プレーレベル、モチベーションともレギュラーと遜色なし。中村憲の存在は最終予選を戦う日本にとって頼もしいかぎりだ<br>(photo by Kiminori SAWADA)

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 試合翌日のスポーツ紙の一面が、11月13日に行なわれたシリア戦の内容を分かりやすく表していた。僕が都内で購入した『スポーツニッポン』紙は、先制ゴールをあげた長友でも、追加点をあげた玉田や大久保でもなく、スコットランドリーグで公式戦4試合ぶりに出場した中村俊輔を1面に持ってきた。

 チームを率いるファジェル・エブラヒム監督が「我々は明らかな練習不足。日本の勝ちは決まっていたでしょう」と振り返ったように、シリアはスパーリングパートナーとしてひどく物足りない相手だった。一方の日本も、欧州組とACL出場のG大阪勢を欠いており、カタール戦への調整というよりテストの色合いが濃いものだった。『スポーツニッポン』紙が「日本に朗報! 間に合った 俊輔」という見出しを打ったのも、納得できるところがある。

 収穫を見つけにくい試合のなかで、個人的に取り上げたいのは川口能活と中村憲剛だ。

 川口は楢崎正剛の負傷で、中村は欧州組と遠藤保仁の不在で出場機会を得た。3月のバーレーン戦の敗退をきっかけに先発から外れた意味で、彼らは同じ境遇にある。

 守備機会がほとんど巡ってこなかった川口は、それゆえに評価できるポイントが少ない。ただ、キャッチング後の素早いフィードやバックパスをきっちり展開した足元のプレーなど、彼ならではの個性は発揮されていた。シリアの調整不足ぶりを差し引いても、川口の出場によってパスワークがテンポアップしたところはある。

中村憲はシリア戦の主役だった。「今日は彼がゲームを作ってくれた」と岡田武史監督が語ったように、長短のパスを使い分けて攻撃のスイッチ役となっていた。

 最終予選のような長丁場の戦いでは、来るべきカタール戦のように主力を欠くケースも出てくる。そこで重要なのは、バックアップメンバーの活躍だ。3月以降もモチベーションを落とすことなく代表に参加してきた川口と中村憲のプレーは、それだけに価値のあるものだった。

戸塚啓コラム - サッカー日本代表を徹底解剖