アーリントン滞在中の9月26日、僕はRangers Ballpark in Arlingtonにて、今全米で最もホットなMLBファンである「ホームランハンター」トレント・ウィリアムスに突撃取材を敢行した。前編となるVol.1では、彼は一体何者なのか、また試合開始前に彼が陣取っているエリアに侵入してプレゼントを渡し、彼からサインボールを貰ったことを紹介。またVol.2では、ゲーム終盤に再び彼の元に訪れ実施したインタビューの内容などを紹介した。


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 ゲームもいよいよ8回裏を終わろうかという頃、トレントと僕はダラダラとお喋りを続けていると、横で一人の男が「グリーン・ヒル」の柵にもたれかかっていた。こちらが彼の存在に気付いたことに向こうも気付くと、彼はトレントに"Hey how are you doing?"的な感じで話しかけ、トレントもそれに応えていた。どうやら知り合いらしい。

 トレントとお喋りする彼を横目で見ながら「この人、どこかで見たことある顔だな…」と思っていたのだが、手に持っていたFOX Sportsのロゴ入りマイクを見て正体がわかった。彼はFSSW(FOX Sports Southwest)のリポーター、Jim Knoxだった。





 やはりこのブログを読んで下さっている方ならご存知かもしれないが、Jimはレンジャーズのホームゲームをおそらくほぼ全試合カヴァーしているFSSWの看板リポーターだ。ゲーム後の選手のインタビューなどはもちろん、ゲーム中はボールパーク内をひたすら歩き回っては面白いファンを見つけてその場で絡むというようなことをやっていたりする。日本では中々お目にかかれないタイプの、エンターテイメント精神溢れるリポーターだ。


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↑JimとFox Sports Girls



↑Crazyな日本人ファンにインタビューするJim



 僕はJimに挨拶し、東京から訪れている旨を話すと、彼は僕が手に持っていたノートとペン、レコーダーを見て「Wow、トレントを取材しているのかい?」「トレントがジャパニーズメディアに取材されるなんて!」と驚いた。するとトレントは少し照れながら、僕がゲーム前にプレゼントしたポートレイト(スモウ・レスラー風)を取り出し「コレを見てくれよ!」とJimに見せる。とりあえずJimは大爆笑。

 その後しばらく、トレントが日本でどれくらい有名であるかなどについて語った後、Jimは「ゲームが終わったら2人でAfter Game Showに来てくれ!」と僕等にリクエスト。After Game Showとは、ゲーム終了直後にセンター後方辺りのコンコースにあるスペースで行われる、クレイジーなファンたちが集いひたすら騒ぐ的なショーで、Jimはこれの司会をやっているのだ。見たことがないのでどんなものなのかよくわからなかったのだが、とりあえずノリで参加してみることにした。

 僕は彼等ともうしばらくお喋りした後、3人で記念写真を一枚撮り、「じゃあ後で」と再びトレント・エリアを離れた。


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 試合終了後、僕は直ぐさまAfter Game Showの会場に向かった。Exitに向かう全うな人々の横をすり抜け会場に辿り着くと、そこは既にお祭り騒ぎ。柵の中にJimとカメラマンがいて、そしてその柵の周りを一発でCrazyとわかるファンたちが囲っている。トレントも、やはり貫祿充分の佇まいでショーの開始を待っている。


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↑こんな感じでファンたちがブースを囲っている。背番号6がトレント



 周囲のファンに圧倒されて少し離れたところでショー開始前の様子を眺めていた僕だが、Jimに発見されると「こっちに来い!」と呼び寄せられ、敢えなくブース前の最前列に移動。そしてショーが開始し、謎の横断幕を持ってシャウトしまくる連中に囲まれた中、Jimが僕等の元に歩いてくる。

 「ジャパニーズメディアが、何とスモウ・レスラーのポートレイトをトレントに持ってきてくれたんだぜ!トレント、どんな気分だい?」。周囲のファンから「Yeah!!!!」と大歓声が挙がる中トレントが「いやあ、最高だよ」と放つと、Jimは僕に「Hey、トレントは、ジャパンではどれくらいBIGなんだい??」。もう周りが五月蝿くて自分で自分の声もよく聞こえないような状況の中、僕はつたない英語でトレントが日本で"So big"であることを紹介。この映像が生中継で配信され、僕は思わぬ形で目出たくFOXデビューを飾ることとなった。


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 さて、そんなわけでこの日は、金ちゃんヌードルにはじまり最後はafter game showでトレントと共演というワケの分からない終始crazyな1日だったわけだが、振り返るとこうしてファンやメディアの垣根を超えてカジュアルな交流ができるのはやはりアメリカらしいと感じる。メディアは単に日々のルーティーンをこなすだけでなく、ファン目線も持ちながら、ファンとの交流も楽しみながら、コンテンツを作っていくのだ。「仕事」と割り切って変に自分たちの仕事の幅を狭める必要はないし、そうしない方が絶対に面白い。スポーツメディアに携わる人間として、そんなことを再認識させられた1日であった。


 さて、トレントであるが、実はこの日が彼にとって今シーズン最後のレギュラーシーズン観戦だった(僕は当日そのことを知り、焦って急遽会いに行ったのだ)。プレーオフには当然フル参戦の予定だったらしいが、ご存知の通りレンジャーズのプレーオフは僅か1試合であっけなく終了。想定外の早過ぎる終戦には、トレントも悲しみに暮れてしまった。


「レンジャーズなしに毎日何をすればいいんだい?」


「グリーヒンルキッドはオフシーズン、何をすればいいんだい??」


「日本に来てサイン会を開けよ!」



 ショーが終わった後、僕は別れを惜しみつつトレントと握手し「来年も来るよ」と伝えた。プレゼントも渡したしインタビューもしたし、訊きたいことは全部訊いたなと一息ついたところで、最後にひとつ大事な質問を忘れていたことを思い出した。


halvish「Trent, Do you have a girlfriend?(ガールフレンドはいるの?)」
Trent「No. I DID last week(いないよ。1週間前はいたんだけどね)」


 iPhoneをポケットから手に取り待ち受け画面を3秒ほど見つめ、再びiPhoneをポケットに戻すトレント…


 というわけで、アーリントンに行かれる方は是非、絶賛彼女募集中のトレントに会いに行こう!


「俺の席は空いてるから誰か座っていいぜ!」



halvish


P.S.

トレント直撃取材については、アーリントン滞在中に日刊SPA!で連載させていただいていた「日刊ダルビッシュ」でも書かせていただきました。こちらも是非ご一読下さい。