立った打数は89で、得点圏以外での打数は314。これにより秋山選手はチャンスになるほど長打が増えるタイプであるという考え方ができる。もちろんサンプルはまだまだ微少ではあるが、しかし来季以降10本20本とホームランの数を増やしていけば、きっと今季感じさせてくれたポテンシャルの高さを証明してくれるはずだ。

筆者はこれらのような考えを持っているため、来季は1番栗山、2番浅村、3番秋山、4番中村という上位打線を見てみたいと密かに期待しているのである。