物足りない斎藤佑樹|2011年NPBペナントレース

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野球ファンが斎藤佑樹に持っているのは、小太刀をふるって大の男を手玉に取る白皙の小冠者のイメージだろう。しかしそのイメージがだんだん薄れつつあるように思える。

この日は球が走っていなかった。速球のMAXは前回登板より4キロ遅い140km/h。それもあってか先頭の松井稼には、スライダーで入った。いきなりかわす投球だったのだ。それが功を奏して1回は三者凡退。

楽天の先発戸村は斎藤より1学年上、立教大学で神宮を沸かせた投手だが、球は上ずっていてコントロールが悪く、数段落ちる印象だった。さすがにモノが違うとは思った。

しかし、2回先頭の山崎への投球はいただけなかった。なぜか速球を3つも続けた。138km/hの速球はベテランの山崎にとっても打撃練習のような球だ。ゴルフのティーショットのような打球がレフトに突き刺さった。柔よく剛を制すではなく、剛よく柔を制す。ルイーズにはスライダーを力で持っていかれる。
下位打線は無難に打ち取るのだが、山崎、松井稼、岩村、ルイーズなどは打ち取るのに苦労した。斎藤は有名打者に対して萎縮するようだ。向かっていく気迫を感じない。そこら辺が「小さい」と感じさせた。山崎あたりには見透かされているように思う。

球威、球速がないのだから打たせて取るのは仕方がないにしても、その遅い球をいかに早く見せるか。際どい所でどう攻めるかを見せてほしい。カットボール、シュート、スライダー、フォーク、カーブと球種は多彩だが決め球がない。その場その場で球を散らして結果として打ち取っているだけだ。勝ちみも遅くなる。四球を出さない、高めに浮かない投球は見事だが、伸び代をあまり感じない。「老練」という言葉さえ浮かんでくる。

今の斎藤では、良い打者は打ち取れない。歴史に残るような名勝負は残せないと思う。一言でいえば物足りない。

それにしても楽天星野仙一の渋面は何とかならないのか。この人の体内で刻々と胃潰瘍が進行しているのが分かるような気がする。ベンチも委縮するだろう。