ガンダムで有名な安彦良和氏のインタビューだけでも買う価値あり。登場するネット右翼の中に中国人の妻を持つ男性がいたのには目からウロコでした。

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2ちゃんねるやニコニコ動画を毎日巡回していると、テレビではあまり流れないニュースが話題になっているのをよく見かけます。最近では中国ネタが多くなっていて、特に世界的にも関心が高いチベット問題には注目が集まっています。このネット上の反応と比べると、日本の一般マスコミ(特にテレビ報道)は、随分淡々としているという印象があります。たまに報道された場合も中国側に配慮したコメントが多く、基本的に「チベット自治区で暴動が発生した」という論調になっていることに強い違和感を覚えるのは、私だけではないはずです。

本来なら「中国に軍事侵略されたチベットの人々が、"抗議のデモ"を起こした」というのが正しいはずなのに、「中国国内で暴動が発生した」と報じるのは、意図的にミスリードを誘ってるとしか思えません。さらに日本の総理大臣も、中国を擁護する発言で来日間近の胡錦濤主席を必死にフォローする始末。このような日本の現状を嘆き、ネットで書き込みをする人々は、私からすれば正常な感覚の持ち主だと思うのですが、何故か一部から「ネット右翼(ネトウヨ)」という呼び名で、揶揄されてしまっています。

「反日思想」や「共産主義」に抗議する発言をしても、言論の自由が認められた日本では何も問題がないはずですが、どうやら一部の人々にはそれが気に入らないようです。現在もネット上では「右派」と「左派」による果てしなき論争が続いていますが、こういった政治的な思想の源流に“ガンダム”の影響があるという説があります。
今回はそのあたりを探っていきたいと思います。

■ネット右翼の中にアキバ系が多いという説は真実か?
ネット右翼と呼ばれる人々の主戦場はインターネットですから、議論に参加している人達はなんらかの形でネットに接続しています。当然、パソコンの使用率は高いでしょうし、パソコンユーザーの中にはアキバ系も含まれるので、アキバ系が多いというイメージが出てくるのは理解できます。ただ、別にアニメやゲームに詳しくなくても、ネットは今どき見ていて不思議ではありませんから、実際の割合はそれほどでもないと思います。

2ちゃんねるの一般ニュース系の板に限ると、消化の早いスレほど、アニメ・漫画・ゲームのパロディ発言比率は少なくなる傾向があるように見えます。特に、ネット右翼と呼ばれる人々が集まりそうな、嫌韓・嫌中的な発言が多くなるスレでは、"2ちゃん語"独特の言い回しはあっても、胡錦濤主席をアニメキャラで例えるような発言は、ほとんど見かけないといっていいと思います(多少の例外はあるでしょうが)。現在の2ちゃんねるを利用している人々は、もはや特別な存在ではなく、ごく普通の人々が言いたい放題できる発言場所として機能している気がします。

ガンダムが描いた「戦争」の影響とは
「ネット右翼ってどんなヤツ?」(宝島社)という本に、『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザインを担当した安彦良和氏のインタビューが載っていましたが、そこで安彦氏は「今の若い層は"サブカル"として政治づいてる」とコメントしていました。
ガンダムで有名な安彦良和氏のインタビューだけでも買う価値あり。登場するネット右翼の中に中国人の妻を持つ男性がいたのには目からウロコでした。


思えば『機動戦士ガンダム』は、宇宙移民の独立を求めたジオン公国が地球連邦に独立戦争を挑むという図式の「戦争と政治」を描いた作品でした。そんなガンダムは若い世代への政治認識にも影響を与え、「ガンダムの世界観」を「実際の政治」に置き換えて考えるという、サブカルから政治を学ぶ流れを作った作品でもあったわけです。

ちなみに「ネット右翼ってどんなヤツ?」では、ネット右翼と呼ばれる人々の対談も掲載されていて、その対談に参加した6名中2名がガンダムファンという状況でありました。さらに「アニメファンは全員右派」という発言も飛び出した模様ですが、さすがにそれは極論すぎる気がします。確かにアニメのストーリーに政治の要素がからむというのは、今では普通に行われていることなので、アニメから政治を学ぶというケースは多々あるとは思いますが……。
参考文献その2。第2章の"アニメはネット右翼を「量産」したか?"が最強の一冊。それ以外の部分は意外に固い話が多いので、評価は分かれるかもです。


■中国・韓国に都合の悪いことは報道しない「マスゴミ」
一般マスコミに対する不信感を持っているのは、何もネット右翼に限りません。重大事件にも関わらず、マスコミでは事実上黙殺という例は、枚挙に暇がなく、多くの人に心当たりがあるはずです。その理由が、スポンサーへの配慮なのか政治的圧力なのかは知りませんが、人々が本当に知りたい事柄を報道せず、どうでもいい話題をダラダラ巻き散らすマスコミ(特にテレビ)は、着実に人々の信用を失い続けています。今ではすっかり「マスコミ」は「マスゴミ」と表記されることが多くなり、ネット上における信頼は著しく低下しています。ちなみに新聞もほぼ同様の状態です。

そんな"マスゴミ"が触れない話題のひとつに、中国・韓国が政策として実行している「反日教育」があります。このことに対して、ほとんど何も言わない、何も言えないという状況が、ネット経由で事実を知った人々に右派的な思想を与えてしまっている側面はあると思います。「日韓ワールドカップ」における韓国側の反日感情の爆発や、毒ギョーザ事件の中国政府の対応など、反日の影が浮かび上がる度にネット右翼が増産されているといってもいいでしょう。

とは言っても、韓国人・中国人・日本人のいずれにも善人・悪人はいますから、個人レベルおける人種差別などはするべきではありません。反日教育を受けた人々も、ある意味では被害者といえるわけですし。日本人としてどのような態度を取っていくべきかは、状況に応じて慎重に考えなければならないと思います。

■言論の自由の元 ネットに右派も左派もない
ネット右翼という言葉は、例えそれが蔑称であったとしても、言論の自由が生み出した産物であるといえます。ところが現在、その言論・表現の自由が奪われそうな事態が次々に発生しています。希代の悪法「人権擁護法案」、表現の自由を奪う危険性を持つ「児童ポルノ禁止法」など、正義の名のもとに、我々の自由を破壊しようとする動きが現実に起こっているのです。これらを見過ごすことはできません。

「言論・表現の自由」に右派も左派もないはずです。今後も面白い漫画やアニメ、ゲームなどが、生み出されていく環境を守るためにも、思想の違いを超えて、団結するべきところは団結していってもらいたいものであります。

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レッド中尉(れっど・ちゅうい)
プロフィール:東京都在住。アニメ・漫画・アイドル等のアキバ系ネタが大好物な特殊ライター。企画編集の仕事もしている。秋葉原・神保町・新宿・池袋あたりに出没してグッズを買い漁るのが趣味。

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