24日のプレミアリーグ第36節、アーセナルはタイトル争いに最後の望みをかけてマンチェスター・シティを迎えたが、0―0の引き分けに終わり、優勝の可能性が消滅した。

 試合前の注目のひとつだったのは、マンチェスターCの元ガナーズ2人がエミレーツ・スタジアムのサポーターにどう迎えられるかだった。ひとりはアーセナルで9シーズンにわたりプレーし、3度のリーグ優勝に貢献した元主将のパトリック・ヴィエラ。もうひとりは4シーズン在籍したアーセナルを昨シーズン限りで去ったエマニュエル・アデバヨール。

 ヴィエラがアーセナル・サポーターの前に姿を現すのは、2005年にユベントスへ移籍して以来、実に5年ぶり。フランスのカナルプリュス局の取材に、サポーターが「ヴィエラはクラブの“レジェンド”。アーセナル史上最高のミッドフィルダーだ。彼ならいつ戻ってきてもいいよ」と答えるなど、歓迎ムード。その言葉通り、52分にベンチに下がるときには、スタンディングオベーションを受けた。

 一方、そのヴィエラに代わって途中出場したアデバヨールといえば、シティのホームでアーセナルと対戦(第5節、09年9月12日)した際、ゴールをあげるとわざわざ古巣のサポーターが陣取る反対側のスタンドまで全速力で走り、喜びを爆発させるという“挑発的”なパフォーマンスで怒りを買っていた。

 この日もヴィエラへの喝采で立ち上がったファンが、そのままアデバヨールにブーイングを浴びせる始末。アーセナルのヴェンゲル監督が試合前から自軍サポーターに「アデバヨールにリスペクトを」と訴えていたのもまったく効き目なしだった。

 カナルプリュス局の取材に答えたサポーターの言い分はこうだ。「アデバヨールは僕らにとってつねに“怠け者”という印象。いなくなってせいせいしたよ」。ヴェンゲル監督は試合後、「どんな選手にも敬意を払ってほしいというのが私の願い。試合前にもそういうメッセージを発したが、聞き入れてもらえなかったね」と苦笑いだった。

 一方でヴィエラについては、「ここ数年でいちばんのパフォーマンスだったんじゃないかな。ボールへの食らいつきや前へ前へと突進する姿には、勇気を感じた」とW杯出場も問題なしという印象を受けたようだ。