東電社長は年収50%カットでも「もらいすぎ」?

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   東京電力の清水正孝社長の年収が約7200万円であることがわかり、話題になっている。福島第一原子力発電所の事故の責任と、損害賠償の補償金の支払いに充てる資金を捻出するため、その年収を半分にすることを発表しているが、海江田万里経済産業相がテレビ番組で「驚いたのが、50%カットして3600万円くらい残る」と言ってしまった。

   原発事故の被害者にしてみれば、「まだ削れ!」と言いたいだろうし、事実、そんな批判の声は多い。半面、「そんなもんなの?」と、売上高5兆円、社員3万人の上場企業のトップとしては少ないとの指摘もある。

役員報酬1億円以上の社長や重役270人

   年収7200万円はもらいすぎなのだろうか――。賃金管理研究所の「社長・重役の報酬・賞与・年収額の実態」によると、社長の平均月収は254.6万円。賞与が699.7万円、年収は3282,2万円になる。同研究所が2010年10月から11年3月にかけて、上場企業111社、非上場企業139社から回答を得た。

   これを上場企業に限ると、月収361.5万円。賞与830.7万円、年収4707.9万円に上り、非上場企業は月収190.7万円。賞与は577.8万円、年収2431.9万円になる。

   清水社長は50%カットしても、3600万円。上場企業の平均年収より低いが、非上場企業よりは1000万円以上高い水準にある。

   しかし、賃金管理研究所の大槻幸雄・主任研究員は「業種や企業の特性などで違いはありますが、資本金や従業員数、売上高などを考えると、清水社長の7200万円は少ないほうだと思います」と話す。

 

   東電の資本金は6764億円。従業員3万8227人で、11年3月期の売上高は5兆3685億円にも上る。社長の年収が7000万〜8000万円程度の企業は、「従業員数で1万人超くらい」という。

   2010年3月期から、有価証券報告書に義務付けられた年収1億円以上の役員報酬の個別開示では、年間1億円以上の役員報酬をもらっていた社長や重役が約270人いた。その中には、日産自動車のカルロス・ゴーン社長(8億9100万円)やソニーのストリンガー会長兼社長(8億1650万円)といった外国人経営者が有名だ。ソニーの中鉢良治副会長は2億1300万円をもらっている。

   グローバル企業のトップの報酬は高額だが、おそらく「体面」もあるのだろう。

JALの西松前社長は年収960万円だった

   1億円を超える報酬をもらっている日本人経営者では、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(3億円)やソフトバンクの孫正義社長(1億800万円)、大日本印刷の北島義俊社長(7億8700万円)などがいて、創業者や「中興の祖」といわれる経営者が多くみられる。

   とはいえ、創業家といえどもトヨタ自動車の豊田章男社長は1億円に及ばなかったし、赤字経営の責任をとって2010年6月に退任した新生銀行の八城政基前社長の年収は、850万円だった。

   東京電力が政府による公的支援を受けることもあって、最近なにかと比べられる日本航空(JAL)は、経営破たん前の2007年2月に中期再生プランを発表。そこで当時の西松遥社長は自らの年収を960万円にし、さらには社長室を含めた役員室をなくし、社用車を廃して電車で通勤。10年1月に会社更生法を申請するまで、上場企業の社長としては最低レベルの水準で通した。

   「社長の報酬は株主が決めること」(賃金管理研究所の大槻氏)というが、JALに比べると東電は批判されても仕方がないのかもしれない。

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