インタビュー:深田恭子「プレッシャーは成長できるチャンスだと思います」
「恋をしないと作品が書けない」という脚本家・谷山真由美が巻き起こすドタバタを描くラブコメディー『恋愛戯曲〜私と恋におちてください。〜』は、鴻上尚史氏による著名舞台を初めて映画化した作品。物語の主軸となる「女性脚本家」、その脚本家の作品の中に出てくる「主婦」、さらに主婦の想像の産物である「セレブ作家と、一人3役に深田恭子が挑んだ。本作で徹底的にコメディエンヌを演じ切った作品の感想から、同世代の年頃女性の仕事観まで、等身大の女優像に迫った。


――本作「恋愛戯曲」は純粋なラブストーリーといっていい作品だと思いますが、深田さんご自身はどう捉えられて演じましたか?


深田恭子(以下、深田):物語としては女性にとっての理想形を描いた作品かなと思いました。やさしく見守っていてくれる男性がいて、その人と最終的には恋に落ちるというストーリー展開ですからね。最初に会った瞬間に一目惚れ、という物語ではなく、徐々に惹かれてくという物語も女性向きだなと感じましたね。

――物語のキーワードとなっている「強制恋愛」ですが、これは深田さんとしては“アリ”ですか“ナシ”ですか?


深田:あくまでもキーワードとして「強制恋愛」ですけど、最後にはちゃんと2人は恋に落ちるわけですから、本当の意味での“強制”ではないかなと思います(笑)。ありなしは別にして、こんなことは実生活ではなかなかないですよね。

――鴻上監督は著名な脚本家ですが、監督から深田さん演じる脚本家へ向けての具体的なアドバイスはありましたか?


深田:脚本家という目線からのアドバイスはなかったのですが、監督からは「すごくチャーミングに演じてください」とだけ言われました。自分ではかわいさに加えて強さを出して演じたつもりだったんですけど、出来上がった作品を観たらそこまで強くは見えていなかったな、と。もっとキツく演じたつもりだったんですけどね。

――今までたくさんの脚本家さんとお仕事されてきたと思いましたが、印象に残っている方はいらっしゃいますか?


深田:クドカン(宮藤官九郎)さんのお話は個人的に好きですね。急激な展開、シュールなストーリーとか。監督としての鴻上さんは、役者の気持ちでされている方だなと思いました。モニターの前にいながら、映ってる役者の気持ちで「スタート」、「カット」の声を掛けてくれてるな、って思ってました。

――今回一人3役演じられていましたが、自分に近いキャラクターを教えてください。


深田:近いキャラクターは……いませんでしたね(笑)。それぞれ3人とも自分とは違ったキャラクターでしたから。普段、役を演じるときに、入り込んでしまうことって少ないんですよ。どの役を演じるときもあまり共感しながら演じないというか。

――役に共感しない方が演じやすいですか?「自分に近い」から演じやすいと言う役者さんもいらっしゃいますけど。


深田:まったくかけ離れた人物を演じるのは大変だと思いますけど、ある程度、自分と似ているか否か、というのは関係ないですね。演技を始めたころは「役に共感したほうがいいのかな」とは思っていたんですけど、いろんな役を演じるうちに、やっぱり共感できない役にも出会いますし。そうするとどう動いていいかわからなくなってしまうんです。「私ならこう動くけれど、この人ならどうだろう」って、1つ気になり始めると全部が気になってしまうので。でも、この役はこの役だって思うと、特にやりにくいこともなく演じられるなって思います。でも、基本的には台本に書かれていることを素直に表現しようと思っているので、あまり深く考えずに捉えるようにしています。

――役への切り替えはスムーズにできるタイプですか?


深田:役者って自分の感情がフラットじゃないと、上げたり落としたりという演技ができないんじゃないかなって思ってます。演技でのテンションの上げ下げってすごくパワーを使いますし、自分自身が不安定になったりもしますから。例えば演技で泣くシーンがあると、そのまま引きずって家に帰っても泣いてるときもあって(笑)。そういうときに日常では冷静に生きていないと、役の感情までコントロールできないなと感じてます。

――主人公の谷山真由美は、恋をしていないと仕事ができないという設定ですが、深田さん自身は恋をしているときに仕事に影響が出るようなことはありますか?


深田:まったくないですね(笑)常に自分優先です。私の中で恋愛って優先順位が高くないんですよ。「仕事とオレとどっち」みたいな話をされたら、もうその時点でその男性が嫌いになりますね(笑)。強くてバリバリ仕事をしている女性に憧れるので、性格が男っぽいのかもしれません。

――物語の中では草食系の向井(椎名桔平)、肉食系の柳原(塚本高史)という2人が登場していますけど、個人的にはどちらがタイプですか?


深田:柳原みたいなタイプはちょっと苦手です。もうちょっと誠実な人がいいですよね。登場人物で一番好みなのは井上順さん(テレビ局の製作局ドラマ部長役)です。ニコニコされているだけでこっちも癒される感じが理想ですね。向井も大人の男ならではの歳を重ねた魅力があって素敵ですけどね。