徹底してきたコンセプト。岡田監督の指導がピッチ上でも確実に反映されてきている<br>(photo by Kiminori SAWADA)

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  6月6日のウズベキスタン戦に向けた練習で、岡田武史監督が強調したのは攻守の切り替えだった。フリーマンをまじえた3対3のパス回しでは、「パスを出しっ放しになるな!」、「取られた瞬間に切り替えろ!」という指示が飛んだ。フィニッシュへ持ち込むフォーメーション練習でも、シュートが外れたりGKに防がれた瞬間に、「ダッシュで戻れ!」と繰り返し指示をしていた。

 素早い切り替えと同時に、高い位置からのチェックも徹底された。4対4でのハーフコートマッチでは、「下がるな!」、「出ろ、ボールに出ろ!」といった指示がグラウンドに響いた。攻から守へ切り替わった瞬間に、そのまま高い位置からチェックを仕掛けていけ、というコンセプトの徹底である。

 実際のゲームでも、そうしたシーンを探すことはできる。

 たとえば、キックオフ直後の3分の場面だ。自陣左サイドからの相手ロングスローを、中澤がヘッドでクリアする。クリアボールは中村俊にわたり、前線へ大きく蹴り出す。相手DFが処理したところへ大久保が寄せ、横パスに呼応して中村憲と岡崎が続く。ウズベキスタンの右サイドバックが苦し紛れにつなごうとしたタテパスは、タッチラインを割って日本のスローイングとなった。

 29分の場面も分かりやすい。大久保のファウルで敵陣左サイドからリスタートされると、ボール保持者に中村憲がアプローチする。タッチライン際へ押し出すようにコースを限定しながら並走し、スライディングを仕掛ける。これがマイボールとなり、駒野のスローインから再び日本の攻撃となった。

 どちらも些細なプレーである。ただ、労を惜しまない小さな積み重ねによって、日本は試合の主導権を握ることができているのだ。前線からのディフェンスに守備陣が奮い立ち、守備分の踏ん張りにまた前線が刺激されるという好循環にもつながっている。

「いつも言っていることですが、前の試合で7回できたことがあれば、次は8回できるようにするといったぐあいに、ステップアップをしていきたい」と岡田武史監督は話す。当たり前のプレーに妥協を許さず、そこに高いレベルを要求していくことで、日本はスキのないチームになってきている。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖