写真/平岡純 Jun Hiraoka

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米PGAツアーのフェデックスカッププレーオフ最終戦、ツアー選手権は、最終日の混戦を経て、フィル・ミケルソンが大会を制し、総合優勝に輝いてボーナス10ミリオンを獲得したのは王者タイガー・ウッズだった。「優勝した僕は1ミリオン、2位のタイガーは10ミリオン。でも、問題ないよ。だって最終日が始まるとき僕はタイガーから2打差で、終わってみれば3打差をつけた。だから僕は満足だ」。そう言ったミケルソンの優勝コメントが、なんとも印象的だった。

元々、不仲が取り沙汰されてきたタイガーとミケルソンが2人並んで出席した表彰式は、なかなかの見ものだった。優勝カップを掲げるミケルソンとフェデックスカップトロフィーを掲げるタイガーの2人を撮影するフォトセッション。カメラマンたちが目線をもらいたくて「タイガー!」「フィル!」と口ぐちに声をかけるのだが、そのたびに2人はそれぞれ別の方向を見てしまうため、まるで目線が揃わない。ほとんどのカメラマンの写真は「タイガーの目線が来ている写真はミケルソンがあっちの方向を向いていて最悪」と不出来が続出。この2人、本当に歩調が合わない。

ところで、ミケルソンが最終日に大逆転勝利を得た陰には1人の人物がいた。ミケルソンはプレーオフ4試合のうち3試合は振るわなかった。優勝争いからは6月の全米オープン以来、遠ざかっていた。それもこれもパットの不調が原因。しかし今回はシニア選手でもあるデイブ・ストックトンからアドバイスを受け、幼いころから親しんできたハンドファーストの構えに戻したところ、グッドな感覚が戻った。ストックトンといえば、最近ではミッシェル・ウィーを指導していることでも知られている。そのウィーがサンディエゴの大会(サムソン選手権)に出場した際、一緒に来ていたストックトンにミケルソンのキャディがアプローチをかけ、パットの臨時コーチになってもらったそうだ。「これまで誰もが僕はハンドファーストにしすぎだからスクエアにしろと言った。でも、ずっといい感触が得られなかった。デイブ・ストックトンは僕の元来のハンドファーストを認め、勧めてくれた初めての人だった」。ミケルソンは満面の笑顔だった。

一方、大会で2位に甘んじたタイガーは、10ミリオンを獲得したとはいえ、複雑な表情のままだった。「優勝を目指して敗北したばかりの今日より、たぶん明日のほうがハッピーな気分になれると思う」。今は悔しさのほうがまさっているという意味だ。完璧を目指すタイガーは、最終戦を勝利で飾り、ボーナス10ミリオンもオマケとして持って帰るというシナリオを描いていた。しかし、結果的に持って帰ることができたのはオマケだけになり、どうも納得がいかなかった様子だ。

しかし、10ミリオンなんてビッグなオマケなら、それだけで十分だろう。大会で優勝したミケルソンが優勝賞金135万ドルのほかに手にしたオマケは、大会スポンサーのコカ・コーラから贈られた「コカ・コーラ自動販売機」だったのだから――。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)