ED治療薬として有名なバイアグラの「偽物」が問題化するなか、中国製の同様の薬をめぐるトラブルが続発している。中国旅行に出かける友人に頼んで買ってきてもらったり、ネット通販で購入したりする「お手軽入手」が目立つ。一方、服用後に倒れて救急車で運ばれ、入院するケースも発生している。

糖尿病治療薬成分が多量に検出

   バイアグラは米ファイザー製薬が開発した性的不全治療薬で、日本では1999年に発売された。ところが、翌00年には、早くも偽物が登場。この時は、愛知県警が個人輸入代行業者を薬事法違反容疑で摘発して発覚したもので、「本物」よりも有効成分が少ないことが確認されている。

   製造元のファイザー製薬では、ウェブサイト上で「偽バイアグラ工場」内部の写真を掲載しており、原料らしき物がバケツの中でかき回されている様子が分かる。同社では、

「偽造バイアグラの製造現場は、この事例のように不衛生であり、また流通経路での品質管理にも問題がある」

などと、偽物による健康被害のリスクを訴えている。

   同社が直接問題視しているのは、「バイアグラ」を名乗る「偽物」だが、直接はバイアグラを名乗っていない、バイアグラの「類似品」をめぐっても、トラブルが発生しているのだ。

   問題が報告されているもので代表的なのは「男根増長素」と呼ばれる製品。08年だけでも、3件の健康被害の疑いが報告されている。08年3月に埼玉県で発生した事例では、50代の男性がカプセル1錠を服用したところ、翌日から低血糖症状で起きるのがつらくなり、その翌々日には入院することになってしまった。08年2月に広島県で起こった事例でも、30代の男性が服用の翌日に低血糖症状で倒れ、病院に運ばれている。いずれのケースでも、製品は、インターネット通販などの個人輸入で入手していた。

   この「男根増長素」1錠からは、バイアグラの主成分「シルデナフィル」12ミリグラムが検出された一方、糖尿病治療薬成分の「グリベンクラミド」120グラムも検出されている。この120グラムという量は、1日最大使用量の12倍にあたる。「グリベンクラミド」は、血糖値を下げる成分で、これを大量に摂取したために、急激に血糖値が下がって意識障害を起こしたものとみられている。

   グリベンクラミドをめぐっては、中国製の健康食品に含まれていたことが問題化したこともあり、「健康食品が標榜している作用を増強する目的だったのはないか」と指摘された。今回のケースでも、似たような経緯で「グリベンクラミド」が大量に含まれていた可能性もありそうだ。

国際郵便使って、注文後3〜5日後の配達が可能

   それ以外にも、08年4月には横浜、09年2月には静岡で、同様のトラブルが起こっている。製品名こそ「七鞭粒(しちべんりゅう)」「性欲王」と、前出のものとは異なるものの、含まれている成分はほぼ同じで、やはり低血糖による意識障害を起こした模様だ。「七鞭粒」を服用した男性は、友人に頼んで、中国で買って来てもらったのだという。

   確かに、ネット上を検索してみると、これらの薬品の通信販売ページを簡単に発見することができる。前出の「男根増長素」を販売している、ある通販サイトの説明によると、国際郵便を使って、注文後3〜5日後の配達が可能なのだという。価格も、1箱3粒入りで980円と、きわめて「お手軽感」があると言えそうだ。

   厚生労働省の調べによると、シルデナフィルや類似成分を含んだ、いわば「バイアグラもどき」とも呼べる製品は231種類が確認されており、中には、国内では医薬品として承認されていない成分を含むものも多い。同省では、これらの製品について

「医薬品の成分が検出されており、健康被害が報告されている事例があります。このことから、健康被害の発生するおそれが否定できないと考えられます」

と、注意を呼びかけている。

 

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