■アクセスの悪い野津田だが、3000人を超える観客が集まった

野津田へ行ってきた。

昨年に運行されていた鶴川駅から町田市立陸上競技場までのシャトルバスはない。しかし競技場付近までの路線バスが何系統か運行されている。およそ15分に1本の間隔で運行される鶴川0番乗り場のバスに乗ることにする。数は十分ありそうだ。

鶴川駅を降りるとあきらかにFC町田ゼルビアの運営スタッフとわかる格好の男性が立ち、傍らには0番乗り場の所在を示す看板がある。動線がわかりやすい。いい誘導だ。

0番乗り場にはふたりの男性スタッフ。サッカー観戦者の列を分けて"一般の乗客"に迷惑がかからないようにしている。公共の路線バスをサッカー用に推奨しているがゆえの措置であるらしい。

終点のバス停からは山道を登る。昨年はシャトルバスでスタジアムのすぐ傍に降りられたから、比較して不便には違いない。

重い荷物を持って歩くと、けっこうきつかった。お年をめした方がこの路を歩くのは厳しいかもしれない。アップダウンの激しい勾配。脚力にもよるが平均して15分はかかりそうだ。このアクセスの悪さにもかかわらず、5月3日のJFL前期第9節、FC町田ゼルビア対FC琉球の観衆は、3,011人だった。

■改装を受け芝生席が消えた野津田で、町田が躍動

なお終点「野津田車庫」からは鶴川駅、町田駅行きのバスが数多く運行されていて帰宅の足に困ることはない。
改修の結果、町田市陸のスタンドには椅子が設置されて緑色の部分は消えた。そしてホーム側のゴール裏がメインスタンドから見て右、アウエー側が左と、昨年までとは逆になった。またスタジアムすぐ傍の駐車場を屋台村にしている。

このせいか、スタジアムの印象は昨年までとだいぶん異なる。心なしか町田ゴール裏の応援までもがストロングスタイルに移行している気すらする。
試合はここまで単独首位を爆走する琉球に対して町田がどう戦うのかが焦点になっていた。町田は前節に大勝、そのおかげで得失点差を+4として、2試合消化の勝ち点3ながら5位につけている。しかし初戦で横河武蔵野FCに敗れている。琉球ほど磐石の強さはないのではないかと思っていた。

ところが試合は意外な展開を見せる。なるほど、琉球は、高さを含めてフィジカルでは町田よりも強そうだ。それに技術面もすばらしく、ふたりくらいのアイデアでもチャンスをつくれてしまいそうで、要は才能が揃っているように見えた。

■よどみなくボールが回る町田のサッカー

しかしゲームを支配したのは町田だった。キックオフから琉球を圧倒し、開始4分に先制してしまう。
町田のスタイルは独特だ。たとえば右サイドバックの尹誠悦(ユン・ソンヨル)は高い位置取りから、さらにグッと足をすばやく踏み出し、相手が反応できない速さで鋭いインターセプトを試みる。サイドバックだけでなくセンターも果敢に前に出ていて、つまりはラインが高い。

ボールを奪ったあとはまるでガンバ大阪のようだ。絶え間ないランと柔らかいタッチのパスが連動する。その連携は中盤のボール回しにとどまることを意味せず、さらにミッドフィルダーからフォワードへとつながり、フィニッシュに到るまでまったく淀みがない。

勝又慶典とドラガン・ディミッチの2トップは、中盤型としての柔和さを持ちながら、点取り屋としての飛び出しの感覚、あるいは得意なシュート体勢を築く感覚を持っている。それにシュート意欲が高い。
果敢なプッシュアップとインターセプト、人もボールも動く流麗なパスワーク、点を取るところまで責任を負うフィニッシュワーク。それが町田のサッカーだ。観ていて非常におもしろい。掛け値なしに、日本でいまもっとも楽しいサッカーは何かと言ったときに、五本の指に入るだろう。