昨夜、落合監督率いる中日ドラゴンズの8年間が静かに幕を閉じた。


この8年間で4度優勝し、2位から日本一にもなり、一度もBクラスに落ちることなく、8年のうち過半数である5度日本シリーズに出場、球団史上初の連覇を達成するなど輝かしい成績を積み上げてきた落合中日ドラゴンズが、最後に残った50年以上達成することの出来ていない完全制覇まであと1勝の所まで迫ったものの、遂に成し遂げることが出来ずにその歴史に終止符を打った。

これほどまでに強いドラゴンズにとっての黄金期、かつてでは考えられないほどのペースで優勝を刻み、完全制覇など落合監督が監督をやっていればそのうち達成できるだろうとたかをくくっていたが、遂には達成することが出来なかった。目の前の坂を上りきったその頂上にあったのは球団史上初の連覇であり、完全制覇による日本一は空に浮かぶ雲であったということなのだろう。


第7戦、結果を見れば完敗だが、もう少し、あと一歩というプレーが多く見られた。


センターフライを落球した大島
山崎に四球を与えてしまった山井
押し出しの四球を与えてしまった小林
バックホームがずれ、松中を捕殺できなかった藤井
エンドランを見落としてしまった藤井
緊張から縮こまった打撃に終始した藤井
遂にはノーヒットでシリーズを終えた谷繁
打つ気配の無かった山崎にタイムリーを打たれたネルソン
遂に失点した浅尾

などなど


たらればを言えばソフトバンクの方が悔やまれるシーンの多かった本シリーズであり、あそこがああであればと悔やむよりは実力差を補って良く頑張ったと評価したいが、一方で上記のようなあと一歩の所で踏ん張りきれなかったのもまた今のドラゴンズの実力として受け止めるよりない。彼等がこれを糧として、来年一回り大きな選手になってまたグランドに戻ってきてくれることを願うばかりである。


日本シリーズの7試合、短いようで長丁場である。試合を重ねているうちに、相手チームのメンバーについて段々と知識が深まり、また各試合の流れが繋がってシリーズの流れを作っていく。これが日本シリーズである、というのは落合監督になって、より多くのシリーズを経験させて貰うことで学べたことである。ここまで多くのシリーズを経験させてくれたことに感謝したい。


シリーズ通算では1勝4敗と大きく負け越してしまったが、それだけ短期決戦は難しいということだろう。相手の調子や勢いがいい場合、いかに戦術論を駆使しようとも押し切られてしまう。1度目は相手だけプレーオフ制度を導入していたことと石井の狂い咲きにやられ、2度目は新庄の引退セレモニーにやられ、3度目は日本一を獲得したものの、4度目は3位から勝ち上がってきたロッテの勢いにやられ、5度目の今年は数年に1度しかないほど最強かつ最高の出来でペナントを圧倒したソフトバンクに食い下がりながらも跳ね除けられることとなった。

日本一になった時山井から岩瀬にスイッチした時、賛否両論あった。まだあれが3勝3敗でなかったことも影響していたかもしれない。しかし落合監督をもってしても残りの4度は勝てなかった日本シリーズの難しさを考えると、あそこで妥協する手はなかった。岩瀬と山井、岩瀬の方が確率が高いと思えば岩瀬で行くのが当然で、結果その選択が当たって日本一になることができ、結局はそれが8年間で唯一の日本一となった。山井でいけばパーフェクトゲームだったかもしれないが、この日本一の重さを考えれば、その取り方がどちらであるかなど些細な事である。岩瀬を選択し、抑えて日本一になった。100点満点であろう。


唯一の日本一がクライマックスを勝ち抜いてのものであったことについて引っ掛かる部分はあるが、これを否定してしまうと制度そのものを否定することになる。我々はどこが強いかを評価しているわけではなく、日本プロ野球が決めたゲームのルールの中で覇権を争っている構図であり、そのルールに従って日本一を取った。これはこれで日本一として大いに喜びたい。


一方で優勝しての日本一は実現できなかった。これはこれで事実である。実現可能性は極めて低いだろうが、しかし落合監督唯一の忘れ物として、残った選手と高木次期監督に目指して貰いたい。



これからしばらく今回の日本シリーズに関していろいろと夢を見ることだろう。また日中も、あそこがああであればと考えずにはいられないだろう。数年経ってもまた同じ事を思い出すに違いない。大変辛いが、落合監督の8年間を楽しんだことに対する費用として、正面から受け止めることにしたい。



長いシーズンを戦った選手達には心から感謝している。また落合監督には深謝とともに、8年間お疲れ様でしたと言いたい。描いた夢は幻に終わってしまったが、目を閉じて深呼吸をすると心が満たされる思いである。



これでお別れと思うと大変寂しく涙が溢れるが、その教えは選手達の心の中に宿っているはずである。来期からは選手の中に宿る落合イズムを楽しみに、高木ドラゴンズを精一杯応援してきたい。