今年4−6月期のドル換算のGDPで、ついにわが国は中国に抜かれた。「中国のGDPは、今年中にわが国のそれを追い越す」と言われてきたことが、いよいよ現実味を帯びてきた。

 それに伴って、最近“ジャパン・アズ・ナンバー3”という表現をよく見かける。経済規模で見ると、米国、中国に次いで、わが国が世界第3位という意味だ。

この表現を見ると、1979年、ハーバード大学のエズラ・ボーゲル教授が、著書で『ジャパン・アズ・ナンバー1』と書いたことが、ずいぶん遠い昔のように感じられる。

 ただ、冷静に考えると、わが国の10倍の人口を誇る中国の経済規模が、わが国のそれを上回ることは、ある意味、それほど大きな問題ではない。

 1人当たりの付加価値ベースで見れば、依然わが国の方が中国の水準を凌駕しているからだ。安定成長期に入ったわが国の経済成長率と、「昇る日」の勢いとなっている中国経済の伸び率を比較すれば、いずれかの段階で中国がわが国を追い越すことは、むしろ当然の結果と言えるだろう。

 それよりも、注目すべきポイントは、わが国自身の現状だ。1990年初頭に資産バブルが崩壊した後、わが国経済の低迷は長期化した。その間、人口減少や少子高齢化などの問題が顕在化していることもあり、ほとんど名目ベースのGDPは増加していない。

 つまり、我々が肌で感じる経済は発展していないのだ。労働者の給与や企業の収益は、名目ベースで上昇していないのである。

 それに伴い、わが国社会全体に閉塞感が漂い始めている。経済専門家の中には、「日本は典型的なNDC(Newly Declining Country・新衰退国)ではないか」と指摘する声もある。わが国は、このまま奈落の底に落ちてゆくのだろうか。

続きはこちら


■関連記事
・資源枯渇、環境問題、高齢化に直面する日本は世界の「課題先進国」、その解決に成長の活路あり――三菱総合研究所理事長 小宮山 宏
・デフレスパイラル発生は時間の問題!「安売りバブル」で日本経済は沈没する
・民主党の“経済音痴度”を考える【岸博幸コラム】
・成長戦略はなぜ、人々の幸福に結びつかないのか〜斉藤誠・一橋大学大学院教授に聞く
・北京出身の在米政治学者が警鐘!「経済危機後の中国に備えよ」ミン・ワン ジョージ・メイソン大学教授に聞く