仙谷長官が造反官僚「どう喝」 その瞬間「凍り付くような感じした」
「凍り付くような感じがしました」。国会の委員会での発言に対し仙谷由人官房長官から「将来を傷つける」「大変残念だ」と、パワハラもどきの「どう喝」をされたキャリア官僚がテレビに出演し、その瞬間の「恐怖」を語った。
2010年10月20日の情報番組「スーパーモーニング」(テレビ朝日系)で、公務員改革問題で政権を批判する大胆な告白・提言をしたのは、経済産業省大臣官房付の古賀茂明氏。50代半ばの「改革派官僚」とはいえ、将来を保証されたキャリア官僚の「造反」は極めて珍しい。
「はなはだ彼の将来を傷つけると思います」
古賀氏は09年12月まで国家公務員制度改革推進本部事務局の審議官(ナンバー4にあたる)だった。以降、「待命ポスト(ポスト待ち)」の官房付で異例の10か月を「勉強しながら」(古賀氏)過ごしており、いわば「干されている」状態だ。
問題の場面は、10月15日の参院予算委員会だ。古賀氏は、政府参考人として出席し、菅直人内閣の天下り対策について批判的な答弁をした。
これに対し、「私に質問頂いてませんけど」と断りつつ「場外」から乱入してきたのは、「陰の総理」ともささやかれる仙谷長官だ。
「さっきの古賀さんの上司として、一言先ほどのお話を」と切り出し、「古賀さんを現時点の彼の職務に関係ないこういう場に呼び出す、こういうやり方は、はなはだ彼の将来を傷つけると思います」「優秀な人であるだけに大変残念に思います」
古賀氏に対して人事権を「将来を傷つける」方向で行使するかのような発言だ。仙谷氏の「答弁」が終わると、「どう喝だよ!」と野党議員たちから一斉に反発の声が挙がった。「理事会で決めたこと(古賀氏の招致)を『おかしい』っちゃ何だそれは!」と激高した声も飛び交う。委員長席に詰め寄る議員が相次ぎ審議は一時紛糾した。
仙谷氏は直後の会見で、「別にどう喝のつもりはない」としらを切った。
参院予算委員長が仙谷氏に厳重注意
古賀氏がテレビで語ったのは、この国会での場面のことだ。仙谷発言について「その瞬間、凍り付くような感じがしました」と振り返った。どう喝だと受け止めたのか、との質問には、「長官がどういう意図で言われたのか分かりませんが」としつつ、「そうですね。感覚的には…」と認めた。
仙谷氏はこの件などで前田武志・参院予算委員長(民主)から10月19日に厳重注意を受けた。ほかにも野党側質問を「拙劣」と仙谷氏が批判したことも関係している。25日の同予算委冒頭で謝罪することになった。
仙谷氏の「どう喝」発言は、もし民間の会社であったものならパワハラに当たるのだろうか。労働問題に詳しい佐川明生弁護士にきいてみた。
佐川弁護士によると、(古賀氏にあたる)発言者の直属の人事権がある上司が「彼の将来を傷つける」などと発言すれば、シチュエーションにもよるが「基本的にはパワハラに当たると考えられます」。
ではズバリ、今回の仙谷氏と古賀氏のケースはどうなのだろうか。
「パワハラという言葉が適切かどうかは分かりませんが、構図としてはパワハラと同じです」「(官房長官は)直属の人事権をもつ人物(大臣)に影響を及ぼし得るでしょう」
仙谷氏の「古賀さんの上司として」との発言は、古賀氏が国家公務員制度改革推進本部事務局にいた一時期、公務員制度改革担当大臣が仙谷氏だったことが頭にあったようだ。経済産業省によると、現在の古賀氏の「人事権がある上司」は、大畠章宏経産相だ。
ところで、古賀氏は、人事などでの不利益を顧みず天下り対策批判などを続けている「背景」についても語っている。数年前に大腸がん手術を経験し、「やり残したくない」「怖いものがなくなった」と明かす。一方、仙谷氏のサイトなどによると、仙谷氏も02年に胃がんで摘出手術をしている。
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