阪神タイガースは、8月15日、金本知憲と来季も選手契約することを表明した。球団関係者が「一軍で元気にやっているのだから、そうなるでしょう」と明かした。

金本知憲は、今季は.202、7本塁打、20打点。年俸は4億円+出来高。外国人選手がこの年俸でこの数字だったら、マスコミは「害人」と騒ぎ立てただろうし、フロントだって責任問題になったことだろう。もちろん、来季の年俸は大幅に下落するだろうが、功労者に対して実に手厚いことだ。若手育成が遅れるわけである。

2日後の8月17日、『週刊文春』『週刊新潮』が、金本にまつわる恐喝事件について書きたてた。要約すると、金本は知人と投資ファンド会社を設立、1.3億円を出資したが、あとになってそれを貸付金だったとして、返金を求めたのだと言う。その過程で、恐喝や監禁まがいのことをしたと言われる。

おそらく金本は、融資と出資の違いが良く理解できていなかったのではないかと思う。昨年まで、球界一の年俸5億円を貰っていた金本には、こうした金儲け話がウンカのごとく押し寄せていたはずだ。本人も飲食店を展開していたくらいだから、サイドビジネスにも意欲的だったのだろう。

そのこと自体は何の問題もないし、批判するようなことでもないが、プロ野球選手が商売に手を出して上手くいったケースはまれだ。掛布雅之の破産話は耳新しいが、それなりの資産と圧倒的なネームバリューがあったとしても、それをビジネスに生かしていくのは至難の技なのだ。まして金本は現役である。資産運用やビジネスのマネジメントも、おそらくは、人任せだったはずだ。そうこうするうちに、いつに間にか資産のかなりの部分が消えていた、と言うような話が背後にあるのではないか。うがった見方をすれば、最近の金本がここまで出場記録にこだわり、現役にこだわる背景に、経済的な窮地があったのではないか。本人は身の潔白を訴えるが、恐喝や監禁まがいが事実無根だったとしても、何らかの金銭トラブルがあったのは事実だろう。

それにしても、阪神タイガースの危機管理能力の低さは気味が悪いくらいだ。金本との契約継続を表明した時点で、すでに2つの週刊誌は印刷所にまわっていたはずだ。まさか、金本のスキャンダルを事前にキャッチした上で、侠気を出して彼を徹底擁護しようとしたわけではないだろう。自社の有力選手の身辺を調査することもなく、安易に花火をうちあげたのではないか。大人の世界で言う「脇が甘い」対応である。

スキャンダル発覚後、金本は2試合連続で本塁打を打った。自分が野球選手であることに気がついたかのような覚醒ぶりだ。しかし時すでに遅し、である。選手として晩節を汚した金本だが、ここは潔く身を引くべきだ。長引けば長引くほど、大選手の名にキズがつくと思う。